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ラクロス人材と就職 − アメリカにおけるラクロス卒業生ネットワーク

今回はアメリカにおけるラクロス人材の就職活動に関する記事の紹介です。

ウォールストリートで働くラクロス出身者は多い。皆さんはこんな話を聞いたことはないでしょうか。卒業生ネットワークがあるため、ウォールストリートでの就職に少なからず有利であることは間違いないようです。今回はそんな卒業生ネットワークに関する記事です。

この記事ではラクロスの歴史とアメリカンドリームとアメリカのスポーツ奨学金制度について考えさせられます。

1970年に入ってラクロスのスティックの量産が始まるまで、ラクロスは比較的富裕層によってプレーされていました。富裕層が通う名門校の揃うアイビー・リーグの人気就職先は金融機関であり、ラクロスプレーヤーが金融機関に就職する割合は高かったことが推察されます。そして企業の採用基準は卒業大学とコネクションなので、ここで古くからのラクロスネットワークが活用されるわけです。

名門校の学費は高いのが常識で、名門校に入らなければ高報酬の職業には就けません。高い学費をねん出するためには奨学金を獲得する必要があります。スポーツ奨学金制度は将来金を稼ぐための手段として機能しているのです。従って新入生(アスリート)にとって大学選択の際にオファーされる就職先は(親にとっても)重要なのです。

Wall Street Pipeline Finds Work for College Lacrosse Players

下記記事は2013年5月のBloombergで発信された記事の私なりの意訳ですので、詳細に関しては原文をご覧ください。

ネットワーク

Dom Starsiaは全米制覇の話をする前に60センチメートルほどのリストを開いた。それはヴァージニア大学新入生に卒業後の人生を垣間見させるものだ。

1819年にThomas Jeffersonによって設立されたヴァージニア大学のコーチのリクルーティングでのセールストークはVLAN(Virginia Lacrosse Alumni Network)である。VLANは、金融業界などの就業者で新卒者の就職をサポートしたいと希望している男女あわせて300人を超える卒業生のデータベースである。

「データベースには個人名、会社名、業界名、職位、電話番号、emailが記載されている。」VLANを緩やかな卒業生のつながりから組織化されたメンターのパイプラインへと進化させたNeuberger Berman Group LLC のMDであるDrew Foxは言う。

「銀行、証券、トレーダー、アナリスト、私はそれらがどのような仕事か知らないが、これが素晴らしいリストだということは知っている。」21年間で4度の全国制覇、13度のファイナル4進出を主導したStarsiaは言う。

VLANのメンバーにはBrown Brothers Harriman & Co.のパートナーであるLandon Hilliard、High Tor Asset Management のマネジメントメンバーであるJohn Sommi、Merrill Lynch Private BankingのMDであるAndrew P. Kraus、Moore Capital ManagementのポートフォリオマネージャーであるGarth Appeitなどが含まれる。

有能なラクロス人材

1991年卒のAppeitはアスリートの力を得てビジネスを拡大させたいと言う。アスリートのタイムマネジメント能力、競争心、障害への対応能力は、金融業界で成功するのに理想的な候補者だと考えている。

「ラクロスプレーヤーがラクロスに注いでいるすべての情熱を彼らのキャリアに注いだらどうなるだろうか」Appeitは電話インタビューに答えた。

Dave Huntley(ジョンズホプキンス大学卒・ラクロスカナダ代表ディレクター・MLL Hamilton Nationalsコーチ・HR Investment Consultants代表)は一流ラクロスプレーヤーの履歴書には二度目を通すという。ラクロスの同士意識は、ラクロスプレーヤーがお互いを助け合う責任を感じていることを説明している。「ラクロスのコネクションで多くの学校から多くの人材がウォールストリートに集まるのには目を見張る」Huntleyは言う。

伝統的な強豪校であるヴァージニア大学、ホプキンス大学、プリンストン大学は今年のNCAA男子トーナメントに出場できなかった。コーチのChris Batesは電話インタビューで、アイビー・リーグレベルの学生へのリクルーティングのセールストークにはウォールストリートとのコネクションが含まれると話をした。

VLANは3度の全国制覇を達成したJon Hess(1998年卒・CapRok Capital LLC共同代表)によって監修されている。CapRok Capital LLCの3,000人の社員のうち500人がラクロス卒業生である。

「もし金融に興味がある新卒者がいれば、私たちはその手助けをする。何をするかといえば彼らを現在のチームに紹介し、彼らに自身のキャラクターを発信してもらい、採用につなげる。」とHessは言う。

シーズン終了とともに、ラクロス新卒者はウォールストリートのラクロス経験者にアドバイスを得る。

ラクロス競技人口

Sports Fitness Industry Associationの調査によるとラクロスプレーヤーは2012年現在1.5百万人おり、2008年対比37%増でチームスポーツの中では最も伸び率が高い。同じ期間で野球は13%減少、フットボールは18%減少している。US Lacrosseによると15歳以下のユース世代は2011年に361千人おり、前年対比11.3%増で最も伸び率の高い世代だ。

ラクロスは伝統的に盛んであったMid-Atlantic地区やニューヨークでも拡大している。SFIAの調査によるとNew-EnglandやSouth Atlantic地区と同じくらいカリフォルニア、オレゴン、ワシントンにプレーヤーがいる。

ゴールドマンサックス

「ラクロスは全国スポーツになった。コーチたちは”あなたの4年間を私に託せば、あなたはゴールドマンサックスで働くことになる”と言っていたものだ。」1950年代にプリンストン大学でラクロスをプレーしていたA.B. “Buzzy” Krongard(Alex. Brown & Sons 前CEO)は言った。

2度のMLL MVPを獲得しているPaul Rabilはゴールドマンサックスで働いてはいないが、彼のジョンズホプキンス大学時代のチームメートとルームメートはそこで働いている。エクイティトレーダーのStephen Peyserはジョンズホプキンス大学のパイプラインの一人で、Sol KuminがCOOを務めるSAC Capitalでは一時期5人の同大学卒業生がフルタイムで働いていた。

Kuminはシーズン中にコーチたちと、どのプレーヤーが金融でのキャリアを積みたいと考えて以いるか話をする。

Rabilはラクロスで初めてのミリオンダラープレーヤーになった。New Balanceグループ傘下のWarriorでRabilの名前を含むプロダクトラインがその助けとなった。Rabilは友人のTed Goldthorpe(Apollo Investment Corp.社長、National Lacrosse League Philadelphia Wings共同オーナー)などの支えがあったことを明かした。

「LeBron Jamesだったら私をパーティーに呼んでくれるだけだ(*1)。ヘッジファンドやプライベートエクイティの人たちはもっと実用的に価値がある。ゴージャスではないがこれらの人こそあなたが知るべき人だ。」27歳のRabilは言った。

(*1)Paul Rabilはラクロス界のLeBron James(NBA選手)と紹介されることが多い

ハーバード大学のネットワーク

2010年にハーバード大学を卒業したJason Duboeはボストンに拠点を置くプライベートエクイティ、ベンチャーキャピタルのSummit PartnersのAssociateだ。Duboeはバークレイズ、モルガンスタンレー、クレディスイスなどのチームが参加するサマーリーグを通じて多くの大学出身のラクロス卒業生と友人になった。

ハーバード大学はヴァージニア大学のVLAN同様のネットワークであるHarvard Varsity Clubを持つ。そのミッションはアスリート、コーチ、アスレチック部門と大学をサポートすることだ。

「私が戻る最初のネットワークがハーバードラクロスだ。それはネットワークにとても近いと感じられるからだ。ネットワークを活用しない手はない。」Jasonは言う。

VLANパイプライン

Fortress Investment Group のMDであるDrew McKnightはVLANが彼のキャリアのスタートをサポートしたと考えている。1998年にインターンシップを探していた時に彼はAppeltとFoxにコンタクトし、ゴールドマンサックスのVPでハイイールドセールス&トレーディングを担当するMatt Rakowskiを紹介してもらった。それによってMc KnightはCredit Suisseのインターンシップの機会を得て、ゴールドマンサックスとFir Tree Partnersの仕事を獲得することができた。

そしてMcKnightは2011年に全国制覇をしたヴァージニア大学の共同キャプテンであるJohn Haldyをサポートし、HaldyはForward Insight Commoditiesで働いている。

「VLANは素晴らしい。私を幸せにしてくれた。成功する人を集めれば、パイプラインはより永久的なものになる。」2003年にゴールドマンサックスを退職しForce Lacrosse Clubを共同創業したRakowskiは言った。

ネットワークの成長

ヴァージニア大学のVLANが男女ラクロスプレーヤーを含むプログラムになって3年が経ち、単なるウォールストリートに就職するためのネットワーク以上のものになろうとしている。

ヴァージニア大学を含むいくつかの大学を比較し、Van Raaphorstはデューク大学のオファーを受諾した。デューク大学はコーネル大学、デンバー大学、シラキュース大学とともに、この週末に準決勝を戦う。

Van Raaphorstはデューク大学のオファーがウォールストリートへのリンクを中心としていたことに言及した。「彼らは卒業生の就職準備ができたら彼らのネットワークにコンタクトすると言っていた。卒業生がネットワークに立ち戻ってくるというのは、素晴らしい結束力だ。」

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