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【こぶ平コラム】2017年ラクロスの振り返り⑤|クラブラクロスの今

2017年ラクロス振り返りを書く中で、クラブラクロスの現状と、こうなったらもっとクラブラクロスをする人も増えないかな?という思いを持ち、又女子のクラブラクロスが、学生王者に勝てない時代になってしまったのか?という思いと、世界と戦うのにクラブラクロスの充実が必要ではないか?という思いから今回のコラムを書いています。

まず、クラブラクロスについて、大学生、中高生のラクロッサーさんはあまり事実をご存知ないのではなかろうか?

・クラブラクロスって良くわからないので入りにくい!
・なんか学閥みたいなものがありそう!
・下部のプレーヤーだった人間は入れない!
・とにかく大変そう!
・会社との両立は無理!  等々

これらは、全てとはいいませんが、かなりイメージだけのお話です。
詳細は別途書きますが、その前にクラブラクロスの現状を把握しておきましょう。

【2017年の現状】
・男子はFALCONSが全日本選手権10連覇を達成。
・女子はクラブチームが4年連続で、全日本選手権優勝を逃した。
・ラクロスの世界ランキング的には男子8位、女子9位

というのが現状です。その理由を探ると意外な事実もわかりました。
先ず数字で見てみましょう。

2017年度全国での登録ラクロスクラブ数
(小学校以下対象のクラブ,非加盟団体は含まれていません。)
男子 北海道 3 関東 20 東海 4 関西 10 中四国 3 九州 4 合計 44
女子 北海道 1 関東 18 東海 4 関西 5  中四国 4 合計 32

登録選手数
男子合計 1,415名   女子合計 866名

実は、私にとってはこの数字は衝撃でした。漠然と女子のプレーヤーの方が多いと思っていました。実はこれが女子クラブラクロスの本質的課題なのかもしれません。

協会発表の数字から算出すると
学生選手 男子合計 3,185名 女子合計 8,054名
Teen’s  男子合計 92名 女子合計 1,050名 

女子選手の方が圧倒的に多いわけです。Teen’sの大学での継続率は又検証しますが
やはり、大学からクラブラクロスに進む率、特に女子の継続数が少ないと言えます。
(実は、継続年数に男女差があるという意見もあります。そこは又検証します。)
明確な事は、人数比のクラブ数の違いは男女で明確な差がありますね。そういう意味では、女子のクラブが新設される傾向にあるのは歓迎すべき傾向なのかもしれません。(実際に2018年九州にクラブが新設される動きがあります。又関東でも新設の噂はありました。)
しかし、クラブリーグの幹部の方とお話をすると、関東地区でクラブが増えても試合をする場所や審判数に限りがある為、運営が困難になりつつある。というような切実な問題も抱えているのが実情です。

検証しやすい東日本女子クラブリーグの現状も見てみます。

昨年、2017年女子はMspiritsというチームが増えました。2014年のNeO以来の加入で、企業がサポートをする初のチーム(いわゆる実業団チームではない)の参加という新たな時代に入りました。
NeOは当時の日本代表を多く含むチームであったのですが、Mspiritsは関東ユースやU22クラスの選手を含むチームとして、関東2部のファイナルまで進出しました。1点差で2部総合決勝進出を逃したものの、ポテンシャルの高さを感じさせるチームの参加はクラブ間の戦いをより厳しいものにしています。しかしながら、Mspiritsが学生王者に勝てるチームになるにはまだ、成熟を待つ必要があります。

2012年までの実質1部5強時代から、2013年3部制を経て2部制への移行&1部6チーム時代へ変わり、ORCADEAを加えた6強で日本をリードする体制から2014年のNeOの加盟は既存のチームへ、強い波風を立てるものとなりました。

6強から1チームが2部へ降格する時代に突入したのです。恐らく2013年の2部制の変更以降は、男子同様のチャンピオンリーグ制への以降の布石だったのかも知れません。結果的に、日本一を目指すチームと、昇格すら望まないクラブとの共存が続く形が継続されています。この功罪については、後述します。

さて、NeOが女子クラブの旋風児からチャンピオンとなった2016年、全日本選手権でクラブチームは決勝に進めない初の事態になりました。これは、2012年に慶應義塾が持ち込んだゴーリーを含めた全員が動くラクロスが、運動量の差で試合を支配する時代が招いた結果なのかもしれません。

しかし、その運動量豊かなラクロスを経験した中の精鋭が集まったクラブが勝ち抜けなくなったのは何故でしょうか?練習不足?監督の不在?環境の悪化?モチベーションの維持の問題?優勝校からの流入数が少ないから?これは部外者が見るだけではわかりません。

ただ、客観的に見て練習量が少なくなった。環境は悪化した。という事は見て取れます。しかし、先にも書きましたが、男子も同じ条件下にありながら男子はクラブチームが学生を圧倒する時代になっています。この差は何でしょうか?
外から見える事は多くありませんが
① クラブへの流入の割合の差。
② 継続性の差。
③ 戦術の熟成力の差。  の3つの原因を考えています。

①関東の女子クラブチームでも、選手の母数からすれば学生からの流入率が多いとは言えない、いわば誤差の世界であることは間違いありません。
それは、1部2部3部4部所属云々の違いはあまりなさそうです。女子はむしろ学生1部リーグに所属をしていた選手の流入率が少なかったのかもしれません。
お話を聞くと、燃え尽き感や、仕事に入ってから戻ろうとも思ったが、中々「自分達で全てを仕切り、実行し続けるパワーを維持できない」と
非常にまっとうな理由を述べる方が多いのです。

掘り下げます。

時間を要したのですが、少し調べました。協会登録のクラブ加盟のラクロッサーさんの数を2017年度のクラブ人名簿から探りました。そして、その名簿以降に加盟された情報を若干補足したものですが、
女子のクラブラクロスの登録者数は866名  。
新人(と思しき*1)選手  153名

大学女子の選手数  8,054名(*2)  1学年平均単純計算で2013名

単純計算で  8%がクラブラクロスに進んでいる計算ですが、昨年は新しいクラブが全国で2チームできた関係でいつもの年より3%程度高い数値が出ています。
関東で1チーム、関西で1チームが増える一方で、中四国では1チームが人数不足で活動中止を余儀なくされています。
今後もこの傾向が続くのかはわかりませんが、既存のチームにおける新人の組み入れ不足は大きな課題だと思われます。特に九州、東北、北海道地区の選手の皆さんは、これから伸びようという時にキャリアを終えてしまうという現実があります。

これが、流入率の男女差の原因でしょう。

*1 「新人と思しき」の意味は、名簿上で2017加入と明記されているのがクラブの30%ぐらい。後はどうも、2016年度卒(2017年3月卒)の情報に思われるので、その数をピックアップしています。多めに出ている可能性があります。
*2 大学女子の選手数はラクロス協会が発表している、Senior選手数8,920から
勘定したクラブ選手数866名を引いた数字です。

実際の既存女子クラブへの参加率が4,5%というのが現実なわけですが、(前回3,4%と書いたのは、新人の判断が難しかった事が原因です。)2016年度日本代表候補の内6名が4年生で内3名(2017年度代表)しかクラブへ移行していないという事実もあります。

他の女子団体ボールゲームの場合それがもっと高い数字ですから、それが学生に勝てない1つの理由ではないかと思います。

② さらにこれに女子の継続性の問題も加わります。
男子代表 4回目 2名 3回目 4名  2回目 5名
女子代表 3回目 2名 2回目 6名 

これは2018年度 男子代表 2017年度 女子代表選手のW杯キャリア数です。女子Top選手のキャリアが短い事がわかります。それだけ、大学と拮抗した年代での争いになっているわけです。
ここ数年、高校生ラクロッサーさんが進学後にラクロスを継続する数は増えています。そして女子日本代表に占める割合も増えています。これは年数的には大学ラクロスのキャリアがクラブラクロスの選手に追いつく形にもなっています。

③戦術の熟成力について
コーチ不在論が言われていますが、男子の場合にはまったく当て嵌まりません。やはり、ここは女子クラブに戦術担当の不在というものがあるのではないかと考えています。
それは、試合ごとの戦術を考える、試合中の戦術変更指示も‘しょうですが、チームにもたらす戦術に、進化をもたらすようなリーダーが不在なのではないかということで、コーチが必須というわけではないと思います。

特に女子クラブラクロスの置かれている問題について(勝手に)考えてみたわけですが、これではこれからラクロスを続けようという女子選手の興味を引くとは言えませんね。この現状に対して、クラブの皆さんがどういう風に対処して、進化をしようとしているか?次回に書きます。
今ラクロスを続けようかどうか迷っている皆さん。又1度ラクロスから離れて、ラクRoss気分を引きづっておられる方に続けたいと思えるようなお話が書ければと思っています。

ついでに、ラクロス協会さんへの思いも書きます。
皆様のご意見をおまちしています。

こぶ平

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