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NCAAラクロス(男女)の基礎知識

NCAA(National Collegiate Athletic Association)は大学スポーツクラブの運営支援をする団体で、23競技、88大会の運営管理をしています。NCAAには大きく分けて3つのディビジョンが存在し、学校ごとに所属するディビジョンが異なります。奨学金制度や施設が整っている学校はディビジョンI、奨学金制度や施設がディビジョンIの基準に満たない学校がディビジョンII、奨学金制度のない学校がディビジョンIIIに所属することになります(中にはディビジョンIIIの大学なのに特定の競技だけディビジョンIというケースもあります)。必然的にレベルの高い選手はディビジョンIに集まることになります。また、各学校は所在地域などによりディビジョン内のカンファレンスに所属することになります。このカンファレンスでの試合を勝ち抜いたチームが全米一を決めるNCAA Championship Tournamentに招待されることになります。

NCAA Championship Tournamentへの道のり

男子

2016年(第46回)NCAA Men’s Lacrosse Division Iは10のカンファレンスから69チーム、独立チームとして2チームの計71チームが参加。各チームはカンファレンス内で総当たりの試合と、カンファレンスを超えた試合と、カンファレンス内のチャンピオンシップトーナメントを戦いました。10のカンファレンスのそれぞれのチャンピオンシップトーナメント優勝者とAt-large bid(*1)によって選出される8チームの計18チームがNCAAチャンピオンシップトーナメントにノミネートされ、下位4チームのうちPlay-inを勝利した2チームとあわせた計16チームが本戦に進みました。

(*1) At-large bidはNCAAによるインビテーションのようなもので、一定の選出クライテリアがあります。各チームは最低10試合を行う必要があり、勝率は5割以上が必要とされます。Won-lossレコードとStrength of Scheduleが要素となります。RPIというスコアリングで上位のチームと多く戦い、大きな点差で勝利を収めることが自身のRPIを高め、At-large bidで選出されるポイントになります。

2016 NCAA DI Championship Tournamentの選出チーム一覧は以下になります。無条件で選出される各カンファレンストーナメント優勝者以外はPRIが上位のチームが多く選出されています。ラクロスのエリート校はACCとBig Tenに多く所属しています。
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データ元:LAXPOWER

なおMLLに進む多くの選手はディビジョンIから選出されていますが、中には凄まじい選手が下位ディビジョンから選出されることもあります。Ohio MachineのDFであるKyle HartzellはディビジョンIIIの名門校Salisburyの出身です。ディビジョンIIIは230チームほどが存在するので、その頂点に立つことは並大抵ではありません。

Kyle Hartzell

ディフェンスもオフェンスもかなり凄まじい。

ディビジョンI以外の選手特集もご覧ください。

女子

2016年(第35回)NCAA Women’s Lacrosse Division Iは13のカンファレンスから109チーム、独立チームとして2チームの計111チームが参加。各チームはカンファレンス内で総当たりの試合と、カンファレンスを超えた試合と、カンファレンス内のチャンピオンシップトーナメントを戦いました。13のカンファレンスのそれぞれのチャンピオンシップトーナメント優勝者とAt-large bid(*1)によって選出される13チームの計26チームがNCAAチャンピオンシップトーナメントにノミネートされ、上位6チームは初戦を免除されます。

2016 NCAA DI Championship Tournamentの選出チーム一覧は以下になります。無条件で選出される各カンファレンス優勝者以外はPRIが上位のチームが多く選出されています。ラクロスのエリート校はACCとBig Tenに多く所属しています。
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データ元:LAXPOWER

年間スケジュール

対外練習試合含めて年間のチームスケジュールはNCAAの定める約款に沿って決まります。2016/2017約款によると、2016年9月7日に練習解禁、2017年5月のNCAAトーナメント決勝戦の日付にPlaying Seasonが終了となっており、この期間以外でのチームとしての活動は原則認められていません。また、最大のレギュラーシーズン試合数は17試合と定められています。(トーナメント試合や親善試合などは除く)

2016年シーズンのスケジュールは以下のとおりです。
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留学経験者によるフィールドレポート(男子)

NCAA ディビジョンIのUniversity of Massachusetts Amherstに留学していた星野充則さんから、時期にあわせたチーム運営や練習運営についての情報提供です。

ピリオダイゼーション

9月からの練習では、新メンバーにて基本戦術の徹底を行います。チームによって差がありますが、全ての局面(OF/DF、クリアー/ライド、FO、エキストラ)に関して、一定の決まり事をもとに共通理解を深めていきます。週に1度~2度、1on1やシュート等、個人にフォーカスしたセッションも行われます。大体、11月中旬のThanksgiving前にFall Ballと呼ばれる練習試合を行い、そこでそこまで行ってきた練習の成果を試合で確認します。Thanksgiving以降は学校にもよるかとは思いますが、スティックを使った練習の割合がぐっと減り、トレーニングが中心になります。そこでシーズンを乗り切るための体力をつけていきます。

冬休みあけて、1月中旬以降は、3月からのシーズン開始に向け最終的な仕上げ。個人練習はなくなり、戦術の最終的な確認を行います。秋シーズンの練習に比べて、シーズンも近く、テンションも相当高まってきます。実際にシーズンが始まってからは、週の最初にスカウティングを行い、相手の対策を行います。チームにもよるかとは思いますが、相手チームの特徴を踏まえ、細かいところまで、戦術的につめていきます。

練習運営

コーチが完全に練習を管理しており、分単位でスケジュールが管理されています。時間は最大でも2時間とその分短いですが、集中力は高く、試合に近い状況で練習が出来ています。

日本でやるような、アフター練習はほとんどやりません。個人技術については、基本的に高校までで基礎を身に着けた上で、大学ではフィジカルの強化と戦術理解に大きな重きをおかれています。

上記の背景は、ラクロスで成果をあげるのは当然ながら、学業についても高いRequirementが求められており、成績が一定以下ですと、チームに参加することも出来なくなります。自分の印象としては、優れたプレーヤー程、勉強との両立がしっかりと出来ていて、厳格なタイムマネージメントを己に科している印象があります。

トリビア

続いて同じくNCAA ディビジョンIのJohns Hopkins Universityに留学していた會田洋平さんによる、チームの雰囲気を知るのに役立つ情報提供です。トップダウンの統制が効いているようです。

練習:チーム練習は2時間程度と短期集中。ストレッチ、パスドリル、シュート、オフェンス/ディフェンスの動きの確認(別々に)、ハーフフィールドなどで、反復練習が多いです。都度都度コーチがプレーを止めてガミガミと指示するケースが多くあります。

Discipline : コーチの質にもよりますが日本の大学チームより統制が効いてる印象です。スポンサーがいるので、全員がチームギアを着るのは当たり前で、(練習時から全員同じ格好なので)まとまり感があります。コーチの言うことは絶対で、学業について確りと成績を取らせ、マナー守らせます

ケンカ : 練習中ヒートアップしてよく殴り合いのケンカになります(グローブやヘルメットは着けたまま)。たまにコーチが練習の空気を変えるために、ケンカを仕掛けさることさえあります。

チームディナー:試合前には費用学校もちで必ずチームディナーがあります。

NCAAのスタッツ(スコア表)

NCAAのスタッツは非常に充実しています。ヒストリカルレコード然り、スタティスティシャン用のマニュアル然りです。スタッツに表れる歴史を振り返れるのは素晴らしいことです。

またLAXPOWERが長々とスタッツの相関分析をしています。例えば勝利数は得点数と失点数の差に従うことなどがわかります(まあ勝つと+負けると-なのである程度のチーム数を揃えれば相関係数は高くなるのですが)。

余談ですがラクロスのスタッツはまだまだ進化の余地があると思います。今後スポーツサイエンスの進化とともに、集計スタッツの幅や分析力が広がると、さらに面白くスポーツ観戦ができますね。ついでに言うとHudlなどのソフトウェアがチームの戦術分析や個人のプロモーションなどで幅広く使われるようになってきています。スポーツ×Techは引き続き目の離せない分野です。

まとめ

以上がNCAAラクロスをざっくりまとめたものでした。2月のシーズン開幕が楽しみです!

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