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【こぶ平コラム】クラブチーム女子の2018年の振り返り歴史

ラクロスファンの皆さん

2019年ラクロスシーズン開幕前に、ようやく2018年振り返りの最後の章を迎えました。

クラブリーグ女子編です。昨年の国内のラクロス界で、最も注目されたのが、クラブ女子の動きでした。(男子ワールドカップのブルーディビジョン復帰は、日本として特筆すべき物だったのは当然なのですが。)

この振り返りにより、今後の女子ラクロスの進む方向が見えてくると考えています。その方向を見極める為、二つの事象から見て行きます。まずは、クラブ女子の振り返りから。

クラブラクロスの復活

【長期低迷期】
日本の女子ラクロスを紐解くと、2012年から2017年までの6年間というのはクラブラクロスの長期低迷期と捉えられる。

1991年に女子クラブチームが初めて(エキシビションだが)活動を開始し、1993年にクラブリーグ戦を公式開催。全日本選手権に始めてクラブチームが出場して実質的な女子クラブラクロス元年となった。しかし、そこから学生に勝つには1995年まで時間を要し、日本選手権でクラブが優勝するのは1996年WISTERIAを待つことになった。

しかし、1996年日本一の座を勝ち取るや、2011年までの16年間連続で日本一の座を譲らなかった。(男子クラブは1999年以降20年連続日本一)

ところが、2012年に慶應義塾大学が初の学生日本一を獲得すると、その勢いのまま全日本選手権においても、東西の女子Topクラブを破り初の日本一の座に付く事になる。

このころ、女子クラブチームは新旧交代の狭間に入った状況となり、旧戦力が残ったMISTRAL、NLC SCHERZOが2013年に踏みとどまるも、2014年からは、豊富な運動量をベースにした、動きのあるラクロスへの変換が追い付かず、Topを取った学生の選手の加入を受けてもスキルフルなラクロスとの融合による新しいラクロスの創出に時間を要し、組織としても、又ラクロスを目指す学生、Teen’sプレーヤーの増加等による学生全体のレベルアップに対しても、ビハインドが続いた。

【新しい力の台頭】
2012年のクラブチームが日本一の座を明け渡したころ、クラブチームの新旧交代の動きとともに新しい力が独自のムーブメントを持って台頭する時代が開幕した。2011年のU19世界選手権でちょっとした挫折を味わった世代が、世界と戦えるチームを作る事を目指してNeOを設立したのが2013年の終わり。2014年から東日本リーグに参戦1年で1部に昇格、クラブリーグを牽引する勢力となって迎えた2017年の全日本選手権決勝。試合を優勢に進めながら、日本一の座を学生から取り戻すことはできなかった。又、その2017年にはToyやMSpiritsといった、新しいクラブも参入しクラブ復権の流れができてきた。

【2018年のクラブラクロス】
4年連続で日本一の座を学生に奪われ続けたクラブチームは、新旧の入れ替わりを果たしつつ、新しいチームの台頭から、クラブが復権する機運が高まった2017年を受けた2018年は、西のNLC SCHERZO、東のMISTRALが一気に新旧交代に動き結果的に明暗を分けた。

そして、2017年に届かなかった日本一を目指してハードな練習と、全員で考えるラクロスを築き上げてきたNeO。いち早く新旧融合に着手をしたFUSIONを含めた4チームがクラブをリードする状況を作り出した2018年。東日本はリーグ戦から3チームがしのぎを削り、MISTRALが2015年の1部参入以来初めてNeOに公式戦で勝つなど、FUSION,NeO,MISTRALの3チームが4勝1敗で並び、最終戦で大量得点をしたFUSIONが2015年以来のリーグ戦1位を奪取。

しかし、プレーオフトーナメントでは、MISTRALに雪辱し、FUSIONにも勝ったNeOがリーグ戦総合4連覇を果たす形となった。

<NeOの強みは何だろう>
よく男子のFALCONSと比較することがある。
確かにチーム創設当初は2011年U19,2014年フル代表の選手がリードするチームであったが、その後は大学リーグ2部以下の選手を中心に増殖を続け自分達の手で鍛え上げ大学リーグ3部出身の日本代表を輩出するなど、ストイックなまでに自分達を進化させる部分はFALCONSとダブル部分である。同様に、世界で通用するチームを目指して、新しい技術や戦術を自主的に取り入れる。それこそが強みだろう。
ただ、そういう進化を目の前にして、大学出身者が負けまいと、他のチームに入り鍛え上げているのが今の東日本リーグなのである。

<MISTRAL>
MISTRALは2017年に続き2018年も大きなチームの新旧の入れ替わりの波にさらされた。18人もの大量入部。2年で8割が入れ替わる事態にチーム力の低下が懸念されたが、旧人との壁が取り払われ学校文化の違いも、数度の合宿で克服され、全日本クラブ選手権までにはチーム力が高まり、成熟度の高いFUSIONに対しリーグ戦、2017年のプレーオフの雪辱を果たし2013年日本一以来の全日本選手権出場を果たすまでに進化した。この進化はNeOとは別の意味でクラブでの進化を証明した意味でも2018年の特筆すべき事の一つであろう。

<FUSIONは?>
FUSIONは2017年2018年とほぼ同じメンバーで良い意味で、成熟度の高いチームになった。新旧のバランスもとれたタレンティブなラクロスも期待されていた。しかし、シーズン後半の選手権モードになる時期に、結果的に進化の度合いが少なかったように見える。これは、何故なのか?
2018年シーズン前に、新人の加入が少ないという話をしたことがあり、その時に何故だろうという話題になった事を思い出した。その時に「FUSIONのラクロスってどういうラクロスなんだろう」という問いに対して、明確な答えが無かったという事だった。
FUSIONはシーズン後半までに自分達のラクロスのスタイルを見出す事に時間が掛かり、そこからの進化が間に合わなかったのではないだろうか?
今年、FUSIONのラクロスは明確になっているようだ、新勢力も入るだろう。最も進化の期待できるチームだと見ている。

東日本リーグは、この3チームと下位3チームの間に格差が広がりつつあったが、2018年点差こそあるもののSibyllaの選手増と伝統の泥臭さの復活、ORCADEAの積極的なチーム作りに全体の進化を見たのだが、残念な事が1つ。2005年には日本一にも輝いたCHELが選手層の薄さもあり、2部陥落となった事だ。
これは単に一つのクラブの問題ではなく、クラブのラクロスに内在する共通の問題に他ならない。
このことは、次回「これからのクラブラクロスの編」で多く語りたいと思う。
そして、CHELを破って1部に昇格したのが、創部2年目のMSpiritsである。このチームについても次回語りたい。

2018年の東海、西日本リーグ

<関西地区は?>
関西地区というミクロな世界では、alfa、Toyと2チームが加わり活性化の方向に進んでいる、と見るのは1面である。しかし、2004年の設立以来NLC SCHERZO(SCHERZO時代も含め)の15年連続の関西制覇というのは男子のFALCONSの全日本選手権11連覇を越えるものだ。
この1点において、全日本クラブ選手権における関東3チーム出場の図式の変化を期待しにくくしている。実際に数年に1度関西学院が学生選手権で優勝するのみの大学の状況と似た図式に思えてしまう。
大学で、達成できなかった進化をクラブで獲得するべく、クラブラクロスにまずは挑戦する選手が増える部分から関西地区は変われはずだ。
NLC SCHERZOは昨年一気に新旧交代を進めた。富田選手や、小引選手、上妻選手に武田選手等も加わり蜂須賀選手のようなキャリアも融合すれば進化が加速すると思われるが、やはり選手層の厚さが加わるとケミストリーを起こすはずだ。やはり関西地区をリードして、クラブで続ける選手を増やして欲しい。

<東海地区は?>
伝統の名古屋ラクロスクラブが復活し、SELFISHの独壇場ではなくなった2018年。各地区同様、クラブラクロスで続ける人材の育成が鍵になっている。特に中京地区経済がリードする環境で全国の選手が集まるのに対して、受け皿としてしっかりとどういうラクロスを目指すのか提示が必要なのではないか?
実は、東海地区は伝統的にグラウンドホッケーが強いし、企業も応援する気風がある様に見える。そういう中で、どのようにラクロスをアピールしていくのかクラブ全体で考える意味は大きいのではないか?

<中四国地区と九州は?>
2018年中四国地区女子クラブは、豪雨の影響も受けて受難の年となったようだ。3チームへの減少という事で、退潮感があるかもしれないが、昨年来の中四国地区クラブの情報発信を見ると、その頑張りには称賛こそ贈られるべきと考える。
大学との連携等も含めて、さらに地域全体のラクロスの活性化がポイントである。
今年、2チームになる可能性が高い、九州地区との連携は、男子クラブラクロス同様必須のプログラムではないか?
目立った、女子団体スポーツが女子ホッケーのコカ・コーラチームや女子バレーという強豪だが、極端な話コラボすら模索して、中四国九州の女子スポーツを盛り上げる一翼を担うような活動を協会も支援できないものだろうか?

クラブの復権

記念の第20回全日本クラブ選手権も、普通の戦い方に終始したが、結果的に3年連続3回目の決勝進出のNeOと、準決勝で宿敵FUSIONに9対2と完勝した上り調子のMISTRALが対決した。
結果的には、後半に総合力の差を見せつけたNeOが突き放し、3年連続のクラブチャンピオンとなった。

そして、この2チームがクラブの復権を掛けて、全日本選手権での慶應義塾と関西学院との戦いに臨む形となった。

大学選手権において、その豊富な運動量と鍛え上げた強さで慶應義塾に完勝した関西学院に対して、ほぼ変わらない年代のMISTRALは速醸力を見せ、若いという武器も駆使しながら、パスワークで翻弄、後半の反撃を凌いで6対4と学生の勢いを止めると、NeOも慶應義塾の前年同様の活発な動きを、前年以上に真っ向から受け止めて、切り返し勝利した。最後まで衰えなかったNeOの動きは進化を証明した形だった。

ここにおいて、クラブラクロスの復権が実現。2チームが勝った意義は大きい物がある。

そして、決勝戦。高野ひかり選手が本領を発揮し、廣野選手のプレーも光ったNeOがトータルの熟成度の差を見せ、速醸のMISTRALに勝利。創部5年目にして念願の初優勝を飾った。実力者が揃う形だけでは勝ち抜けないラクロスにおいて、ぶれずに進化を続けたNeOが新たな歴史のページに足跡をくっきりと残した2018年。後年NeOの時代はここから始まったと言われるのかもしれない。

スポットライト

東日本の2部で、Vitoriosaというチームが2018年2部のプレーオフトーナメントに初進出した。
東日本の2部と言うのは、生涯ラクロスを楽しむクラブがあったり、大学の育成の位置づけのチームがあったりする中、ひた向きにラクロスを楽しみ、勝負にも挑むラクロスというのは清々しい物がある。ラクロスの広がりというのは、こういうクラブが各県にできる事で果たせそうなのだがどうだろう。
女子クラブラクロスというのは、ここ何年も選手が増えている訳ではない。しかし、クラブでの進化が無ければ、世界で戦えるチームはできない。世界で戦う為に結成されたNeOが頂点にたった2018年。今年は、クラブがリードする時代の幕開けになって欲しい。

第2の事象〜新時代の女子ラクロスをクラブラクロスがリードする〜
については次回に書く事にします。

Women lacrosse new era !

こぶ平

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