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【こぶ平レポート】全日本ラクロス大学選手権・決勝の結果の考察

11月26日9回目のラクロス全日本大学選手権が 東京駒沢オリンピック公園陸上競技場で快晴の下行われました。

結果|男子ラクロス

慶應義塾大学(関東代表) 10対7 (関西代表)大阪大学

結果|女子ラクロス

慶應義塾大学(関東代表) 13対2 (関西代表)同志社大学


今年の大学日本一は慶應義塾大学のアベック優勝になり2012年以来の快挙達成です。
内容的には、戦前の予想を覆す結果でしょうか?

男子の接戦の意味するものと、女子の大勝について考察してみます。
勝手な言い方になりますが、少し大学のラクロスも岐路にいるのではないかと、見ていて感じた事を書きます。


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決勝の結果の本質は逆だったと思います。

「男子の差が大きく、女子の差は少なかった。」

まずは、優勝した慶應義塾サイドの考察です。

この結果の差は慶應サイドのスタンスの違いから来たものだったと考えています。
試合前の厳しい想定(リーグ戦での苦戦は男女とも同じだったか。もしくは男子の方が厳しい想定をされていたのではないかと考えます)は、東海地区との戦いで少し戦えるという感覚を取り戻した男子と、再び最後まで全力で戦わねばならなかった女子とでは、決勝に向かう想定の厳しさが逆転したのではないかと考えています。
具体的に相手の事が分かっている割合の多い同志社が相手という女子の想定のしやすさはあったと思われますが、準決勝後により具体的な想定クリアの目標設定をされたのは女子の方であった。「今、そこにある危機」というものでしょう。

女子の想定
① 関西は昨年明治を破って日本一になった実績があり、各大学がそれを越える練習をしてきているだろう。
② 同志社大学には2名の世界大会日本代表がいて、その一人はゴーリーでありそれを止めるのは苦労する、ゴールするのは今までより厳しくなるだろう。
③ ドロワーは関西のベストドロワーで強いだろう。
というような想定(もちろん、この程度であるわけもなく、もっと細かい設定はあるはずです)

男子の想定
①関西は今年1番強いのはどこだろう?立命館?関西学院?大阪が来た!
②大阪は特別な特徴はなく、DFの良さからゲームを組み立てている?
実際はこの程度の事ではなかったでしょうか?

私も、実際の大阪大学の男子ラクロスの情報をツイート等の記録からまとめてみましたが、SNS上では特徴が見えにくい大学で、何となく強いっというような印象(すいません、大阪大学さん。詳細は後で述べますので。Justの印象です。)でした。

この想定の時、男子は何をすべきでしょうか?自分たちのラクロスを全うするしかないという相手に対して具体的な何かを鍛えるという事はなかったと推測しました。

女子は異なりました。

自分達は①に関しては負けない練習をしてきたはずだ(実際に明治にも勝てた;この際は昨年のチームとは違うとかは意味がなく絶対的なマインドセットの基準としてです。)
日本代表のアタックは止められる(関東にもいた)が代表ゴーリーは手強いし、自分達もショットを決めまくっていたわけではない。
ドローは慶應も強いが、五分五分では行ける。もしかしたら劣勢でもグラボ取れていたよね。

というような具体的な物に落とし込みができたはずです。

そして試合が始まりました。

★男子試合
開始7分で2点を取り、意外にプレッシャーも感じないでプレーもできる。これは行けるな!という時にゴーリーからのクリアミスで相手にゴールを奪われます(このあたり油断が見えていました)。しかし、その後の攻撃もラフなショットに、相手の攻撃らしい攻撃も少なく、19分には#3–#39というセットで良いゴールを挙げた為これでいける感がさらに加速したのではないでしょうか、非常にルーズな攻撃とディフェンスに終始しそれでも、エース#3が簡単に決めた事で又、アバウトなパス、つっかけ、単純なプレーになり、大阪のしつこいDFに嵌りだしました。両チームミスも出る中、大阪のDFからのカウンター攻撃も決まり、3対4と追い上げを受けた所でハーフ終了。
うまく修正をし、3Qイリーガルクロスによるマンダウンにも関わらず、優勢に進めて7分からの7分間で4点を奪い(内2点は#3井上選手)余裕が出ました。しかし、2点をカウンターで返され3Q終了時は8対5。
結局4Qもアバウトなラクロスに終始し、結果的には#3井上選手の合計4点、1年生の#48も得点を決める等で10対7と勝利したものの、会場の沸くシーンも少ない試合になりました。

これは、想定しにくかった試合が、簡単に点が入り勝てそうだと見切った処から来るアバウトなマインドセットを、試合全体を通して変えられなかった結果だと思えて仕方がないのです。

こういう、見方は大阪大学さんに対して、とても失礼だという事は重々承知の上です。
しかしながら、観客からすると、どうにかして勝つぞという強い意志の発現はなく、ターンオーバーから攻撃というところでのミスも多く、不調慶應義塾を破る機会を手放してしまったというのは否めない。DFからのカウンターがポイントだとするなら、そこでのミスはなくすという次元ではなく、次のプレーに繋がるようなピンポイントのパスを100%出せるという次元まで高めないと、外国との戦いにもつながりそうにもありません。

そういう事もあって、日本代表に学生が選ばれなくなったのでしょうか?(2017年は慶應義塾#3井上選手だけでした)

大阪大学さんに、関しては私自身とても好きなチームです。
新制大学選手権が始まった2009年に1部昇格を決め、2013年には1度降格も2014年再昇格を決めて、2015年いきなり関西初優勝エポックメイキングなトリックスターかと思いきや2016年1部2位をキープし、2017年2回目の優勝。京都大学さん不在の関西ラクロスを神戸大学と関西学院とともに牽引トップランナーになられています。
特に今年の4回生の皆さんは、2014年の2部時代に入部し昇格、優勝、2位を体感して強さを継続してこられた方々です。2015年の日体大戦、FALCONS戦でどこが足りないのかを体感された選手も多かったはずです。だからこそ、今年のチームはどんなチームだろうの期待も大きかったのかな?
大阪さんにとっての誤算は、ミスの多さだったのでしょう。ただ、相対的にはシュート力は、残念ながら、Behindしていたと言わざるを得ません。
2015年決勝時と比べても大人しい感じのチームだったように思います。
大阪大学らしさをもっと徹底されると勝ち切れるようになると信じています。

結果的には、リーグ戦でこの戦いでは負けていた可能性もある慶應義塾が優勝した。早稲田や一橋戦のような気持ちであれば、慶應義塾が大勝できてもおかしくはなかった。
選手権までに具体的に設定したレベルまで進化してこられることをお祈りしています。

☆女子試合
ゲームの入り方は同じでした。厳しく入って先制をし、勝ちきる。その実現の為に総体力は十分日本代表ゴーリーから何点獲れるか
ドローは5分5分
懸念のゴーリーを抜けるかの挑戦が始まりました。結果は1分で出ます。ドローを#96のコントロールで取り、速攻インサイドに入り込んだ#33のハイポジションのショットが決まる。

続けてドローから、相手のライドに対して、ダウンボールのリカバリーも支配した慶應は、4分に#96のサイドからドアステップからのカットインで抜けて2フェイクで完璧にゴーリーの裏を取り追加点を上げます。

そして7分、#96のフリーショットも、一気のランからフェイクを入れて完璧にゴールをゲットします。ほぼこの瞬間に、このゲームの行方が決まったと思いました。

◎こぶ平スコープ◎
試合前までに、チーム関係者の方とお話しする機会がありました。同志社のゴーリー対策を徹底して行った(1週間)それが功を奏するか?がポイントです。っと。

正にこの7分までの3得点がその対策の結果だと思われました。そして、ドローは圧倒し他の選手のフリーシュート2本も決めます。結果は前半7対1。
ドロー8対0、ショット 12対2(こぶ平カウント) フリーシュート 慶應3/3
後半も勢いを緩めず 6対1 合計 13対2 #96白子選手4点、#32友岡、#99出原キャプテン各2得点他5名の得点で完勝します。
トータルで ドロー 13対2 ショット数 23対8 フリーシュート 慶應 4/6という結果をもたらします。

立ち上がり上手く決めた事は、男女同じでしたが、その後も対策通りの動きを徹底し、妥協などしなかった事が女子の完勝だったのではなかったでしょうか?
慶應女子は、集中力も高く、ゆえにミスも少なく、ミスがあってもリカバリーが速い。
ここまでの差は、両者の想定を超えたものだったと思います。
そして、想定以上に決まった得点に弛まず、厳しくグラボを制し、ドローに集中し、ショットを決めきるアクションに集中し、最後まで持続させて後半24分にも得点を重ねた。

☆彡 それは、新チーム結成から希求した、慶應女子ラクロス’17の初めての発現だったのでしょう。得点をすることに喜びが満ちていて、最後は楽しそうにやっているとすら思えました。

結果は、大勝という物でしたが、そこで交わされた技術は高度なもので、ミスの少ない好ゲームだったと思っています。


同志社大学の誤算
同志社さんの想定はこうではなかったと想像しています。
運動総量は互角に来ている(同志社のコーチも追い込むことがお好きです)
攻撃力は、前半は慶應の方が優る。ドローも4分6分程度は行ける。
守備力は5分5分といかなくても、日本代表ゴーリーがいる
どうですか?
こういう想定だと、どんな戦術を取るでしょう。
私の想定は、ボールを取られ、ポゼッションを取られても、ライドで仕掛けボールを奪ってカウンター速攻を決める。#58もいる#99キャプテンも伸びている。もしライドが不発でも、ゴーリーのセーブから、ターンオーバー速攻を確実にものにする。あわよくば2点程リードし、後半の運動量勝負を戦い抜く。
のような想像をしていました。しかし、開始から想定を超えた慶應が居た。

ライドが決まらず、ボールの寄りでも後手を取らされ、結果ゴール前の侵入を許すと、想定をかなり超えた慶應のシュート力が発揮された。

試合を作る前提の想定をすべて越えられた時に、敗北を認めざるを得なかったと思います。しかし決勝で2点すべてを奪った、#3 長瀬 涼音選手は2年生です。そして、恐らく国内の戦いでは初13失点の#2 ゴーリー/竹本 萌優 選手も2年生です。ここからの進化は無限大です。

一方で、慶應義塾大学の話に戻りますが、
大学選手権準決勝の南山大学戦までは、ここまでのシュート力はなかったのではないかと思います。
南山大学戦以降の1週間で、ここまでの進化を遂げた慶應義塾のベースの高さに拍手をしたいし、選手の皆さん、的確な進化を導いたコーチ、チーム関係者の皆さんに大きな拍手を送りたいです。
慶應女子は最後まで徹底して、今までできなかったことをやりとげようとされた、愚直とも言いたいぐらいの姿勢こそ、今年の慶應義塾女子ラクロス部だと思います。
それが短期間に、進化を果たした原因なのでしょう。

そして同志社大学への話
関西学院さんは、昨年日本一まで登られました。しかし、全日本大学選手権においては
2013年 対 慶應義塾 2対11
2014年 対 明治    1対10
2017年 対 明治    6対7(6対1からの後半大逆転負け)
という、屈辱をバネに、2016年の日本一を達成されました。
今年が、始まりなのです。


最後に今回の大学選手権で気になった点を2つ書きます。

会場内観客の皆さん3000人はいなかったでしょうね。昨年よりも少ない感じがしました。
各地区と関東地区との差が又広がっているのかもしれない。ラクロス離れはないのか?

は②が起因のようにも思います。(数字が間違っていたらごめんなさい。少なかった気がしています。)
ラクロスは、ワールドゲームズにも挑戦し、プレーヤー人口も関東を観れば増えていそうな気がしていますが、他の地区ではクラブが減ったり、もともと大学から継続するプレーヤーが少ない現状はあります。このまま関東一辺倒になるとパワーバランスがまたまた、大きく変わると思われます。特に男子の試合、どうせ関東が勝つのだろうから、関東リーグ戦の決勝の方が面白いとか、男子の試合はルールが女子と違って参考にならないとか思われていませんか?

意識において大きな変革が必要ではないでしょうか?

大学生の皆さんラクロスはお好きですか?

ラクロスは就職のツールではなく、眠っている自分の力を発現させてくれるものであり、進化は限りがありません。ラクロスにもっと関心をもっていただけるとファンとしてはうれしいのですが。
そして、大学選手権決勝、日本選手権決勝の会場が満員になるようにできれば、それこそ運営の「サクセス・ストーリー」として望の就職も叶うと思うのですが。

このように全日本選手権への挑戦者は
東京会場 12月9日(土) 駒沢オリンピック公園第1球技場
慶應義塾大学 vs 全日本クラブ選手権 準優勝チーム(予定)

大阪会場 12月10日(日) ヤンマー・フィールド長居
男子 大阪大学
女子 同志社大学 vs 全日本クラブ選手権 優勝チーム(予定)
と決まりました。

これからの2週間で大学チームがどこまで進化を遂げるか?
12月2日の全日本クラブ選手権 決勝をスカウティングできる強みはありますね。
4年連続学生が日本一になれるのか?この2週間が決める。

なお、今回のコラムはかなり推測が多いので、こういう見方もあったんだという意味で、見ていただけると幸いです。ご意見下さい。いやいや、こんな想定はしていなかったぞ!間違ってる! なんでも、、、

May the force be with you!

こぶ平

レポート:こぶ平
写真:LACROSSE PLUS専属フォトグラファー 梅田朗江
撮影協力:日本ラクロス協会


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