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【こぶ平コラム】2017年ラクロス振り返り④|女子クラブの変換期?

滞っていた、ラクロスコラム今回は関東の女子クラブの振り返り、すなわち全日本ラクロスの振り返りにもなりますが、長くなります事をお許しください。

ラクロス2018の始動は続いていますね。関東のクラブチームも続々と新歓イベントや、働きかけ始動しています。これからの話は、クラブラクロスへの参加促進には繋がらないと思いますが、敢ての、今を語りませんか?

2回に渡り昨年のクラブラクロスの焦点は
・男子ラクロスはFALCONSさんの10年連続日本一
・女子ラクロスは初のクラブチャンピオンNeOを中心に日本一の奪還
でした。

そして2017を総括すると
・男子はFALCONSが全日本選手権10連覇を達成。
・女子はNeOがクラブ2連覇を果たすも、全日本選手権優勝を奪還できなかった。

という結果である事は書きました。女子の全日本王者は4年続けて学生王者が占める形になりました。その理由については色々言われているようですが、クラブラクロスに魅力がなくなった訳ではないと思います。
しかしながら、クラブへ進む学生側の意識の変化があるのかもしれないと考えています。
ここは、議論が必要ですが、皆さんの意見をお聞きしたい所です。

東日本女子クラブリーグの現状は先に書いた通り昨年、2017年女子はMspiritsというチームが増えました。2014年のNeO以来の加
入で、企業がサポートをする初のチーム(いわゆる実業団チームではない)の参加という新たな時代に入りました。
NeOは当時の日本代表を多く含むチームであったのですが、Mspiritsは関東ユースやU22クラスの選手を含むチームとして、関東2部のファイナルまで進出しました。1点差で2部総合決勝進出を逃したものの、ポテンシャルの高さを感じさせるチームの参加はクラブ間の戦いをより厳しいものにしています。

2012年までの実質1部5強時代から、2013年3部制を経て2部制への移行&1部6チーム時代へ変わり、ORCADEAを加えた6強で日本をリードする体制から2014年のNeOの加盟は既存のチームへ、強い波風を立てるものとなりました。

6強から1チームが2部へ降格する時代に突入したのです。恐らく2013年の2部制の変更以降は、男子同様のチャンピオンリーグ制への以降の布石だったのかも知れません。結果的に、日本一を目指すチームと、昇格すら望まないクラブとの共存が続く形が継続されています。この功罪については、後述します。

さて、NeOが女子クラブの旋風児からチャンピオンとなった2016年、全日本選手権でクラブチームは決勝に進めない初の事態になりました。これは、2012年に慶應義塾が持ち込んだゴーリーを含めた全員が動くラクロスが、運動量の差で試合を支配する時代が招いた結果なのかもしれません。

しかし、その運動量豊かなラクロスを経験した中の精鋭が集まったクラブが勝ち抜けなくなったのは何故でしょうか?練習不足?監督の不在?環境の悪化?モチベーションの維持の問題?優勝校からの流入数が少ないから?これは部外者が見るだけではわかりません。

ただ、客観的に見て練習量が少なくなった。環境は悪化した。という事は見て取れます。しかし、先にも書きましたが、男子も同じ条件化にありながら男子はクラブチームが学生を寄せ付けない時代になっています。この差は外から見える事は多くありません。考える事は後述します。

2017年クラブラクロスの女子は日本女王の座を奪還すべく2016年のTop4チームはそれぞれのやり方で進化を図っていたはずです。
クラブ新女王のNeOはW杯に向けたチームの主体となって、スキルのアップに努めながら国際的にも通用するラクロスを推し進めながら、日本での圧倒的なラクロスを目指す。

クラブ2位のFUSIONは戦力の入れ替えに苦しみながらも、W杯出場の3選手を新規に迎えて、今までにないチーム作りを目指す。

クラブ3位のMISTRALは学生王者になった明治の主力が2年に渡り参加。他にも2年目の参加も含めて新旧の入れ替えを終え、シャンパンラクロスを実現しつつある。

同じくクラブ3位で、関西の雄NLC SCHERZOは、新勢力に元日本代表の円熟の技術の導入を図っている。

等々の形の進化は続いていた。特に関東では日本代表を8人輩出したNeOも簡単には抜けない形となり、力的にはスタイルの異なるチームが均衡した形で競い合う好循環に入って来ていた。3チーム以外にもSibyllaの復活の兆しが見えて来るなど、明るい材料が多いシーズンだった。

課題として考えられたのは、プレーオフで見せた得点力の欠乏感ではあったが、逆にディフェンス面でも優れたパフォーマンスが期待されたし、その発露は見えたのかもしれない。ただ、非常に流動性が高く、どこからでも得点をできる中で、高さの核を備えたMISTRALがプレーオフ、クラブ選手権準決勝で敗れた事に象徴されるように、まだ進化ができきれていない面も強く見られた。結果的に、NeOがクラブ選手権を勝ち2013年MISTRAL以来の連覇を成し遂げるも、決勝戦はFUSION相手に6対5と均衡状態を改めて確認することになった。

一方で、関西代表は2年連続でFUSIONに圧倒される形となり、関西女子クラブチーム強化の抜本的対策が必要な時期に来たと思わせる2017年だった。

改めて、NeOとFUSIONが臨んだ全日本ラクロス選手権では、クラブチームの充実度の向上から、学生の苦戦も予想される中、学生選手権を圧倒した慶應義塾がクラブの二枚の壁を打ち抜いて王者になった訳だが、止める術はまだまだあったと思っている。

ポイントは2つ
①技術面での優位を生かして、走り出す前にボールを奪える事。
②ゴーリーを含めたディフェンス力はクラブが優る事。

それに対して、ここ3年間の学生の対応は、豊富な運動量で圧倒をし、少なくとも後半には得点を重ねる事ができるチーム力があるという事ではなかったか?(非常に単純化して語っています。)

そういった、両方の思惑がぶつかり合った全日本選手権での、慶應義塾の戦いぶりは決まったパターンのものであったのに対し、クラブは少し誤謬があったのかもしれないと見ました。

慶應義塾の全日本選手権の得点を見てみましょう。
準決勝 対FUSION #32友岡選手3点、#99出原選手2点、#11竹村、#72吉岡、#73 伊藤、#96白子各選手 1点
決勝 対NeO #33 西村選手 3点、#96 白子選手2点、#11竹村、#99出原各選手1点
となっています。

NeOを見てみましょう、
準決勝 対同志社 #7小西、#11小川 各選手3点、#17剱持選手 2点、#10鵜尾、#12稗田、#44山田、#77佐藤各選手 1点。
決勝 対慶應義塾 #11小川選手 3点、#2 廣野選手 2点、#12高野選手 1点

慶應義塾はシーズン当初から、#11,#99,#96がトライアングルとなって激しく動きながら自らも得点をとりつつ、脇を突くプレーヤーの得点を引き出すパターンを作っていたのがこの2試合からだけでもわかります。これはシーズンを通して変わりがなかった。

一方で、クラブの2チームは本来絶対的な核となれるプレーヤーを揃えながら、それらの選手を上手く機能させられなかったと見られるのが一つ。

もう一つは、慶應の2試合での戦術には大きな違いがあった。FUSION戦では前半の中盤戦に負けた際、中盤を飛ばすカウンター作戦に切り替えて走るラクロスを取り戻す。
しかし、FUSIONはその変化に有効な対応策を取れなかった。取れるだけの技術的な優位性はあったはずです。

NeO戦では、ゴール前でのディフェンスを崩せなかった事に対して、そのまま敢て作戦的には変えず、ATの動きを強めて対応力の低下を引き起こさせて逆転に導く。
ここでは、敢てNeO側でアタックの戦術変化や、ゴール前から中盤のDFに変えて行き、体力の消耗を抑える事ができたはずです。

そしてそのどちらの作戦でも慶應義塾の核となる3選手の動きは落ちませんでした。
特筆すべきは慶應#96白子選手の圧倒的な運動量でした。誤謬というより、この白子選手の進化はクラブにとっては誤算だったかもしれません。

クラブチームは、同考えたのか考察してみました。

2つのクラブでは、よって立つ考え方が異なる形だったと思います。ともに、相手を抑える事は優位性があるが、抑える位置が違いました。FUSIONは中盤で、NeOはゴール前で。そして、同様に抑える事ができたが、慶應の対応が異なる為、両者に求められたことが違った訳です。

先にも述べたが、FUSIONは開始早々前衛、中盤でのライドから慶應の動きを封じ、奪い取って攻撃に繋げる形が功を奏し、リードをします。しかし、ここで慶應は中盤を割愛して、ロングパスを交えたカウンター攻撃に活路を見出し、結果として、FUSIONのDFラインを下げる事に成功する。結果としてスペースができた慶應の攻撃が活性化しアジリティの高い友岡選手が生きた。ここでのFUSIONの対応は、さらに前でのライドからパス出しを封じる形が正解だったように思われる。

一方で、NeOは自陣でのDFが慶應のアタックを封じ、カウンターから点差を広げた前半の攻撃が行き詰まりを見せたところで、中盤より前で封じてボール奪取から、多彩な攻撃陣で攻めるパターン等への変更、特にツインタワーのミドルで慶應のDFを外に出しながら、#2,#7,#11のインサイド攻撃を演出する形を交えて行けば、自らの体力消耗度も抑えられたと見ていた。
慶應の攻撃がNeO戦では変わらなかったのは、前での活動が功を奏さなかったからで、同じ形で攻めて、体力勝負に持ち込まざるを得なかったと感じた訳です。

結果として、クラブチームの方で必要とした変化を打ち出せなかったと見た訳です。
これに関しては、意見があると思います。
ただ、2012年頃からのTopのラクロスは、試合の中で戦術や戦力を変えられる力のあるチームが勝ち残るようになり、又その中で矛盾するようですが絶対に決められる切り札を持つことも勝つための最低条件になってきているように感じた、日本選手権でした。

女子のクラブチームとしては、試合途中での戦術変更の判断をしっかり行えれば、大学チームに負ける事もなさそうだという事も言えます。逆に言うと、突出した強さというものは各チーム持てそうもないが、全体的に非常に高いレベルになりつつあるという事だとも言えます。

クラブ女子は、今年大きく変わっていきそうな気がします。新チームの体制も決まりつつあり、確かに新旧の入れ替わりはありますが、中堅からベテラン域の選手も残ってもう1度クラブが覇権を取り返す事を誓われているとお聞きしています。
例えばFUSIONの水戸選手は「次のワールドカップ出場を狙う。」と宣言されたとか、
日本代表‘ゴーリーの岩田選手はFUSIONのキャプテンとなり牽引されるとか。
そして、MISTRALでも前キャプテンの小堀選手が継続されて支えて行かれる等、明るい話も聞かれます。
日本代表だった、4年生の動向は一部しかわかりませんが、きっとクラブで続けてくれると思います。

Club strikes back!! Star Wars第5話じゃないですが、今年のクラブラクロスは男子のワールドカップ同様見ものです。

しかし、クラブリーグの置かれている状況はやはり危うい物である事も間違いありません。

関東のクラブチームでも、選手の母数からすれば学生からの流入率が多いとは言えない、いわば誤差の世界であることは間違いありません。
それは、1部2部3部4部所属云々の違いはあまりなさそうです。女子はむしろ学生1部リーグに所属をしていた選手の流入率が少なかったのかもしれません。お話を聞くと、燃え尽き感や、仕事に入ってから戻ろうとも思ったが、中々「自分達で全てを仕切り、実行し続けるパワーを維持できない」と非常にまっとうな理由を述べる方が多いのです。

掘り下げます。

時間を要したのですが、少し調べました。協会登録のクラブ加盟のラクロッサーさんの数を2017年度のクラブ人名簿から探りました。そして、その名簿以降に加盟された情報を若干補足したものですが、女子のクラブラクロスの登録者数は

866名
新人(と思しき*1)選手  153名

大学女子の選手数  8,054名(*2)  1学年平均単純計算で2013名

単純計算で  8%がクラブラクロスに進んでいる計算ですが、昨年は新しいクラブが全国で2チームできた関係でいつもの年より3%程度高い数値が出ています。
関東で1チーム、関西で1チームが増える一方で、中四国では1チームが人数不足で活動中止を余儀なくされています。
今後もこの傾向が続くのかはわかりませんが、既存のチームにおける新人の組み入れ不足は大きな課題だと思われます。

*1 新人と思しきの意味は、名簿上で2017加入と明記されているのがクラブの30%ぐらい。後はどうも、2016年度卒(2017年3月卒)の情報に思われるので、その数をピックアップしています。多めに出ている可能性があります。

*2 大学女子の選手数はラクロス協会が発表している、Senior選手数8,920から勘定したクラブ選手数866名を引いた数字です。

実際の既存クラブへの参加率が4,5%というのが現実なわけですが、(前回3,4%と書いたのは、新人の判断が難しかった事が原因です。)2016年度日本代表候補の内6名が4年生で内3名(2017年度代表)しかクラブへ移行していないという事実もあります。

このクラブへの進捗率の少なさは、プロがあるスポーツと同様な数字ですから、それが直接学生に勝てない理由ではないと思います。根源的な問題があるのでしょう。
そういう意味で、クラブラクロスの置かれている問題については別途、機会を設けて考察します。

皆様のご意見をおまちしています。

こぶ平

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