Major League Lacrosse 15年間の歴史は成功したといえるのか?-飛躍への課題と解決策
Major League Lacrosseは2001年に開始し、15年の歴史があります。このプロスポーツエンターテイメントが15年間でどのように改善してきたのか、今後の課題は何か、についてLax All Starsのコラムニストが分析をしているので、それを紹介します。
彼はMLLの今後の発展に必要なのはフルタイムプレーヤー導入とメディア活用、カレッジスポーツとの更なるコラボレーションが重要だと見ています。MLLの歴史を、当事者として見てきた彼の意見は興味深いものです。プロスポーツエンターテイメントとしてポテンシャルあるラクロスの今後を考えたいという人に役立つ記事だと思います。
Has Major League Lacrosse Improved in 15 Years?
下記記事はConnor Wilsonの記事の私なりの意訳ですので、詳細に関しては原文をご覧ください。記事は2015年11月のものです。
筆者の立ち位置
まずプロリーグが成功しているのか失敗しているのかを議論する前に、私のMLLに対する立ち位置についてはっきりさせておく。私はMLLが設立された時から15年間リーグを見ており、プレーヤー、チームのオーナー、そしてBoston Cannonsのマスコットと友人であり知人である。
MLLは(私のような)遅咲きの選手にもハイレベルなリーグで活躍できる場を提供した。MLLは私があったらいいなと思うリーグであった。その時はリーグが正しく運営されればあと数年でメインストリームのスポーツになると考えていた。XFL(*1)が電撃的に成功したように。その時私は若干20歳であり、どのようにプロリーグを発展させるのか、プロリーグにどれだけのコストがかかるのか知らなかった。
(*1)NFLとは違った新しいスポーツエンターテイメントとして2001年に設立されたアメリカンフットボールリーグ。興行が上手くいかず1シーズンで終了したが、ファンエンゲージメントの手法の一部はNFLに継承された。
今は年を取りLacrosse All Starsの仕事をとおしてMLLコミッショナーのDavid GrossやMLLの共同創始者であるJake Steinfeld、またMLLの現役選手から様々なファーストハンドの情報を得ることができる立場だ。青年のころのMLLへの心酔は消え、より客観的に物事を判断できる。
ではその立ち位置から見て、MLLは15年間で改善したといえるのか。
MLLは15年間で改善したといえるのか
そうだと考えられる。プレーヤーのレベルは高く、ラクロス競技人口は増加し、ラクロスは一部の地域のスポーツからより広域に広まっている。一方でテレビ放映ではラクロスの面白さを伝えきれていない。カジュアルファンには難解なルールと早すぎるゲーム展開、これらは対処されるべきだ。また、より広い潜在ファン層にアプローチをする必要がある。だがそれらはMLLを改善するための数ある課題に過ぎない。
フルタイムプレーヤー導入
MLLを次のステージに進めるために今すぐ取り組むべき課題は、フルタイムプレーヤーの導入だ。
フルタイムプレーヤーはラクロスのゲームの質を向上させる。週1回試合をするだけよりは、週4-5回の練習をすれば質が上がるのは当然だ。フルタイムプレーヤーが地域に根差すことでより多くのファン獲得の機会を得られる。例えば子供向けのクリニックなど開催すればファン獲得につながる。しかしフルタイムプレーヤーを導入することはMLLで最も難しい課題といえる。
フルタイムプレーヤー導入のための資金確保
現在はプレーヤー一人当たり平均$10,000程のサラリーだが、フルタイムプレーヤーとするには一人当たり$50,000のねん出が必要だ。一チーム25人のプレーヤーがいるとすると、現在の9チームで、リーグ全体では$9-10millionを毎年創出する必要がある。メジャースポンサーの出現や巨額のテレビ放映権、エンジェル投資家の出現がない限り困難だ。
一つのオプションはLax Sports Networkだ。LSNは一人の購読者から年間$70の購読料を徴収している。$9millionを徴収するには125,000人の購読者が必要だ。MLLはTwitter に58,000人のフォロワー、Facebookに59,000人のファン、Youtubeに40,000人の登録者があるがそれらはすべて無料だ。従ってLSNにあまり多くを期待すべきではない。
だがLSNがカレッジラクロスに深く入り込めばチャンスはある。Denver、Penn State、Marylandなどのビッグゲームのカバレッジの機会や、Division2やDivision3、MCLA Championshipなどが対象だ。
吉報としては各チームのオーナーは勝ちたいと強く考えていることで、プレーヤーに更なる報酬を支払うインセンティブがある。それはMLLがチームに更なる支配権を与えることを意味するが、MLLはそれを望んでいるだろうか?その他のオプションはビジネスモデルを変えることだ。
現在5月から8月まで開催されているリーグの開催時期を早めることだ。NFL方式のようにユース、ハイスクール、カレッジのゲームは土曜日までに開催し、日曜日はプロの試合を観戦する。ゲームはカレッジキャンパスでも開催できる。チームが保有するスタジアムを売却することも検討できる。スタジアムを保有してチケット売却収入を得るのと、スタジアム売却収入を得るのと、どちらが金を生むか検証すればよい。
フルタイムプレーヤーがいて、ゲームがカレッジキャンパスで開催されれば、日曜日に開催されるゲームには多くのラクロス関係者が集まるだろう。MLLがカレッジラクロスとは違う次元にあることが改めて認識される。ハイレベルなゲームに対する対価支払と小さめのスタジアムの満員の観客は$50,000のサラリーを賄うための発射台になりうる。
フルタイムプレーヤー雇用のための道筋は多くの困難を伴うが、それがMLLの成功とラクロスをメインストリームに押し上げる鍵になると私は考える。フルタイムプレーヤー導入は本拠地でのラクロスのプレゼンスを高め、プレーの質を高め、リーグによいプレーヤーを留め、将来のプレーヤーに機会を与える。
MLLはラクロスの成長に身を任せ、フルタイムプレーヤー雇用はマーケットがそれをつくりだすまで、何もしてこなかった。だがMLLはフルタイムプレーヤーの重要性に気づいているはずだ。
フットボール、バスケットボール、サッカーとの比較
MLLは15年続いてきているが、それだけで価値がある。損失が発生していてもMLLの存続を望む人がいたということだ。それは真新しいことではなく、持続可能なプロリーグができる過程である。NFLとNBAも同じ過程を経ている。
マイナースポーツの比較としてMajor League SoccerはDay1からフルタイムプレーヤー雇用を達成していたことを引き合いに出される。しかしそれはサッカーが世界一の競技人口を持つからだ。ラクロスは全米で68番目だ。それにサッカーの場合は1968年から1984年までプロリーグが存在した。
フットボールとバスケットボールのほうが辿っている道は似ている。時間をかけて地域のスポーツから全国のスポーツに展開した。プレーヤーのサラリーは低く、パートタイムプレーヤーがいた。華々しくはないテレビ放映をし、フランチャイズは現れては消えていった。そして結果的にブレークスルーした。
ラクロスは何が違うというのだろう?一つの大きな違いがある。フットボールとバスケットボールは物凄く人気のあるNCAAから便益を得ていた点だ。最初はカレッジスポーツのファンを惹きつけるのに苦労したが、カレッジのスターがプロになることで、ファンも流入した。
カレッジラクロスは状況違う。多くのカレッジチームは一試合に1万人の観客は動員できない。NCAA Final Fourでも3万人程度だ。従ってMLLはカレッジラクロスファンの流入では、フットボールやバスケットボールと同じだけの効果を得ることはできない。
中にはサッカーや野球のように、プロのファンを先に獲得できるという楽観的な人もいる。しかしそれはとてもチャレンジングなことだ。まず、既に成立しているプロスポーツがライバルとなり新規のカジュアルファンの争奪戦となる。名のとおったスポンサーによるサポートと、財務的な成功が最初から必要になる。そのためには多くの初期投資が必要になり、それは持続可能なビジネスとは言い難い。
MLLの目指すべき道
私が言いたいのは、長期にわたって成功するためには、カレッジラクロスにいる既存のファンと、スポーツ全般を好きな新規のファンを療法獲得する必要があるということだ。そのために以下を提案したい。
LSNへの無料アクセス。有名な場所でのエキシビジョンマッチの開催。National Parks Deptとのパートナーシップを築き、有名な国立公園でゲーム開催。海外でのゲーム開催。オールスターフォーマットの定期的なゲーム開催。シュートコンテスト開催。HD。スポンサー獲得。
MLLは15年間で改善しているのか?そのとおりだ。しかし私が考えていたラクロスの持つポテンシャルはまだ引き出せていない。今は成長しているスポーツとして捉えられているが、これが5-7年後に何も変わっていなければ状況は変わる。
MLLはしっかりと組織されたプロリーグになった。次の大きなステップはここ数年のうちだろう。