2022年全日本ラクロス選手権女子優勝MISTRAL

【こぶ平コラム 】2022年ラクロス全日本選手権 女子ラクロス編 〜 MISTRALの大復活劇 〜

第32回ラクロス全日本選手権が2022年12月18日 東京都江戸川区陸上競技場で実施された。江戸川区陸上競技場は「江戸陸」と称され、ラクロスにとっては全日本選手権が行われる「聖地」と呼ばれていて、全国のラクロス選手(ラクロッサーと言われる)が1度はこの舞台に立ちたいと望んでいるスタジアムだ。当日は朝までの雨も上がり、一転快晴の下男女の試合が行われた。

奇しくもサッカー男子ワールドカップの決勝戦を迎える日に行われた戦いは、男女とも“復活劇” がキーワードとなった。対戦カードは以下。

女子  MISTRAL vs 慶應義塾大学

男子  FALCONS vs 慶應義塾大学

試合前のコラムでこの試合の楽しみ方を書いたが、会場で又、ライブ配信で試合を見た方は楽しめただろうか?今回のコラムでは色々な見地から2022年全日本選手権を振り返る事にする。先ずは女子編からお届けする。

第32回ラクロス全日本選手権|女子ラクロス|MISTRAL vs 慶應義塾大学

概要

前回の楽しみ方の最初に、高い総合力の強さで勝ち切った両チームの戦いは、個の強さの戦いで決まる?と書いた。そしてリーグ戦の全日本クラブ・大学選手権を勝ち抜いて来た両チームには共通点が多い。基本的に総合力が非常に高いのだ。とも書いた。

女子のラクロスは2012年の慶應義塾大学の日本選手権制覇(その時の対戦相手がMISTRAL)により大きな転換点を迎えたと考えている。それまでAT,MF,DF,Gの役割が明確でシステマチックというよりは個の力を基に試合が組み立てられていた。ゴーリーもセーブをしていればその役割は十分だった。しかし2012年の慶應義塾大学のラクロスは動けるゴーリーをベースに全員が高い運動量で、オールコートをカバーし相手の攻撃の機会を奪うラクロスで勝利を物にした。大学生の場合選手の入れ替わりが起こるので翌年はMISTRALが覇権を奪還するが、運動量豊富な全員ラクロスの流れは当時練習量の多い大学に有利となり2014年から2017年にかけての大学優位時代をもたらした。と加えている。

実は2014年以前のMISTRALは役割を明確にした従来型ラクロスが多い中、全員が動いて得点に向かうラクロスの先駆的チームであり2000年後半から2010年前半まで女子ラクロスをリードしてきた。しかしそれが2012年のゴーリーまで含めた12人の運動量豊富な全員ラクロスという慶應義塾大学の提案したラクロスに追いつかれ、10年間をリードしたメンバーが交代し始めると新しいラクロスへの模索が続く中、全日本クラブ選手権でも勝てない8年間を過ごすこととなった。

☆2013年の全日本選手権11番和田亜紀子選手の伝説の7得点によりNLC SCHERZOに勝利している。

NeOいう新しいチームの台頭により、新たな壁が出現した中、その壁を超えるべく鍛え続けた結果2018年には5年ぶりに全日本選手権へ出場、以降2大会連続クラブ選手権でNeOと戦い着実にその差を詰めてきた。(2018年全日 4対7、2019年全クラブ 3対5、2021年全クラブ 7対8。2020年は全国大会未実施)それはすなわち、日本チャンピオンへのアプローチランだったと言える。

 

一方の慶應義塾大学は、2012年の新しいラクロスの提案以降、選手の入れ替わりという大学スポーツの宿命に向き合いながら常に新しいラクロスの模索を続けてきた。その中で明治大学、関西学院大学との覇権争い、立教大学、日本体育大学を含む関東の覇権争いの中で、層の厚い、攻撃的ラクロスに行き着いたのが2022年シーズンだった。2017年の日本一を江戸陸の観客席から見てその場に立つことを決意していた主将88番川久保選手らの慶應義塾女子高校からの生え抜きに、高校ラクロスで全国優勝経験のある同志社高校トリオ33番山本選手、57番矢代選手(3年生)、71番平井選手や3番秋山選手(美/1年/日本大学)、他高校の全国大会で活躍した74番秋山選手(雅/桐蔭学園)といったラクロス経験者の進化を起爆剤にして49番橋本選手(大阪・天王寺)や、ゴーリー51番藤田選手(玉川学園)等の異種スポーツからの融合を加速し新しい攻撃ラクロス築いたのだが、そのスタイルは高い位置からの攻撃的守備で相手の攻撃機会を奪い、自らの攻撃機会を多くする。得た攻撃機会を熟練のアタッカーが決めるという物だ。

それが体力面で凌駕する、全員ラクロスのクラブチームに対しても有効なのか? 全日本選手権大会の女子の戦いはそういう構図だった。

事前の戦力分析

まだ、絶対的な力の評価を下すデータは持ち合わせていないので、今期使用しているショット決定率等から見て行こう。

大学が相手の慶應義塾に対して、レベルの高いクラブチームに勝ってきたMISTRALのデータを比べる意味は少ないが、先の「ラクロスの見方」ではシステムとして高いレベルで仕上がっている場合、個の力が重要になる。個のレベルで見た場合MISTRALのMFは強い。16番井上選手(立教)43番田中選手(立教)、81番亀井選手(立教)、83番櫻井選手(立教)カルテッドだ。さらに大きく進化した90番木村選手(成蹊/新人)に、23番井畑選手(学習院)の長身コンビも高さの点で慶應義塾のディフェンスに対して優位に立てる点がある。対して、慶應義塾は個のレベルの技術が高い。3番秋山選手(美/日大高/1年)、4番山根選手(塾高湘南藤沢/2年)、17番岩本選手(慶應義塾ニューヨーク学院)、22番西股選手(慶應義塾女子)、33番山本選手(同志社)、47番橋本選手(大教天王寺)、71番平井選手(同志社)、74番秋山選手(雅/桐蔭学園)、88番川久保選手(慶應義塾女子)と多様な攻撃陣だそして上手い。ただ、個で何とかするタイプが少なく、強さの点では劣勢となる。そこをどのように埋めてシステマチックに攻めるのか?ポイントはその1点である。ポイントは個の力でこじ開けようとする裏からの71番平井選手、表からの74番秋山選手だが、気持ちが前に出る17番岩本選手の動きに注目をしたい。‘‘と書いた。

そしてそんな中、大きなカギを握るとみられるものが2つある。

  1. フリーシュートの成功率
    フリーシュートの機会はこのレベルになると極端に少なくなる1試合に2,3回(もしそれ以上の^になれば劣勢は免れない)であろう。それを確実に決められるか。数値的には慶應義塾が有利。
  2. ミスを犯した方が負け。相手のミスに集中して機会をモノにできるかがポイント

「追加的に慶應義塾が本格的なディフェンスに対応して、攻撃機会をMISTRALより多く得られるかが鍵である。やはり33番山本選手、88番川久保選手の働きに掛る物は大きい。

逆にMISTRALからすれば、ブレイクからの攻撃機会をどのように生かすか最大のポイントだ。81番、83番へのマークに対して他の選手がどのように補完してブレイクをできるか。MISTRALの81番、83番以外の選手の動きに注目して欲しい。」

という事で、女子の MISTRAL 対 慶應義塾大学 は中盤の激しい攻防が鍵となった試合の詳細を検証していこう。

ポイントを

①      ゴーリー対決

②      攻撃機会をどちらが多く持てるのか(ドローを含めて)

③      グラウンドボールでの寄りの速さと、球際の強さ

④      1on1で勝負できるか                   

に置いて見てみよう。

当日のスターター

  • MISTRAL G21番高橋(慶應義塾)、DF8番鴨谷(武庫川女子)、10番吉村(学習院)、95番岩田(早稲田/SIXES代表)、DR&MF16番井上(立教/SIXES代表)、MF43番田中(立教/SIXES代表)、90番木村(成蹊/新人)、AT23番井畑(学習院)、81番亀井(立教/日本代表)、83番櫻井(立教/日本代表)
  • 慶應義塾 G51番藤田(4年日本代表ソフトボール)、DF10番藤澤(3年ラクロス?)、68番中田(4年ラクロス)、DMF60番矢島(4年?)、Draw/MF88番川久保(4年ラクロス)、Draw/MF49番橋本(4年バスケ?)、MF33番山本(4年ラクロス)、AT71番平井(4年ラクロス)、3番秋山美里(1年ラクロス)、74番秋山雅望(3年ラクロス)

ゲームレポート

【1Q】 MISTRAL 対 慶應義塾大学 3対1 

注目の1stドローは慶應義塾がグラボを抑えポゼッションを取る(以降ドローは慶應義塾優位となる)も、74番が果敢に挑んだ1on1一瞬ショットが遅れ対面となったMISTRAL16番がきっちり止めるとダウンボールを取ったMISTRALが素早くターンオーバー、クリアをすると、速攻81-83-81のリターンを81番亀井が決め切り開始2分で先制した。次のターンの慶應義塾の攻撃も濡れた芝に滑った不運でボールを失い、MISTRALがターンオーバー。今度はポゼッションをキープしながら攻める。ポゼッションからセンター23番へ入れてダイレクトでショットを放つが枠外となる。しかし、高さで優位なセンター攻撃を見せた点がまず、この試合でのMISTRALの攻撃の姿勢の良く出た場面だった。すると今度は23番が広がり慶應義塾のゾーンを広げるとインサイドに飛び込んだ43番へピンポイントのパスが通る。43番振り向きざまフリーでショットを決めた。慶應義塾ゾーンディフェンスのポイントを突いた攻めだった。対する慶應義塾は攻撃の機会を生かして得点の取り合いに持ち込みたい展開となった。次のドローはMISTRALドローを新人の5番井田(同志社/新人/SIXES代表)に託すとコントロール、ドローをゲットする。攻撃のセットを変えたMISTRALポゼッションから71番倉田(早稲田/新人)が裏から仕掛けるがショットは枠外。しかし速い展開から1on1を仕掛ける形には徹底したものが見えた。それは、16,23.43,81,83,90のATのセットから4番福谷(明治),5番井田,6番鷲山(明治学院),25番大野(学習院/新人),71番倉田,77番原(早稲田)のセットに代わっても同じように積極的に仕掛けた事からも分かった。一方慶應義塾はいつも同様全員が動いて攻撃の機会を狙うが、中盤のMISTRALの守備に,攻撃のスピードは抑えられたが確実にクリアは果たす。ただしゴール前でのMISTRALの守備は厳しく仕掛けるポイントは見つからない。慶應義塾の仕掛けはやはり74番秋山(雅)からだった。74番の仕掛けにMISTRAL対応しいったんはルーズボールとなるが慶應義塾3番秋山(美)がリカバリー。次のターンを74番に戻すとセンターに入った71番平井へのパスが平井のクロスにより弾かれダイレクトショットとなりMISTRALのゴールに吸い込まれた。まずは、慶應義塾の仕掛けの要74-71のセットで、こじ開けた得点だった。その後ボールを奪った慶應義塾の速いクリアが続くもMISTRALのマンツーマンに対して個々の力ではなく距離感を持ってパス回しでの攻撃機会を探る。MISTRAL守備のハードなチェックを誘い反則を得るもFSは枠外MISTRALゴーリー21番高橋の攻守を意識しすぎたのかも知れない。しかし慶應義塾も持ち前の前からの攻撃的守備を展開MISTRALの攻撃機会を奪おうとする。しかし想定内のMISTRAL 守備的MF12番大杉(東京家政)のクリアから速攻へ移るもパスが乱れて攻撃が完了できない。やや、MISTRALが有利に進めるが、どちらも主導権を奪えない展開が続いた。

しかしここで思わぬアクシデントが慶應義塾を襲う。オフェンスセットが第1セットに戻ったMISTRALのポゼッションから攻撃。やはり83番櫻井が右から仕掛けると遅れて入った慶應義塾の横からの守備のクロスが83番の首に入るデンジャラスチェックとなり、結果的にレッドカード退場。以降10分間慶應義塾のマンダウンが続くだけではなく、守備の要となる選手をゲームから失う形となった。勢いのあるMISTRALの1on1に対して厳しく守備に行かなければならなかった慶應義塾が招いた不可抗力的な反則だったが、相手選手に重大な怪我を負わせかねないプレイでもあったので、レッドカード退場は致し方ないものだった。そしてここから、構図が変わった。

FSを83番MISTRALの櫻井には決められるも、残り2分間の1QのMISTRALのプレッシャーには代わりに入ったDF8番寺岡(慶應義塾女子/2年)も対応した慶應義塾しかし2Qでも8分間続くマンダウンという不安材料を残した形だった。しかしライブで呟いたがMISTRALも残り1分FSも合わせてショットを打ちにいかなかった選択肢が後半影響をもたらす危惧もあった。 1Q 1対1 

【2Q】 MISTRAL 対 慶應義塾大学 4対2

1Qからのマンダウン8分を残した慶應守備が5枚となり、さらに若いDFに代わったフォローも意識しながら守るMF33番、88番への負担が多くなる。守備で動けるMFもう1枚のヘルプは非常に大きい。その負担を軽減するには慶應が攻撃権をいかに多くとれるかがポイントだった。

そして2Q最初のドロー。慶應88番川久保がこの試合初めてドローをクリーンキャッチする理想のパターン。そしてポゼッションからFSを獲得した。ここで慶應の選択はFSを回して時間を稼ぐことだった。しかし、シューターが71番平井選手であった事。又マンダウン残りが6分以上あった事を考えれば、ショットを決める選択をしても良かったのではないかと考える。結果的に慶應はボールキープを選択するが、勝負どころと見たMISTRALがオールコートのプレスを仕掛け慶應守備陣の混乱を誘い、プレスからの相手バックパスを数的優位のMISTRAL23番井畑選手がカット、ゴーリーとの1on1を制して確実にショットを決めた。勝負所と見て数的優位を生かした攻撃的守備を見せた:MISTRALの戦術が功を奏した格好だった。

しかしドローは慶應が取る。そしてゴーリーまで下げてボールをキープ。しかしMISTRALがオールコートで仕掛ける。耐える慶應は上下に動く量の増えたMFへの負担が大きくなる。それでも前方に展開する機会を得ると今度はショットまで持ち込むがセーブされる。マンダウンでセットディフェンスを崩せない。1Qで上手い距離感を持った慶應の攻撃に対してMISTRALは距離を詰め慶應に余裕を持たせない形をとる。慶應33番山本のショットが惜しくもポストに弾かれる不運はあった物の、マンダウン8分を1失点で乗り切ったのは慶應にとっては収穫だったと言える。ただ、結果的にはこの8分間のハードワークが後半の攻撃に影響をもたらすことになった。

慶應のショットの跳ね返りをスクープしたMISTRAL95番岩田からのクリア第2セットのアタックはボール回しからFSを得るが77番原のFSはポストに嫌われる。続きボールも奪い返して攻撃も5番井田のミドルショットは枠外。ゴーリー2番栗山の好チェイスで慶應がターンオーバーそれを速攻に結び付け3番秋山MISTRALの守備を引き付けゴール横フリーの22番西股(慶應義塾女子)へパスを通す。しかしここに立ちはだかったのがMISTRALゴーリー1番大沢(慶應義塾)直ぐに間合いを詰め自由にショットを打たさずセーブしきった。数がイーブンに戻ってからの攻撃、次のターンで慶應がFS/マンアップを取ると、2回のFSもマンアップからか展開を選択。センターフリーになった71番のターンショットは枠外。センター71番フリーは取れる。そこから生まれたチャンスに33番山本が得たFSを展開せずに、打ち抜いて重いゴールの扉をこじ開けたのが2Q残り1分。慶應義塾がよく耐えたクオーターとなった。 2Q 1対1 合計 4対2

MISTRALは2セットのアタックを使い分ける形で臨んだが、第2セットのAT陣で点が取れなかった事は後半への課題として残った。そして、マンダウン10分間を戦った慶應義塾MF33番、88番の消耗度と、守備の要の穴を埋め切れるかに注目した。

【3Q】 MISTRAL 対 慶應義塾大学 2対2

MISTRALが優位に見えるも、2Q最後の慶應の得点で流れが変わる可能性も出てきた中、次の1点がどちらに入るか注目された中始まった3Q。3回目のドローをMISTRALが取ると慶應もプレスを強める。ゾーンの外広めの展開からゾーンに迫り又広がりを繰り返す事3度、又パスで展開すると見せて83番が一気にダイブ8番と60番の間を鋭く抜けるとセンターからショットを打ち抜いた。日本代表を務める櫻井選手の見事な判断とパフォーマンスだった。一方の慶應義塾にとっては、パスの展開を読んだゾーンの動きで相手を封じて来た事による守備陣の思い込みという点が隙を作ったという見方もできるが、その僅かな隙を突いたMISTRAL83番櫻井選手のパフォーマ数を褒めるべきだろう。

後半最初の得点がMISTRALに入り一気に畳み込むかと思われたが、攻撃機会を長くとり試合をコントロールする方へ向いたMISTRAL。機を見て仕掛け無理をしない中センター23番の高さを生かす形でアプローチをするも慶應ゴーリーも前に出て攻撃機会をつぶす。しかし又もや勝利の女神はMISTRALに微笑む。23番と競り合った慶應ゴーリーがグランドボールをスクープするとクロスから飛び出したボールがそのままネットを揺らすことになってしまった。6対2 MISTRALとの得点差が4点差となると慶應義塾は攻撃に重点を置き激しくMISTRALに迫る事が必要となった。

MISTRAL5番が次のドローをコントロールするも、慶應義塾が前から仕掛けMISTRALのミスを誘うとDF8番寺岡の上りでクリア。全員が動きを高める慶應、3番、17番の1on1の仕掛けはショットまで行けなかったが、相手の守備を崩した所ダウンボールをスクープした3番秋山からセンターへ飛び込んだ74番秋山へパス。それをフリーで難なく決めて6対3と流れを戻しにかかる。更にMISTRALの選手交代ミスでボールを得た慶應は引き気味に構えるMISTRALに対してチームの特徴の速い球回しから数的優位を作り出そうとする。そしてつられたMISTRALの守備陣が反則を犯したリスタートを早くし、守備が整わないところ71番がドッジランダイブを決めて6対4と盛り返す。流れが慶應に傾きかけたのは3Q残り3分余りだった。

次のドローも慶應が取りポゼッション。早い展開から33番のショットは枠外。更に88番からセンターに入った33番へパスが通りターンショット。これも枠外。次のターン1on1をダブルで凌いだMISTRALがターンオーバーするまで5分間以上の慶應義塾の攻撃だった。ターンオーバーをFSに結び付けたMISTRALだがショットまで行けず1Qに続き残り1分の攻撃を生かせなかった。 3Q 2対2  合計 6対4 慶應義塾が4Qの反撃に大いに期待を抱かせるクオーターとなった。

【4Q】 MISTRAL 対 慶應義塾大学 3対1

3Qで流れを取り戻しかけた慶應だが、3Q残り3分のチャンスに得点をできなかった事が後に影響がないか?一方のMISTRALも3Q最後のFSのチャンスをものにできなかった事が凶と出ないか注目の4Qが始まった。

先ずはMISTRALのボールキープから始まったクオーター。キープを続けると思われた中90番木村がこの日初めての1on1を仕掛け見事なドッジでDFを交わすとセンターから豪快に打ち抜いた。7対4。次のドローもMISTRALが取ると明らかに運動量が落ちた慶應義塾、グラウンドボールの球際もMISTRALに抑えられ攻撃の機会を奪えなくなる。逆に余裕の出たMISTRALは、ポゼッションからの球回しで数的優位を作り81番亀井のショット。慶應も最後の力を振り絞ってのアタックも74番のショットはゴーリー正面。しかし懸命にボールを奪い返す74番。しかし脚に不安を抱える中ではこれが限界か?攻めきれずターンオーバーを許すとMISTRAL4番のショットはゴールバーに当たる。ターンオーバー、気力も絞って慶應が攻め続ける。71番のインサイドブレイクはクロスバーこぼれ球再び71番のショットは決まるもその前の88番へのファールで88番のFS 。展開もショットが枠外。続く33番のショットもセーブからポストを叩き、4Qまでほぼフルに動いた33,71,74,88番の思いも虚しく時が過ぎる。ターンオーバーMISTRALがマンアップとなるとゲームをコントロール。慶應最後の攻撃もアタックに力が残っていなかった。最後はMISTRAL23番井畑の2得点でダメを押した。 4Q 4対0  

合計 10対4 でMISTRALの優勝

☆MISTRALが9年ぶり4回目の優勝

個人賞

MVP  MISTRAL   井畑 美咲選手(学習院/7年目) 最古参の一人が3点(own goalにも絡んだ)を取って受賞

VP     慶應義塾大学   山本 真奈美選手(同志社/4年) U-19日本代表にもなった選手が60分攻守にフル出場し素晴らしい得点も上げた。

 

ZEBRA賞(年間最優秀審判員)  植木 夢審判員(関東地区1級)

こぶ平’s View

結果だけを見るとMISTRALの大勝だが・・・・

この試合のスタッツ

この試合のスタッツだけを見ると、どちらのチームが勝ったかわからない。普通に慶應義塾が従来のようなショットの決定率を見せていたら慶應義塾の勝利だった可能性もある。では何がこの結果をもたらしたのか、こぶ平なりに考察してみた。

  1. 1Q最後の慶應義塾大学に起こったアクシデント
  2. MISTRALアタックのショットの決定力
  3. MISTRALゴーリーの存在感
  4. 個の力の凌駕
  1. のアクシデントとは
    1Qの13分に起こった慶應義塾大学のDFの退場。
    この試合その後のマッチアップでもデンジャラスチェックになるケースは多かったが、この時はMISTRAL83番櫻井選手の切り替えに遅れを取ったDFがあわてて取った守備行動が首に及び危険なプレイで退場。試合への復帰が叶わなかった。このアクシデントは2つの大きな影響をもたらした。「33番山本と88番川久保が10分間のマンダウンディフェンスにより後半残るべき体力を使わされた事」「DFの要の選手が復帰できなくなり経験の少ない(念のために言い添えるが力はある)でカバーせざるを得なくなり、更に守備の負担が増えた。」この10分間のマンダウンによるMFとDFへの高負荷が4Qの得点差を生み出したと言える。4Qでの慶應義塾の反転力は大幅に下がっていた。そして試合を通して88番川久保選手が仕掛ける1on1はなく、33番山本選手のショットも抑えが効かなくなっていたように見えた。
  2. MISTRALのアタックのショットの力は驚異的だった。ショットの決定率が83%、枠内に入れたショットをすべて決めている。日本代表のゴーリーを相手にしてである。確かに見事にゴーリーの届きにくい所に打ち分けられ、タイミング的にも瞬間の捉え方が素晴らしかった。
  3. MISTRALゴーリーの存在感については、前半慶應義塾のショットの枠内へ打たれた率が57%と慶應義塾平均からすると15%以上も低い数字になっている、そしてMISTRALゴーリーが枠内4本中の3本をセーブしている。否定はされるかもしれないが、従前の試合以上に慶應義塾のショットがコースを狙う物になっていたと思われる。ここが勢いで決められていたらもう少し状況は変わったかも知れない。
  4. 個の力については、やはり差はあったが、それは技術力ではなく突破に要する体力的な部分であったし、それゆえにMISTRALの1on1は止めきれなかった(又それが故に反則を犯してしまった)。しかし、セットディフェンスを間に合わせないブレイクラクロスでは戦えた部分はある。これからの学生ラクロスの戦術検討では考慮されるべきであろう。

結果的に1Q残り2分からの10分間の慶應義塾のマンダウンが試合を決定づけたと言えるのだが、それを見越して慶應義塾の力を削ぐべく、時にはオールコートで慶應義塾からのターンオーバーを果たし、ゴール前でのポゼッションに時間を掛けてMF,DFの体力を消耗させたMISTRALの大人の戦術が手堅く勝利を物にした。というのが実像だと考える。勿論慶應義塾がマンダウンにならなかったとしたら又別の戦術で勝ちに行けたはずである。今年のMISTRALはそういうチームだったという事だ。

しかし、ショット数12本で10点を取って(オウンゴールが1点あるが)優勝したチームがあっただろうか?私の記憶にはない。今年のMISTRALは史上稀に見る戦略的なチームだったと言える。ショット数は少なかったがポゼッションは6対4以上になっていたはずだ。かといってただ、ポゼッションでボールを回すだけに終始していたわけではない。実に解説が難しいチームだった。恐らく先制し自分たちのペースに慶應義塾を巻き込む事が戦術のメインであり、それをチーム全員で共有されていたのだと思う。

☆もし10分間の慶應義塾のマンダウンが無かったら、異なる戦術のラクロスが見られたのではないかと思っている。

それでも慶應義塾に勝機は無かったか?2つのポイントを挙げておきたい。

① マンダウンになってFSを決められた直後、守備に追われたが、2Q早々ドローを取って攻撃の機会が訪れた。FSを得た71番平井選手はマンダウンの為ショットを選ばずボールを展開する道を選んだ。勿論マンダウン時の対応としてベンチからの指示もそうだったのだろう。しかし、マンダウンが通常の2分だったら正しかった選択もその時点でまだ8分程度のマンダウンを残していた場合にベストの選択だったか非常にレアなケースではあるが今後の実戦の戦術として検討をする価値はあると思う。

私は当日現場で

と呟いていたが、真意は

・MISTRAL相手に後8分ボールをキープし続けるのは難しい

・慶應義塾ではTopクラスのショットマイスターの平井選手なら、センターから決める確率は80%ある。

・得点後もドローは優勢だから、次も攻撃権を得られる可能性は70%以上ある

という所にあった。

ここで追い上げればチームの精神的にもプラスになる。難しい決断だがそういう状況だったと言える。

3Q後半6対4に追い上げてからなおも。チャンスが続き同点、逆転の目まで見えてきた中、ショットを決め切る事が出来なかった。ここでは相手ゴーリーへの意識は無かったと思が、原因で指摘した疲れにより抑えが効かなくなっていたのかも知れない。だとすればここはフレッシュな選手がショットを狙いに行って一気に差を詰める事が出来ていればと思わせるものがあった。しかしその辺は来年以降の進化に委ねられたという形になった。

もし3Qで慶應義塾が逆転をしていたとしても、体力的には限界が来ていたチームで勝ち切るのは難しかったかもしれない。しかし、この試合は点差のような大差の勝利ではなく慶應義塾大学の20人が力を出し切ったぎりぎりの戦いであり、そこで得た結果は来年のチームに必ず反映される尊いものだったと考えている。やはり私は慶應義塾大学2022チームが歴代の大学チームと比して最強クラスのチームだったと考えている。夢としては2019年の立教大学と2021年日本体育大学そして2022年慶應義塾大学のリーグ戦を見てみたい。

最後にMISTRALについて

個人的には定点的に2009年から見続けているクラブチームの1つがMISTRALだ。先にも述べた通り2013年までは攻撃的ラクロスで10年以上リーグ戦の得点王を生み出してきたチームだ。しかし2015年以降はリーグ戦ではいつもTop3に入りながらもTopとの戦いでは思った通り得点を挙げられなくなってきていた。勿論女子ラクロスの質的変化が大きく関与しているがそれでも望むような結果が出ず悔しい思いを重ねてこられたと思う。しかしここ数年の確実なリクルーティングによる人材の確保と育成。HCの採用による戦術の浸透。そして何よりライバルチームの存在がMISTRALを強くして来た。全日本クラブ選手権決勝の表彰式での田中キャプテンの言葉が印象的だ「何より私たちを奮い立たせてくれたNeOの皆さんありがとうございます。」。そしてこの試合で新しいMISTRALとして女王の座にたどり着いた。MISTRALさん優勝おめでとうございます。

来年からは、挑戦を受ける形になるMISTRALは、来年どういう進化を見せるのか。若い選手も多いだけにその進化

トリビア

  1. 2009年のMISTRALのHPにこう書いてある

**創部は今から14年前・・・(注;1995年創部)

東京女子体育短大を卒業後、WISTERIAでPlayしていた、奈良さん・篠塚さんは同じ年齢の人々が卒業するのを待ちに待ち、当時から仲の良かった、学習院卒業の武内さん、学生の頃から自主的に練習会をしていた人々を中心に着々とチーム結成に向けて動いておりました。とりあえず協会で旗揚げをしようと、興味がある人は集合!!と、適当に声をかけて、35名くらい集まりました。初めて会う人が半分以上でしたが、皆、チーム結成にわくわくしていたのは同じでしたので、軌道にのるのに苦労はなかったそうです。

そして、新宿で飲み会をしながらチーム名をそれぞれで上げてその中から多数決で決まったのが、”MISTRAL”だったわけです!!

この名前をあげたのは、明星大学出身の方です。知っていると思いますが、これはフランス語で”台風”と言う意味があり、クラブチームリーグの台風の目になりたい!とつけたものです!!そしてユニフォームは、当時のUSA代表のユニフォームを真似て、当時ではめずらしいポロシャツでないユニフォームになった次第です。このユニフォームで、強く勧誘した人もおりました!!

********

全日本選手権の会場には初代MISTRALレディも多数来られていたと聞く。女王復活。

慶應義塾大学33番山本真菜美選手と平井友香子選手は同志社小学校1年生以来の友人でラクロスも高校時代から始めた。2年生の3月(新3年生)には全日本中学高校ラクロス選手権で優勝をしている。そんなお二人。山本選手小学校時代はバレエ(踊る方です)を中学校時代はバレーボールをやられていて、平井選手は小中学校で水球をされていて日本一も経験されていたそうだ。又小学校時代には陸上クラブで一緒に活躍もされていた。私は山本選手の事をいつも‘‘しなやかなにブレイクする‘‘と表現するが、それは山本選手の姿勢の良さに起因している。そしてその姿勢の良さはバレエで鍛えられてきたからに他ならないそれに陸上クラブでの経験も体に刻み込まれていたようだ。実はラクロスの選手の姿勢は良くないと感じているのだが、山本選手に学んでみるのも良いかもしれない。そして平井選手のブレイク時の瞬発力は紛れもなく水球で鍛えられた体幹の強さとバランス、筋力に陸上クラブでの走りの基礎がベースになっている。

ラクロス以前に体験した事。なんでも役に立たないものはない。

次回は全日本選手権 男子編

やっぱりラクロスは最高!

こぶ平

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