ラクロスその先に

【ラクロスのその先に】生殺与奪の権を他人に握らせるな

こんにちは、ジョニーです。冒頭から物騒なこのセリフ。
この言葉が今日お伝えしたい内容です。

鬼滅の刃の序盤に出てくる有名なこのセリフ。鬼滅は2話くらいで断念した私でも、このセリフは印象的で、頭の片隅に残っていました。

状況を説明すると、無力だった頃の炭治郎が、戦わずに助けを乞うことに対して、相手から言われたのがこのセリフ。細かいことは調べてくだされ。

頭の片隅に残っている程度だったこの言葉。
実はこれ、かなり深い言葉で、現代を生きる我々にも問いかけてくる言葉なのです。

生殺与奪権」について調べてみると、

相手殺したり、あるいは生かしたり、どのようにしてもよい思いのまま処することができるという権利のこと。生かすも殺すも思いのままにできる権利生殺与奪の権利。(webioより)

こんな言葉、現代日本に生きていたら、ほぼ関係ないですよね。
ただ、考えてみてください。

このプロジェクトにアサインされたら、、、〜〜しよう
この試験に受かったら、、、〜〜しよう
〇〇が〜〜動いてくれたら、、、〜〜しよう

こんな風に考えたことはないですか。
私はあります。

大体うまく言っていない時に使ってしまう、if〜の構文。
〇〇したら、〜〜しよう

他人任せになり、自分自身で考えることを放棄してしまっているこの言葉。
そんなことを言っているうちは、だいたい夢で終わってしまう

ちょうど1年前にそんな風に口にしたところ、ガツンっと言われたのです。

「生殺与奪の権を他人に握らせるな!!」

これには目が覚めました。

会社では、仕事も順調で、プロジェクトチームに仲間も増え、やりがいも十分感じていた当時の状況。
かたや週末は、森の中で原っぱ大学(千葉)の活動。どちらもやりがいがあり、必要とされ、忙しくなりすぎてしまう。そんな状況でした。
どちらかにアクセルを踏むか踏まないか。躊躇している状況で、言われたのがこの言葉。

生殺与奪の権」を問われ、改めて認識したのは、自分で決断するのを避けていたという点。周りに必要とされていると、ついつい自分の承認欲求が満足してそこに居てしまう。よくあることです。

1つ目にお伝えしたいことは、まずそこに気づきましょうということですが、
なぜそうやって決断が先送りにされているのか、次の章で話したいと思います。

人間の脳は、エネルギーのかかる決断をしたがらない

人が知らず知らずのうちに決断を他人任せや先送りにしてしまうという点は、私自身の決断力云々の話だけではなく、人間の脳の仕組みも関係しています。

1日平均35,000件もの決断をしている現代人※1。
朝、布団から出るのかどうか、朝ごはんに何を食べるか、着る服はどうするかetc. 思っている以上に決めることは多く、決断にはエネルギーを使っています。

そのため、人は余計にエネルギーを使う決断をしたがらないという性質があるようです。

狩猟採集時代の影響を受けている脳

脳は、今いる心地よいコンフォートゾーン(快適な状況)から出ることを好まない性質があります。

狩猟採集民時代、平均寿命が26歳だったと言われる人類。常に危険と隣り合わせな状況で、この快適な状態から安易に飛び出してしまうと、どこに危険が潜んでいるかわからない。

そうした狩猟採集の生活を600万年もの間送った人類は、直近の1万年で農耕・牧畜の生活に変わりましたが、600万年の影響は強く、現代社会でもデフォルト「狩猟採集」時代のまま判断を進めています。

そこで、狩猟採集民の脳の特徴を簡単にまとめてみます

①脳は「現状維持」を求めたがる

狩猟採集時代、違う環境に出ていくことは、危険を伴うため、慣れた状況からの変化は好まないのが脳の癖。

脳の扁桃体と呼ばれる部分は、違うことをすると「不安」というアラートが鳴るよう、体に働きかけ、そのアラートを受けるとコルチゾールが分泌され、心拍が早くなります。しかも、扁桃体は「火災報知器の原則」で、鳴らないより鳴りすぎるくらいの方がいい思っている働き者。やばい気配を感じたら、即アラートが鳴るシステムになっているそうです※3。

つまり、脳に備わったゴールは、必然的に「現状維持」が心地よい状態となり、少しでも違うことが起こると、「現状と違うぞ」と体が反応するようになっているそうな。

新しいことを始める際に感じる不安は、脳が生き抜くための癖だと理解しておくと、不安を感じたときに「脳の癖か」と対処しやすくなります。

このブログを書いている私も、頭の片隅でちょっとドキドキしています。否定されたらどうしよう、つまらないと思われたらどうしよう、と。この不安も、「まだ脳がこのブログを書くことに慣れていないんだな」と考えると、少し楽になるものです。

新しいチームにアサインされたときや、ラクロスでいうとBチームからAチームに上がった時など、脳は環境の変化に「前の環境のほうが安全だ、ここから逃げろ」とアラートを出します。こうした時に、脳のアラートがちゃんと働いてくれるがために、実力を発揮できないのはもったいない。脳の仕組みを知っておくと、そのアラートに支配されずに、自分の実力を出せるようになるかもしれません。

②脳は決断の消費エネルギーを最小限に押さえる

食べ物が現代のように必ず確保できるわけでなかった狩猟採集時代、消費するエネルギーの無駄遣いは命取りになります。決断も動くこと同様にエネルギーを消費するため、難しい決断は避ける脳の仕組みになっています。

「WILLPOWER 意志力の科学」で、心理学者のロイ・バウマイスターは「意志の力というものは、物語のコンセプトのようなものではなく、自動車のガソリンのようなものだ」と述べており、「ガソリン」の無駄遣いを押さえるとともに、有限な資源であることを理解して、用途を絞るべきだと語っています※4。

毎日同じ服を着ることで、洋服の決断にエネルギーを割かないというというApple創業者のスティーブ・ジョブズの話は有名ですね。また、頭を使うカーリングのハーフタイムにモグモグタイムがあるのも理にかなっているのです。

どう行動したら決断しやすくなるのか

ここからは、決断をどうしたらいいのか、炭治郎はどうしたら無理なく生殺与奪の権を他人に譲らなくなるのか、その考え方を2つご紹介します。

何がネックになっているのかを探る

決断ができない理由として、どこがネックかわからないということが多々あります。前出の私が決断できないのもここでした。決断したほうがいいのはわかるけれど、いろいろな要素が絡み合っていて、どこから決めていいのかわからない。先延ばし先延ばしにして、、、今日に至る。よくあるのではないでしょうか。

そこで、カネヴィン・フレームワーク※5というものをご紹介します。
カネヴィン(Cynefin)は生息地という意味のウェールズ語で、状況・課題を大きく4象限に分類し、どこに問題があるのかを明確にして解決に導く手法で、1999年にIBM Global Servicesのデイブ・スノーデンらが提唱したものです。

決断できない問題や課題は、大きく5つに分類することができます。

  1. シンプル:問題の因果関係・構造が明確で、単に決断できていない状況
  2. 煩雑:少し分析すれば、因果関係・構造が明確
  3. 複雑:因果関係・構造が複雑で調査が必要
  4. カオス:因果関係が不明確で、問題を理解することが難しい
  5. 無秩序:解決策がない

このどこに現在いるのかをまず探り、それぞれ1つずつ順位の階層にしてことで、問題解決が図れるのです。

生殺与奪権を相手に譲ってしまった炭治郎は、自分の実力をつけることと、禰津子の状況を多くの人に聞くことや、鬼との関係性を知ることで、よりシンプルな構造にしていきました。

アドバイスをいただくことの多いリクルート出身の中尾隆一郎さんは、『因数分解をして最小化し、「扱える荷物の大きさにする」』と本にも書かれています※6。

問題の大きさと性質を知り、自分の扱える大きさに因数分解をしていくことで、何を決断したらいいかが分かりやすくなるのです。

シンプルにした後は、習慣化する

さらに、シンプルにした後は、習慣化をし、脳を使わなくても「することが当たり前」にしてしまうのが、継続につながるポイントです。

例えば、トレーニングでジムに行くことも、事前に予定を入れてしまう。英語の勉強も予定を最初に入れてしまう。朝起きたら薬を飲む等、脳に「どうするか」を都度考えさせるのではなく、脳のエネルギーを使わずに「そうするものだ」と習慣化してしまうのです。

さらに、脳は6回やるとそれが当たり前だと思うので、習慣にしてまずは6回やってみる。私もこのブログをまずは6回書く。ここを最初のゴール設定しようと思います。

 

いちばん伝えたいことは、『最高の選択しかしない』を捨てること

今回、この「決断」について書くために、「決断」の仕組みや方法について色々調べ、自分の経験も棚卸していましたが、決断する際にいちばん大事なことは、「『最高の選択しかしない』を捨てる」ことだと実感しました。

「この決断で失敗できない」となると、人は力が入り、判断力も鈍りますし、動きも鈍ります。多少失敗してもいいから、前進させることが善であると考えられると、力まず余裕を持った状況で判断できますし、その決断で先に進めた分経験値も高まり、リカバリーの時間もできてくるのです。

と、こんな大それたことを書きながら、自分自身も今、決めなきゃいけないことを先送りをしていたり、どこから手をつけていいかわからないと、もがきながら日々生きております。

自分自身に「前進させることに価値があるんだ」と信じて、このブログをまずは6回書くことからスタートします。


引用

※1 Barbara J Sahakian (Professor, Cambridge University)

※2,3 『スマホ脳 』アンデシュ・ハンセン

※4 『WILL POWER 意思力の科学 』ロイ・バウマイスター , ジョン・ティアニー 

※5 A Leader’s Framework for Decision Making, Harvard Business Review by Mary E. Booneand  David J. Snowden

※6『「数字で考える」は武器になる』中尾隆一郎)

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