【中高ラクロス】第13回全国中学校高等学校女子ラクロス選手権大会 決勝戦レポート|東京成徳大学中学高等学校 対 横浜市立東高等学校
試合から日にちが経ってしまいましたが、第13回全国中学校高等学校女子ラクロス選手権大会 戦(年に1度の中高女子ラクロスの全国大会)の詳細をお伝えしていきます。
(記事内高校名は略称)
第13回全国中学校高等学校女子ラクロス選手権大会は東日本から東京成徳大中高、横浜市立東高、日大中高、目白研心中高、桐蔭学園高、そして西日本から同志社高、立命館宇治高、関大中高が参加し、3年ぶりに開催された(2020年は1回戦1試合だけが行われた幻の大会でした)全3日程で開催されたこの中高女子ラクロスの全国大会は初日からハイレベルな戦いが見ることができた。1日目・2日間の結果、迎えた3日目の決勝戦は 東京成徳大中高(東日本1位)vs横浜市立東高(東日本2位) という関東Teen’s ラクロスにおいてはもはや伝統戦、良きライバルにしてお互いが越えることを目指す宿敵の対決となった。
決勝戦 東京成徳大学中学高等学校(BRAVE YOUTH) 10 対 6 横浜市立東高等学校(East Girls)
【優勝】東京成徳大学中学高等学校
【準優勝】横浜市立東高等学校
この投稿をInstagramで見る
この投稿をInstagramで見る
昨年の関東Teen’sラクロス秋季大会の決勝戦では 10対2 と一蹴された横浜市立東高だが、その育成力には定評もあり春までにどのような進化を遂げているのか注目の集まる中、一方の東京成徳大中高は秋の関東大会を圧倒的強さで勝ち抜いたチームであり、そのぶつかり合いは両校の進化の度合いを確認できる試合となった。
この試合の結果のポイントは、お互いの手の内を知り尽くした両チームの間にあって、「チームとしてのラクロスの熟成度と集中力の差」にであったのではと考えられる。ここ数年の対戦成績でリードする東京成徳大中高側にも、秋に主力だった選手2名の長期留学での不在があり、挑戦する形の横浜東高にも主力の足のケガでチームとしてのベストのパフォーマンスが出せないハンディキャップを抱えていたが、チーム力に対する影響を考えると東京成徳大中高の方が影響度が高かったはずである。しかし結果は上記の通りとなった。
ラクロスの白熱した試合といえば、「バガタウェイ」という 古日向いろは氏が提供した漫画があるが、この決勝戦ではその漫画のシーンを超えるような面白い試合展開もあり、一瞬たりとも目が離せないものとなり中高ラクロス史上の「語り草」となるだろ試合になったと言える。
<決勝スターティングメンバー>
東京成徳大中高【G】#73【DF】#83, #23, #50【MF/AT】4, #5(ドロー),#13, #3, #7, #62
横浜東高【G】#2【DF】#10, #51, #37【MF/AT】#4,#82(ドロー), #12, #29, #0, #71
決勝戦ゲームレポート
1Q
試合開始のドローは東京成徳大中高5番 と 横浜東高82番 。最初のドローは横浜東82番が自取りしてから速攻でつないで71番の仕掛けでフリーシュートを得ると、71番アンダーで11mからのフリーシュートを豪快に決めて先制。しかし、その直後のドローから東京成徳もポゼッションを築くと、7番が仕掛け、ファール誘い、こちらもフリーシュートを決めきった。しかしその後の7分間は東京成徳がミスのない個々の強さとミスのない展開ドローの優位と勝てる要素を満たしたプレーでゲームをコントロールし、仕掛けてのフリーショットでの3番の得点に5番のドローブレイクで 3対1と1Qを終えた。横浜東のゴーリーの好セーブも多く見られたが、展開力のある東京成徳のラクロスが1Qの得点にも反映されているように、試合を動かしていた。
2Q
劇画にも書けない劇的な展開となったのがこの2Qだった。 まず、横浜東のエース71番のドライブで1点を返してから、横浜東が勢いを取り戻すと展開が変わり、今度は東京成徳ゴール間際の混戦で東京成徳のゴーリーがデンジャラスプレーと見なされる不運でワンマンダウン。東京成徳のゴーリーが変わり、横浜東は無人のゴールへのフリーシュートで3対3と同点とすると更に勢いが増す横浜東の攻撃に対し必死にディフェンスを仕掛ける東京成徳に又災厄が降りかかる。懸命のディフェンスが更に2枚のイエローカードをもたらす事となり1分近い3マンダウン状態(東京成徳が7名、東が10名フィールドにいた状態)に追い込まれる。しかし、替わって出場した東京成徳ゴーリーのファインセーブや3名の守備が前掛かりの横浜東高の攻撃にしっかりと対応。DF1名が戻り2マンダウンになった直後、ボールを奪った東京成徳がカウンター攻撃。見事に5番が得点をあげた。しかし、2マンアップの優位さを生かしたい横浜東も攻撃を実らせ再び同点とするも、その後は逆に横浜東にもイエローカードが提示された。この怒涛の5分間は、コミックであれば何十ページにわたって描かれるシーンの連続だった。しかし、まだシーンは続く。4対4のまま2Q残り10秒横浜東ポゼッションから左サイド4番へボールが渡り角度なしからゴーリーの股下を抜くショットを決め4対5となり、横浜東リードで劇的な第2Qを終えた。この第2Qの東京成徳の想定外の状況に対する選手の冷静な対応力というものが結果的に試合を分ける事となった。
3Q
試合の実況でも語ったが、
全中高女子ラクロス決勝の前半3マンダウンを守りきり2マンダウンで得点した東京成徳は凄い。でもなんとか終了間際に逆転した横浜東 まだわからないが、一度気合いが入り直された東京成徳の反撃に注目フラグ🚩を立てたい❗ #koblivet
— ラクプラ現場【ラクロスメディア LACROSSE PLUS -ラクプラ-】 (@laxplusnews) March 27, 2022
ハーフタイムの間に更に集中力を高めた東京成徳のラクロスは、強さ、速さ、正確さを増し、加えてドローも支配した。東京成徳は3Q開始早々ドローからのパワープレーで得たフリーシュートを7番が決め、そしてマンダウン中にも相手の攻撃の芽を摘み、再び7番が速攻を決め 6対5 と遂に逆転。そして7番の3得点目のフリーシュート。3Q最後は東京成徳5番のドロー連取からのポゼッション、残り30秒 62番がクリース際を鋭く抜けてランシューを決めた。結果的に東京成徳が3Qに息を吹き返し、8対5 とリードを奪った。
4Q
最終Q、何とか立て直しを図りたい横浜東は最初のドローをとり攻撃の機会を作ると、東京成徳のゾーンの空きを狙うが、うまくつながらず。東京成徳DFもしっかり対応し、各チームターンオーバーが続く一進一退の攻防が続いた。4Q 4分 横浜東の82番がこぼれ球をスクープし前方の29番へ繋ぐ。難しいパスだったがこれを好捕した29番がそのままランシューでブレイクし 8対6 とする。ここからは勢いにのった横浜東の攻撃が続くが成徳の中盤〜ゴール前での守備も堅く、横浜東71番-82番のラインが決まってのショットも東京成徳のゴーリーの好セーブにより阻まれる。そして前掛りになる横浜東に対して冷静に対応する東京成徳は残り2分ターンオーバーから速攻を決め、最後はポゼッションキープから一転ゴール裏から捲り62番へ合わせて、そのままショットを決め切り10対6。そしてここで試合は終了した。
結果 10対6で東京成徳が優勝を決めた。
こぶ平’s VIEW
この決勝戦でのポイントは下記の3点にまとめられると考える。
①2Qの3マンダウンという想定外の状況にも対応できた、東京成徳大中高チームのラクロスの完成度
②ドローの重要性
③いかなる状況でも対応できる状況判断力
特に②③に選手個人の力が加わった結果、①の完成度の高さに繋がったといえるだろう。決勝でみれた東京成徳大学中高ラクロスは中高ラクロスのレベルを引き上げる強いチームであることは確かである。一方の横浜東高も個々の力では東京成徳にも負けない、むしろ部分的には勝っているものが見られた。この決勝で結果を分けたのは完成度の高さだったのだが、ここで皆さんに注目して欲しいポイントは、横浜市立東高校の選手は皆、高校に入って2年間しかラクロスを経験していないのにこのレベルに達しているという事である。東京成徳大中高は中学からラクロス部に参加ができるのでラクロス歴が3年以上の選手が高校に既に存在している。
大学のラクロスチームで横浜市立東のようにラクロス経験2年間未満(1年生もいる)の強豪チームが勝てるチームがいくつあるだろう?中高ラクロスのポテンシャルにも又大きな期待が持てることを思い知らされた試合となった。
レポート:こぶ平
写真:梅田朗江