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【こぶ平レポート】関西学生「男子」ラクロス決勝戦のドラマ|全国大会への道・特別編

第13回全日本大学選手権は新しい勝ち上がり形式で実施される大会となる。それは前回優勝地区の関東地区2位チームがワイルドカードで出場し全7地区から代表が集まる形式となった形だ。そして既に地区代表が決定していた北海道地区代表と東海地区代表が戦う1回戦の試合も11月6日に実施された。一方で、全国で全日本選手権大会への進出が決まる中、関西地区の代表決定戦と関東地区の優勝決定戦が行われたので先にその模様をお伝えしておこう。全国の大学のターゲットとなる2地区の代表について興味深いはずだ。

初の全国制覇を目指す男子はギリギリの戦いの後にドラマが待っていた。

関西地区の男子は連続出場だけではなく、昨年の全日本大学戦の雪辱を期す事を至上のテーマとして掲げ、リーグ戦を全勝で戦い抜いた関西学院大学に対し、4年ぶり8回目の全国大会を出場ばかりでなく前回2018年決勝で大敗を喫した雪辱を果たしたい京都大学との間で火の出るような戦いが繰り広げられた。女子は2010年の大会以来12回連続で代表を分け合い6大会連続同じ組み合わせの決勝となった、同志社大学vs関西学院大学の戦いで、全国制覇を成し遂げていない同志社大学が忘れ物を取りに行く気持ちと、4年ぶりの全国制覇を目指すべく進化を続けてきた関西学院大学の気持ちがぶつかり合い攻撃の応酬となった。

久々に現場で見た関西ラクロスの模様を詳しくお伝えしたい。試合の詳報前に、試合前の両校コーチ陣に伺った中で印象的だった事を述べておこう。

関西地区男子ラクロス決勝戦

関西学院大学

昨年の全国大会では、練磨の慶應義塾大学に先手を取られ最後まで上手く力を発揮できないまま敗れた思いがあるので、今年は最初から得点の取れるチームに強化してきた。しかし京都大学は3戦戦って全部勝てる相手ではない。最初から強い気持ちで勝ち切る事を目標にしている。

京都大学(伝統的に大学院生がコーチを務め、近年の慶應義塾大学と同様なチーム)

学生主体で考え、何を強みとするという事を定めず、個々の力を上げ最善の状況を作り出して突破する。そういう形で臨む。

という事だった。

客観的に見ると、リーグ戦においては9 対 5と関西学院大学が京都大学を破っていたが、京都大学の強みである守備陣から2名がU-21世界選手権代表に選ばれておりチームに最終合流したのは8月末の事(ゴーリーもU-21日本代表のリザーブで最終合宿まで本格合流はできていなかった)。リーグ戦は9月4日に行われた事を考えるとその差がもっと少ないと考えられた。

試合の詳細に入ろう。

ゲームレポート

2018年リーグ戦1部に復帰し悪夢の5年間から抜け出した京都大学はその屈辱を晴らすかのように、昇格即優勝を決めるも5年間のブランクは大きく、関東地区代表の早稲田大学との間に水を開けられたが、以降関西学院、大阪、立命館、神戸といった大学と切磋琢磨をして力を磨いてきた。関西学院も2014年優勝後、京都が復活して後、2019年2021年と連覇をし、新王者として関西に君臨することを明確にするためにも負けられない戦いが始まった。

★1Q

開始のフェイスオフ(以降FO)を奪い合いで制した京都が、ポゼッションから正面13番のスタンディングショットで得点を挙げると、2分後には裏から捲った51番がバックで流し込んで2点目を追加し京都への流れを作るも、次のターン関西学院は速い展開からゴールサイドフリーを取った8番へ素早い展開で点を返す。開始5分で3点を取り合う形になった。その後は関西学院がポゼッションから8本、京都が3本のショットを打ったが枠外も多くそのまま 関西学院大学(以下関学と略す)vs京都大学(以下京大と略す)  1対2 で終了した。 スタッツ はショット数 9対5 FO獲得数 1対3 だった。

★2Q

開始早々関学がFOブレイク狙うも枠外。その後のポゼッションからの攻撃も京大DFに刈り取られると4番ゴーリーのハーフウェイライン近くまでの積極的な上りでクリアすると、サイド5番からセンターライン付近より一気に上がった44番がゴール前フリーとなるのに合わせてダイレクトショットを決める。関学DFの一瞬の救を突いた鮮やかな得点を決める。その後は京大4番ゴーリーのセーブからハーフラインを超える上りによりポゼッションを取った京大。速い展開から、中、外とポイントを作るもショットは外れ、関学も京大の52,99を中心にしたDFを崩せず単発のショットを見舞うのみの展開が続く中、京大の14番がポゼッションからターン&カットインで簡単に関学DFを振り切りゴーリーとの1対1を制して得点を加えたのが8分過ぎ。2分後には再び14番が速い展開から13番のパスを受けるとショットを振り抜き豪快に決めて1対5 京都大学がリードを広げた。その後も強いDFが関学の攻撃を抑え込むと残り50秒。自陣ゴール前でボールを奪ったLDF52番がそのまま70mを独走。関学DFをあざ笑うかのようにショットを豪快に振りぬくとゴール右下隅に突き刺さった。(流石U21代表選手と思わせたゴールだった。) 2Q 0対4 合計 1対6 京大リードとなった。 スタッツは ショット数 3対7  FO獲得数 4対1 京都大学が強いDFをベースにゲームを支配した。

★3Q

関学のクロスイリーガルから始まったクウォーター。マンダウンの関学がグラボを取りその後は関学が京大のディフェンスをどう崩すかが最大の焦点となったが、京大の守備もオールコートのプレスに変わり関学に攻撃の機会を渡さない構えだった。京大のポゼッションが続く中、関学ゴーリーのパスカットからクリアを果たすも京大の守備に刈り取られる。それでもマンダウンを凌いだ関学は厳しい時間を無失点で凌ぎ後の猛反撃に繋げる事になる。一方の京大は得点差による心理的影響か、攻撃に集中力がなくなったように見えた(ショットはいずれも枠外)。その分守備に対する負担が高まった。京都大学もタイムアウトで確認を取るが関学が仕掛ける積極的なチェックに攻撃陣が封じ込まれ関学の支配が強まる。必然的に守備が下がり気味になり関学のプレッシャーを受け続ける形になっていった。3Q残り5分は完全に関学が支配し終了後京大のMFが膝まずきしばし動けない姿が劣勢を象徴的するものだった。 3Q 0対0 合計 6対1 京大リードのまま。 スタッツは ショット数 7対3 京大のショットは3本とも枠外だった。

★4Q

3Qの攻勢を受けて、関学の動きが活性化される。5点のビハインドから積極的に集中力を高めた関学はポゼッションから右サイド裏15度から8番がゴール前センター4番へピンポイントのパス。それをダイレクトで流し込む絶妙の得点で反抗を開始したのが開始1分。得点差を考え時間を掛ける京大に対し厳しいチェックで刈り取る関学。3Q後半の流れが加速する。京大の守備陣の動きに遅れも出だしたのか関学がショットを打てる機会が増えて迎えた7分過ぎ中盤で奪ったボールをつないだ関学がゴール前右に流れながらの31番のショットはゴーリーに阻まれるもこぼれ球を繋ぎ、左角度なしからずばり決めたのは1番。これで関学の動きがさらに活性化された。残り8分関学の執拗な攻撃、守備が続き京大は守勢一方となった。残り5分半で京大が後半2回目のタイムアウトを行使し体制を立て直すかに見えたが、フリーの絶好のショットを外すとボールキープにミスが出て関学のターンオーバーを許す。1度途切れた集中力を戻すのがいかに難しいかを改めて思い知らされた。しかしそんな中自陣ゴール前から、関学ゴーリーの前へ出るのを見たLMF98番が70mの超ロングシュートを放ちゴールへと吸い込まれた。起死回生のショットと思われた次の瞬間、慎重なスティックチェックの結果ボールが落ちずクロスイリーガルの判定で得点が無効となったのが残り3分40秒。3対6のリードながらマンダウンとなった京大に勢いづいた関学が襲い掛かる。マンダウンで生じたDFの隙を突き18番がミドルショットを豪快に決めたのが残り3分20秒。マンダウンの続く京大が中を固める中外からアンダーショットを4番が決めたのは残り2分43秒わずか1分の間の2点奪取で一気に5対6と追い込み関学の逆転が現実味を帯びた中、もう一つのドラマが待っていた。

がっくり膝を落とす京大DF陣、FOを取った関学はショットを畳みかけるがポストに弾かれたボールが京大に渡り関学陣へ持ち込まれたのが残り50秒。万事休すかと思われたがボールを関学守備陣が奪い返すとフィードしたのが残り35秒。繋がれたボールはDFの穴に飛び込んだ関学8番に届きそのまま至近からのターンショットが京大ゴールに突き刺さったのが残り25秒同点。このまま逆転か?エキストラピリオドで関学が優位になると思われたのだが、、、、、京大が、当然だが、さらにマンダウンになるかもしれない、クロスチェックの申請に賭ける。

すると無情にもボールはクロスから落ちず、この得点は無効。残り25秒で5対6のまま京大ボールから関学もDF5人で試合再開となった。その後は京大13番のボールキープから関学ゴーリーを外して7人でのプレスに来る所空いたゴールにロングショットを投じて5対7と点差を広げて万事休す。関学のクロスチェック申請も今回はリーガルですべての幕が下りた。最終4Q 4対1 トータル 5対7 というドラマは2つのイリーガルクロスが演出した劇画よりエキサイティングなエンディングだった。 スタッツは ショット数 15対3 FO 4対1 と4Qは関学が支配した。

最終結果は 関西学院大学 5 対 7 京都大学

試合のトータルスタッツは以下の通り

こぶ平‘s View

☆京都の勝因はどこにあったのか

2つの要因があると考えた。

  1. 9月4日のリーグ戦当日には間に合っていなかったであろう、守備の統一性が決勝の期間までに高まった事まず第一。攻撃陣の前半の集中力が(ショット12本で6得点、枠内ショット9/12)効果大だった。
    関西学院大学のショット決定率の低さは、関東の準決勝明治大学vs早稲田大学戦を想起させる。U-21日本代表52番立松選手、99番馬場選手を中心にした京都大学の守備は又、U-21世界選手権代表を中心にした明治大学の守備陣と印象が重なる。この守備の強さが、全国でどこまで通用するのか。京都大学の全国制覇はこのポイントに掛っていると見ている。
  2. 関西学院大学の4Qで見せた集中力と攻撃力は魅力的なものだった。全国大会で例えば守備の圧力が高い関東相手に披露して欲しいものだったが、スタッツにもある通りショットの決定力がこの試合では想定よりも低かったのだろう。3Q後半から4Qで見せたオールコートでのプレスを60分通して発揮できる力と、ショットの決定率が向上すれば全国制覇に近づくと考えたがいかがだろう。

そしてMVPにはスタッツにもある通り10のセーブを見せた背番号4番 堀江 晃平選手。彼も又U-21世界選手権日本代表チームのメンバーだった。

 

全国大会|全日本大学選手権

京都大学は11月12日(土)に 地元 宝ヶ池球戯場にて北海道地区代表の北海道大学を迎え撃つ。対戦する北海道大学は昨年の大会で全国大会初勝利を挙げ全国ベスト4に進出した近年進化が著しいチームだ。その戦いぶりに注目したい。

ラクロス全日本大学選手権の模様はラクロス協会Webにおいても紹介されている通りLive Streamingが無料で視聴可能だ。しかし、近くの人は是非会場で試合を見て欲しい。試合の迫力緊張感そして選手の皆さんへの生の応援は何よりもパワーになる。

11月6日(土) 京都市左京区 宝ヶ池公園球技場 観客席は6000人だ。アクセスは 地下鉄烏丸線「北山」又は「松ヶ崎」駅下車 。京都バス「宝ヶ池球技場前」下車

今回はここまで。関西決勝女子編は次回。

やっぱりラクロスは最高!

こぶ平

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