English Lacrosse Association – 2016 National Lacrosse Convention
皆さんは2010年男子ラクロスワールドカップで日本が4位、イングランドが5位となったことを覚えていますか?これは日本男子ラクロスの歴史上最高の結果でした (*1) 。その当時からEnglish Lacrosse Associationは体制や取り組みを大きく刷新しています。今後こうした各国協会の取り組みについても紹介していきたいと思います。
(*1) ラクロスワールドカップは4年に一度開催。女子は1993年第四回大会に初参加、最高位は2005年の5位(参加10チーム)。男子は1994年第七回大会に初参加、最高位は2010年4位(参加29チーム)。次回は女子2017年、男子2018年でともにイングランドにて開催。
今回は2016年9月18日に行われたELA年次総会に出席してきたのでそのリポートをお送りします。ELAの長期的ビジョンである「ラクロスをイギリスでメジャーなチームスポーツの一つにする」を実現するために熱意をもって取り組んでいるのが伝わるイベントでした。
ELAが今回のイベントを開催するのは今年が初めてとなりますが、今後毎年開催をしていく予定とのことです。内容は総花的で、プレーヤー及びコーチ向けのスキル指導セッション、クラブチーム運営に対するアドバイスセッション、ラクロスでの雇用などのELA戦略紹介セッションなど、多岐にわたりました。
ELAスタッフ10名程度(フルタイム15名程度のうち)に対して出席者は40名程度、うちプレーヤーが20名ほど、コーチや大会運営者などが20名ほどでした。
基調講演 Jane Powell(*2)
「English Lacrosseに必要なキーワードはChange、Team、Growth Mindsetの三つ。特にEnglish Lacrosseが真に強くなるためにはChangeが重要だ。私が3年前にELAに参加して驚いたのはラクロスのカルチャーだ。あくまでもクラブラクロスの域を出ず、生活の中の選択肢の一つに過ぎないプレーヤーが多い。フィールドホッケーはそれに人生をかけているプレーヤーが多い。PRIDEという言葉を紹介したい。Personal Responsibility In Delivering Excellence、即ち態度で示すということだ。 次にGrowth Mindsetだ”Look Smart”のようなうわべではなく、”Learn”学び続ける姿勢が重要だ。今日この場に参加してくれている人たちは既にこの三つのキーワードを体現している。English Lacrosseが前進するために是非心に刻んでほしい。」
(*2) Jane Powellは2013年からNational Talent Development ManagerとしてELAに参加。選手としてクリケットとフィールドホッケーでイングランド代表を経験。2005年から2013年まで女子フィールドホッケー英国代表ヘッドコーチを勤める。なお、女子フィールドホッケーは2016年リオオリンピックで金メダル獲得。
クラブチームマネジメント Joe Burnett, Gabbi Simmonds
クラブチームを如何に効率的に運営するかということについての講演でした。スタートアップのクラブチーム運営に役立つSports Englandのウェブページ紹介とソーシャルメディアの活用について説明されました。日本で開催された1996年U19男子ワールドカップでオフィシャルを勤めたRobartさんが受講していました。
ラクロスでの雇用 Paul Coups, National Education & Skills Manager
イングランドで開催される2017年と2018年のワールドカップを成功させるために必要なボランティアの獲得をどう実現するかという戦略についての講演でした。特にターゲットになるのがBritish Universities and Colleges Sport (BUCS) 所属のラクロス卒業生です。年間4,000名以上のラクロス卒業生を輩出しており、ロンドンへの移住率も35%と高いことから、卒業生のラクロスへの継続的なインクルージョンをどう実現するかがポイントとのこと。そのために在学中から、オフィシャルなりボランティアに参加してもらうインセンティブを持ってもらえるシステム構築やイベント開催が必要だとの認識でした。また、フルタイムスタッフ雇用のために昨年は11校にロードショーを実施したそうです。
クロージング Paul Coups, National Education & Skills Manager
印象に残ったのは「メディア戦略」と「スポンサー(*3)獲得」です。ELAの競技人口拡大のターゲットはスポーツを最もする世代である14歳から25歳ですが、その世代にアプローチするためにメディアの充実は不可欠とのことでした。
(*3) ELAはコーポレートパートナーシップとしてRathobones Investment Group、Under Armour (2014)、STX、Manchester City Councilと提携。年間の便益は150千ポンド程度。2017年には女子ワールドカップ、2018年には男子ワールドカップが開催されるが2017年女子ワールドカップのタイトルスポンサーにはRathobones Investment Groupが内定。
その他突撃インタビュー
Paul Coups, National Education & Skills Manager
(プロラクロスリーグの設立は考えたことがあるか)
「English Lacrosseのビジョンを考えたときにプロラクロスリーグというのは将来的にはありうる。その前にナショナルチーム同士のエキシビジョンマッチなどを増やして、メディアによる拡散やラクロスプレーヤーのインクルージョンを図るのが大事だと考えている。」
Tom Wenham, England Mens National Squad Head Coach
(プロラクロスリーグの設立は考えたことがあるか)
「考えたことはない。プロラクロスリーグは難しいと思う。」
(数年前と比べてイングランド男子ラクロスの実力は向上しているか)
「徐々に向上している。BUCSの参加校が増えたことによってプレーヤー数は増加しているが、代表レベルプレーヤーは引き続き北部イングランドの幼少期からのラクロス経験者」
まとめ
別途「English Lacrosse Associationの戦略」で取組については詳細を説明しますが、2013年以降で体制を刷新し前進し続けているELAの姿を目の当たりにすることができました。大学生を中心に競技人口の伸びているイングランドの今後の活動から目が離せません。