【デュアルキャリアラクロス】杜の都の星空ラクロス|星 奉博 #3
♩きたかぜぇ~ こぞう~の かんたろー ((かんたろー!
失礼しました。毎日給食時間に聞いているものですから,つい口ずさんでしまいました。学校のお昼の放送で放送委員が「今月の歌」として流しているので・・・。
毎日寒いですね。暦の上では春ですが、東北地区の本格的な春はまだまだ先になりそうです。
さて,今回は「学校現場でラクロスの授業をしてみたい人向け」のお話です。今年度,私が体育の授業でどのようにラクロスを扱ったのかを,準備の段階からつらつらと書かせていただきます。授業でラクロスをやってみたいなあと思う方は、ぜひ参考にしてみてください。
今回もどうぞよろしくお願いします。
<ポイント>
①学習指導要領と年間カリキュラムを確認しよう!
②道具を確保しよう!
③ゴールを描こう!
④授業をしてみよう!
⑤次につなげよう!
⑥最後に
① 学習指導要領と年間カリキュラムを確認しよう!
前回のコラムでも少しお話しましたが、まずはラクロスというスポーツは授業で扱っていいものなのか、学校のカリキュラムに沿っているのかを確かめましょう。
平成29年告示の小学校学習指導要領によると、体育科の目標は
心と体を一体としてとらえ,適切な運動の経験と健康・安全についての理解を通して,生涯にわたって運動に親しむ資質や能力の基礎を育てるとともに健康の保持増進と体力の向上を図り,楽しく明るい生活を営む態度を育てる。
とあります。つまり簡単に言うと、
「体育の授業を通して生涯スポーツを見つけましょう。」
ということです。
であれば、我々大人が、未来ある子どもたちに、ラクロスに限らず様々なスポーツを見せたり、体験させたりする必要がありますね。日本ではマイナーであるけれど、世界的にはメジャーなスポーツもたくさんありますし、世界に目を向けさせることで国際理解にも繋がります。
次に、勤務校の学習カリキュラムの確認です。
どこの学校でもそうだと思いますが、前年度にその次の年の年間指導計画を教科主任を中心に立てていると思います。
そのカリキュラムに「ボール遊び」または「ゴール型」の領域が示されていると思うのですが、当初予定していた競技からラクロスに置き換えても差し支えがないのかを、管理職と相談しましょう。
② 道具を確保しよう!
さて、管理職の許可を得たらいよいよ授業の準備です。まずは道具を準備しましょう。
必要なものはこちら。
- クロス(1クラス分 約40本)
- ボール(1クラス分 約40〜50球)
- ゴール(2〜4台)
たったこれだけです。
クロスは1本3〜5000円、ボールは1球380円、ゴールはものによりますが1台3000円程度なので、15万円程度あれば大丈夫ですね!
・・・え?無理ですか??
まあ授業に私財を投じるのは、ちょっと気が引けますよね・・・笑
では、どうやって確保するのか・・・。
簡単です。人の力を借りちゃいましょう!
私は、ラクロス協会東北支部の方から授業をするたびにお借りしています。毎回快く道具を貸してくださるので、本当に助かっています。
授業をする際は、お近くのラクロス協会に相談してみましょう!
③ ゴールを描こう!
教壇に立つ上で、何が大事かというと、その時間、子どもたちにどんな力を身に付けさせたいかを明確にすることです。
たった7時間の中で身に付く「ラクロスの技術」は限られています。ですから、授業でラクロスを指導するにあたり、教師が子どもに身に付けささたい能力、伸ばしたい力は何なのかを見誤ると、意味のない時間になってしまうので要注意です。
私は、「スポーツの特性を理解する力」と「課題解決力の育成」としました。
④ 授業をしてみよう!
いよいよ授業をしてみましょう。全7時間で組み立てます。
第1時:オリエンテーション(ラクロスの紹介、道具の説明、学習の進め方を知る、ボール遊び)
第2時:ボール遊び(1人キャッチ、1人GB)、シュート
第3時:ボール遊び、シュート、パスキャッチ、box 1on1 GB
第4〜5時:シュート、パスキャッチ、box 1on1 GB、2on1
第6時:シュート、パスキャッチ、3on3、ゲーム
第7時:パスキャッチ、ゲーム
<第1時>
今回の単元で意識したことは、「スポーツの特性を理解する力」と「課題解決力」を伸ばすことです。つまり、「ラクロスの技術」を伸ばすことを第1の目的とはしませんでした(もちろんある程度は身に付けさせますが二の次です)。
ラクロスの技術は、皆さん御存知の通り、非常に難しいです。たった7時間で「スローパス→キャッチ→シュート」の流れが完成することを望んではいけません。ここに一生懸命になってしまうと、授業が崩壊します。(笑)
でも、それじゃあゲームができないじゃないか。そう思われますよね。大丈夫です。何事も刷り込みです。初めが肝心なのです。
児童には以下のことをオリエンテーションで話します。
①点を取ったら勝てるよ。
②GBはパスなんだよ。ただし、相手へパスしないでね。
この2点です。大したことないかもしれませんが、授業で行うためには必要な声がけです。
①は、これから行う全ての練習の目的が「点を取るため」に行われるものと意識付けされます。
②は、5秒に1回は発生してしまうGBはミスではなく、必ず起きるパスであり、早く拾わないと相手へのパスに変わってしまうと認識させることで、本気ですぐに拾うようになります。
このように初めに理解させることで、大人がイメージしているラクロスのゲーム運びと、児童が理解するゲーム運びが全く異なるので、教師が児童に身に付けさせたい力を意識させながら授業ができるようになります。
<第2〜3時>
オリエンテーションが終わったら、ラクロスに必要な基本的スキルを体験させましょう。
◯シュートをすること
◯クロスでボールをキャッチすること
◯クロスでボールを運ぶこと
◯ボールを拾うこと
これらの技術は、シンプルに成功すると嬉しいです。やり方さえ教えてしまえば、あとは休み時間に勝手に遊びだします。児童によっては、教えていないことにもどんどん挑戦し、
「見て!見て!ほら!」
と楽しみながら成長します。ですから授業では、これらを活かす場面を具体的にイメージさせるだけでよいのです。
<第4〜7時>
この時間では、対人練習やゲームを行います。人数が増えてもルールは変えず以下の通りにします。
◯シュートはパスが1回以上成立したら打てる。
◯シュートは目の前に敵がいなくなったら打てる。
◯OFもDFも相手に触れることはできない。
◯7秒以上ボールを保持し続けてはいけない。
以上です。このルールのもと2on1や3on3、ゲームを行います。
ここで大事にしたいのは「ラクロスというスポーツの特性を理解すること」と「課題を自分たちで解決すること」です。
授業で扱うラクロスの特性として
- ボールを運ぶ際の歩数制限はない(7秒ルールあり)
- ゴールの裏まで使える
- GBはミスではなくパス
- 接触プレーはなし
以上の点が挙げられます。
オンボールマンの動きやオフボールマンの動きは、体育科のボール運動で身に付けさせたい資質・能力です。子どもたちは、これらの特性をうまく活用してゴールにつなげます。
例えば、体育で行われるサッカーですと、1つのボールに対して全員で追いかけて、お団子状態になりがちです。パスも狙ったところに蹴っている児童なんて見たことありません。来たボールをとりあえず蹴る・・・といった場面を安易にイメージしやすいと思います(それはそれで指導不足なのですが笑)。
しかし、ラクロスになると、非接触でボールを7秒までキープできるので、「意図的に」仲間へパスを投げたり、転がしたりできますし、しっかりとパスを要求することができます。
だからこそ、自分たちがイメージしていたパスができなかったり、シュートが打てなかったりすると、
「なぜ上手くいかないんだろう」
と考えるようになります。
普段上手に友達とパスキャッチをしている児童が、ゲームになると投げられないし、キャッチもできない状況が起きます。そこで、こんな声がけをしてみます。
「パス出しにくくない?」
「出しにくいです。」
「どうしてかな。」
「んー。わかりません。」
「普段のパスキャッチはとっても上手だよね。じゃあさ、先生にパスしてみて(目の前に立つ)。」
「近すぎます!」
「ごめんごめん。じゃあ先生はどこにいてほしい??」
「・・・あ!」
ラクロスの特性を理解して効率よく動き、「できない」を「できる」にするためにはどうすればよいのか。
ラクロスを通じて、存分に考えさせたいですね。
⑤ 次につなげよう!
改めて、ラクロスの立ち位置を確認してみましょう。
ラクロスはサッカーやバスケットボールと同じ「ゴール型」のスポーツです。異なるのは、ボールを操作するためにクロスという道具を使うくらいです。
相手をかわす動きやスペースに走り込む動き、相手の嫌がる位置で守る等、様々なスポーツに共通する点が多々存在します。
ですから、ラクロスを授業で行って、「はい、終わり。」ではなく、ラクロスの授業で学んだ動きや、課題解決力を、他のスポーツや単元に繋げて生かして行く必要があります。
さらに、自分の知らないスポーツが、世の中にはたくさん存在しているんだということを実感させ、ラクロス以外のスポーツにも関心を持ってもらいましょう。
一教員として、子どもたちの生涯スポーツを見つけるサポートをしていけたら最高ですね。
⑥ 最後に
授業でのラクロスは、ラクロススクールとは違い、5〜7時間で完結させなければならないので、スクールとは全く異なる視点で指導する必要があります。
でも、授業だからこそできるラクロスの形がありますし、楽しさがあります。
ラクロスを通じて、多くの子ども達に体を動かす楽しさや、新しい世界を感じてもらいたいですね。
この記事を読んでくださった方が、将来授業でラクロスに挑戦し、それが1校、2校と増えていけば、もしかしたら近い将来、教科書にラクロスが載るかもしれませんね。
最後までお付き合いありがとうございました。何かありましたら遠慮なく聞いてくださいね。
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