2022年ラクロス全日本クラブ選手権男子決勝 FALCONS勝利

【こぶ平レポート】2022年ラクロス全日本クラブ選手権決勝 〜男子編〜

第23回(2022年)全日本クラブ選手権決勝は東日本地区代表が戦う事となった。そしてそのカードは昨年と同じ男子 FALCONS(東日本1位) vs Stealers(東日本2位)、女子はNeO(東日本1位) vs MISTRAL(東日本2位)の勝ち上がりとなった。男子はStealersの連覇かFALCONSが復活の狼煙を上げるのか? 女子はNeOの6連覇がかかり、男子で続いたFALCONS絶対王者同様のNeO絶対女王となるのか?はたまた、MISTRALの2013年以来8年ぶりの優勝を遂げるのか。注目のゲームが始まった。既にライブ・ストーリミングで観戦された方も多いはずだが、こぶ平の見た決勝についてお伝えしておこうと思う。まずは男子編からお届けする。

第23回全日本クラブ選手権 男子決勝

試合に対する集中力の差が明暗を分ける形となった

プロローグ

リーグ戦の終盤絶対に勝利の欲しいFALCONSと雨中の熱戦を繰り広げたStealers。その雨中の対決では、FALCONS 28番奥村選手の起死回生のダイブで5対5と引き分けたが、9月11日のGRIZZLIES戦で衝撃的な敗戦を被り、続くVIKINGS戦にも引き分け迎えたStealers戦を背水の陣で迎えたFALCONSを救ったのが新規移籍の28番奥村選手だった。しかし、チームとしてのパフォーマンスには優勝に向けて不安要素が多かった。最も大きかったのは得点力の減少だった。確かに多くの選手が新しいチームへ移籍したという事実はあったが、それでも9番立石選手を始め若手のタレンティブな選手は多かった。しかしそれが得点に結びつかなかった。リーグ戦Stealersとの激闘があったのが10月10日そこから2か月足らずの間でFALCONSが復活し得たのか?そしてStealersにとっても2連覇を果たすには避けては通れないFALCONSとの戦い。少し駒沢第一球技場を苦手と感じるStealersのFO12番田村選手のパフォーマンスに注目が集まる中試合が始まった。

ポイントは間違いなく、FALCONSが得点力を再装備したか? だった。

(以下FO;ファエイスオフ、LDF;ロングスティックディフェンス、LMF;ロングスティックミッドフィルダー、SSDM;ショートスティックディフェンシブミッドフィルダー、AT;アタックは略称表記、選手名敬称略)

FALCONS(東日本クラブ1位) vs Stealers(東日本クラブ2位) 11対7 

<スターター>

  • FALCONS G15徳舛(関西学院) LDF3番佐野(東北)、17番加藤(東京)、19番水田(日本体育)、LMF81番浅野(日本), FO24番岸(東京理科)、SSDM98番 佐藤(/早稲田)、AT9番立石(慶應義塾)、28番奥村(南山)、90番関根(慶応義塾)
  • Stealers G3番大島(東京)、LDF17番桑原(法政)、71番岡田(大阪)、88番前田(南山)、LMF19番吉田(神戸)、FO12番田村(法政)、SSDM23番細梅(千葉)、AT4番倉島(成蹊)、14番池川(成蹊)、24番石井(名城)

両チーム20年以上ラクロスに影響を与えてきた選手や、若手、さらに全国各地の大学の出身者が在籍する多様性を感じさせるチームであることが見てとれる。さらに今年夏に行われた第二のオリンピックと言われるワールドゲームズでの6人制ラクロス(SIXES)や来年行われる世界選手権代表候補が多数存在するハイスペックなチーム同士の戦いとなった。さらに長年に渡って熟成してきたStealersに対して、急激な入れ替わりを余儀なくされたFALCONSの2か月にわたる育成期間で成熟を遂げたのか。FALCONS攻撃の復活のカギになる要素だった。そんな思惑が交錯する中で試合が始まった

 

1Q: FALCONS 対 Stealers  4対1

最初のFO、不安のあったStealers12番田村選手強さを見せStealersがポゼッションから持ち味の速い展開からブレイクを狙う。AT交代で入った13番森松選手(早稲田/SIXES日本代表)カナダでボックスラクロス(Maple Ridge Burrards)の経験を積み今主流のラクロスの動きに精通している選手だ。その13番からゴール前24番石井選手へ早いパスが渡り直ぐにショットを打ち抜き幸先良いスタートを切ったStealers。所謂ボックスラクロスで磨かれた2on2のアタックが見事に決まった。そのあとのFOも取りStealersが波に乗れるかと思われたがFALCONSのDF陣が集中力を発揮する。3番佐野選手(SIXES日本代表&日本代表候補)がライドでボールを奪い98番佐藤選手(SIXES日本代表&日本代表候補)がクリアをすると、ポゼッションから相手の守備陣の一瞬の隙に32番小山選手(東北/新人)文字通りダイブを決め1対1の同点とする。この辺り一瞬の隙を見逃さないFALCONSのチーム全体に共有されている集中力を感じた場面だった。そしてFOをFALCONSが取るとポゼッションからゴール裏99番梅原選手(SIXES日本代表&日本代表候補)が裏から捲ると見せて体は前向きままバックへショットを放つ高度なショットで追加点を奪う。主将の高いスキルに一気に盛り上がるFALCONS。Stealersも負けじとグラボに詰めてマイボールにする。しかしここでミスが出る。13番森松選手へのバックパスが乱れFALCONS 4番畠山選手(帝京/最年長/元日本代表)のスクープからターンオーバー。その後ターンオーバーの応酬からStealersのやらずもがなのイリーガルプロシージャーでマンアップとなったFALCONS。ポゼッションから数的優位を利して90番関根選手(慶應義塾/元日本代表)が難なく決める。Stealersは、FOは取るもののミスでターンオーバーを繰り返し攻撃に繋げることができない展開となった。残り3分となってFALCONSの攻撃に対してStealersはボトムから2-3-1のゾーンディフェンスに変えてきた。しかしFALCONSはゾーンの隙?裏からの28番奥村選手の捲りにゴールを割られる。この後Stealers9番佐々木選手(中央)がFOを連取するもFALCONSはSSDM97番徳増選手(日本体育大/日本代表候補・新人)等の動きも良く動き隙を見せないディフェンスでショットコースを限定しStealersのブレイクを許さないという図式のまま終了した。リーグ戦で苦労をした得点を取る事が出来た事。ゲームへの自信を取り戻したクォータとなった。一方のStealersは簡単なミスを相手に決められる展開となりミスのなかったFALCONSとの差ができた要因となった。 4対1 FALCONSリード

2Q:FALCONS 対 Stealers 1 対 0|トータル 5 対 1

2QFOを優位に進めながら攻撃に結びつけられなかったStealers。開始早々のドローはグラボを処理した12番田村選手からポゼッションを取る。しかしFALCONS 98番SSDM佐藤選手(大/SIXES日本代表&日本代表候補)のチェックに刈り取られショットに行けずにターンを終える。ターンオーバーからゆっくりしたポゼッションを取るFALCONS一転ゴール裏28番奥村選手から、ゴール前センター5mに飛び込んだ9番立石選手(SIXES日本代表&日本代表候補)へクイックパス。立石選手そのままダイレクトで返すとボールはゴールに吸い込まれた。その後はStealersにミスが出てFALCONSの攻撃はゆっくりしたものとなりそのままクォータを終了する。 トータル 5対1

1Qの時点で現場では以下のように呟いていた。

3Q:FALCONS 対 Stealers 4 対 2|トータル 9 対 3

完全な集中力でミスも抑え、起こったミスも確実にリカバリーするFALCONSがリードして始まった3Q。StealersがFOを取るとポゼッションから裏で2on2の場面ゴール横へ開いた13番森松選手へ4番倉島選手からパスが通されフリーでショットを決める。ここも正に2on2を制した攻撃は見事だった。ここから追い上げを期待されたがFOをFALCONS 98番佐藤選手がスクープすると、FALCONSミスなくポゼッションをキープして1on1を仕掛けた99番梅原選手ショットフェイクからピンポイントインサイドの90番関根選手へ縦ショートフィード。関根選手キャッチ&リリースの如き流れるようなショット動作でこれを決め切る。実によく作られたショットだった(これも2on2の攻撃のパターンなのだろう) 。その後はFALCONSがFOも取る機会が増えゴール裏から93番家石選手(明治大学)-1番大庭選手(日本体育) が決め、FALCONS着々と点差を広げる。止めとばかりに代わったFO8番阿曽選手(慶應義塾/新人)がFOブレイクを決める。完全にペースを握った。ここまでStealersの守備陣がFALCONSに対してプレッシャーを与えられず、FALCONSが楽にプレーしているようにも見えた。その後もリスタートゴール裏から右サイド9番立石選手へ通し、流石のアンダーショットで流し込む。この時点で9対2とリードを最大の7点に広げたのが3Q 9分過ぎ。Stealersこの辺でDF強度を漸く高めプレスを強めて来る。FALCONSは得点差もありゆっくりとした攻撃に変わる。StealersのゴーリーセーブからFALCONSのDFセットされる前にサイド トゥ サイド。右サイドの13番森松選手から、ゴール裏より逆サイドへ回り込んだ14番池川選手(元日本代表)へ通してフリーを決める。Stealersの鮮やかな連動も単発的で攻撃権を奪いきれないままこのクォータを終了した。  3Q 終了 9対3

実はもう一つ現場で呟いていたことがあった。

ミスが多くなり、攻撃時間が少なくなる。Stealers劣勢の1番要因だった。

4Q:FALCONS 対 Stealers  2対4|トータル 11 対 7

Stealers。3Qの最後に見せたハードプレスを更に強めオールコートでツーマンのみならずハイリスク覚悟でスリーマンによるライドを仕掛けると、激しい打ち合いとなり互いに作り合う攻撃機会も、FALCONSが時間を使うのに対してStealersが高い位置からボールを奪いに行く。高いプレッシャーから攻撃の機会も増え速いテンポで試合が進むがStealersも前へ掛る所FALCONSが要所を突く。取りつ取られつで残り3分余り10対7までStealersが追い上げるもFO後に痛いパスミスを犯し、FALCONS 17番LDF加藤選手の70mドライブで流れを止めた。後は10マンでボールを奪いに来るStealersのプレスをかいくぐり5番石黒選手(明治)の得点がクロスチェックで無効にはなったが、ゴーリー15番徳舛選手(SIXES日本代表&日本代表候補)のファインセーブからLDF3番佐野選手のクリアで万事休す。4QStealersの猛攻も届かずFALCONSが2年ぶりに王座を奪還した。

この試合MVP等の公式な決定はなかったがこぶ平的優秀選手は:

★最優秀選手 FALCONS 99番 梅原寛樹選手(日本体育大学)

若い選手とベテラン選手との融合という難題を短期間でクリアし、決勝戦では自ら得点、アシストと文句なしの活躍だった。

★優秀選手 Stealers 13番 森松達選手(早稲田大学)

カナダボックスラクロス直伝の2on2からのブレイクでアシスト、得点に貢献した。

敢闘選手賞 FALCONS 8番 阿曽寛之選手(慶應義塾大学/新人)

岸選手もFO健闘したが交代後のFOでFOブレイクを決め完全に流れをFALCONSに持ってきた。

こぶ平’s View

  1. 3Qまでで試合を決した要因は何だったのか?

今回新たにスタッツに加えた項目。ミスを見ると気づくことがある。

①前半Stealersが犯したミスがFALCONSの得点機会となり流れを与えてしまった。

  • ターンオーバーミスとはターンオーバーに繋がったミスの事
  • その修正の為にハードなプレスを掛けて攻撃機会を増やす形にするのが遅すぎた

実際に4Qではハードなディフェンスを仕掛けて(ハーフコートでは3メンプレスすら掛けていた)優勢になった。

チーム戦略はあっただろうがゲームプランの変更は随時行われるべき柔軟性が必要だと思わされた試合となった。

★しかし最も大きな原因は、この試合に賭けてきた “FALCONSの集中力の凄み” と言える。ゲームの詳細でも述べていたが、Stealersに前半で生じたミスとFALCONSに生じなかったミスの差は、集中力の差だったと言える。実際現場近くで見聞きしたFALCONSの言動には迫るものがあり、それは固さを誘発するものではなく1つ1つのプレーに集中する為のものだった。

★ハーフタイム時にもFALCONSは集中を切らさず、更に何に集中すべきかを全員で共有できていた。従って交代で出たFOもすぐに結果を出せた。

FALCONSの日本一奪還に賭ける思いが伝わった試合だった。

②Stealersには何が起こったのか?
4Qで見せたハイプレスの攻撃的スタイルを前半から見せなかったのは、チームの戦略だったのだろう。日本の今のサッカーと同じで後半にギアを上げて勝ち切る事を想定したようだ。しかしそれには前半の攻守への集中力が必要だったと見ている。ミスが命取りとなった。やや苦手とするハードコートでのフェイスオフを優勢に進めただけに、その優位を攻撃に結びつけられなかったミスとFALCONSの守備が強かったと言える。
3Qまでで、1Qのショット数が3本以下では勝つ事は難しかったと言える。

取材後談

  • FALCONS 90番 関根幹祐選手にお聞きした。

関根選手は2009年に慶應義塾大学を卒業されている。ちょうど私がラクロスに傾倒した年だ。その年の日本選手権での活躍も記憶に新しいが、今のFALCONSについて率直にお聞きした。

Q.10月10日から2か月足らずで、チームが立ち直った主因は何ですか?

A.チームの主力の多くが変わり(これについてはいつかしっかり取材したい)新旧の融合ができていなかった。SIXES代表や日本代表練習にも選手が居なくなる中上手くまとまらないまま、シーズンに入ったが結果としてGRIZZLIES戦で露呈した。2か月の間その融合を図る努力を全員が行った。

梅原キャプテンを始め全員が「FALCONS」であることを取り戻すことに集中されたようだ。

 

結果的に33人の内13人が新人や移籍か2年目で占められ、さらに2012年以前に加入したメンバー6人という世代間ギャップを埋めて、コミュニケーション不全や考えの不一致に見られる単純ミスもない、成熟したチームとなり得点を取って盤石の勝ちを得る、正に「王者のラクロス」を復権させた。

 

FALCONS残る戦いは真のお王者を奪還する戦い。全日本選手権だ。

第32回ラクロス全日本選手権大会

開催日時:2022年12月8日 14時30分 フェイスオフ予定

場所:聖地 江戸川区陸上競技場

対戦相手:全日本選手権連覇を目指す慶應義塾大学

全日決勝の見どころ

  1. FALCONSと慶應義塾大学のハイブリットディフェンス対決
  2. フェイスオフ対決

ともに攻撃力も高い。久々に10点以上を取り合う面白い戦いが見られるかもしれない。

次回は全日本クラブ選手権決勝 熱き女子編をお送りする予定だ。

やっぱりラクロスは最高!

こぶ平

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