こぶ平コラム

関東学生ラクロス 男子のRoad to Final 新時代への動き?

前回関東学生ラクロスの女子1部の「Road to Final」について述べたのだが、今回は男子編。男子は2021年特別ルールの「泣き笑い」が鮮明となった。そして”明”の方は、「歴史が変わったという事。」歴史が変わったということで、まずは関東学生のFinal4の歴史を振り返っておこう。
(最初に一言。ラクロスを見てわずか10年の人間が歴史を語るのは、おこがましい事は承知しています。1980年代の先人のご苦労を無視するものではありませし、連綿と繋がる歴史の変化のベクトルが変わってきたのが、2009年からの現行の大学選手権方式の開始だと思っています。それから13年目。男子学生ラクロス界もそれまでと異なり”新しい地図”が書かれつつあると、肌で感じた為、技術論ではなく外から見た変化というものをお伝えしたいと考えて書かせていただきす。)

2009年に現行の形式のリーグ戦が始まり初代チャンピオンは一橋大学だった。これが第3エポックの始まりだったと今では思える。1988年の第1回関東リーグ戦の慶應義塾大学の優勝から始まり、第3回の東京大学、第5回の早稲田大学の優勝が最初のエポック到来なら、1998年から20004年の慶應義塾の7連覇が”王者”の時代。そして2007年の日本体育大学の優勝が2度目のエポック到来だった。そして2009年 一橋大学の優勝、これが本当のエポックと見ているのは学生数7000人前後の大学が、学生規模2万人以上の大学に(日本体育大学の場合は、運動系だけで6000人以上という事で2万人以上の大学規模と判断できる)に勝てるというモデルとなったと考えるからだ。
そして2010年からのFinal4
2010年   一橋、東京、東海、早稲田         決勝 東京vs早稲田     優勝 早稲田
2011年   早稲田、東京、日本体育、慶應義塾     決勝 早稲田vs東京     優勝 早稲田
2012年   慶應義塾、一橋、早稲田、東京       決勝 慶應義塾vs一橋    優勝 慶應義塾
2013年   早稲田、法政、明治、東京         決勝 早稲田vs明治     優勝 早稲田
2014年   早稲田、慶應義塾、東京、日本体育     決勝 早稲田vs慶應義塾   優勝 慶應義塾
2015年   東京、早稲田、慶應義塾、日本体育     決勝 慶應義塾vs日本体育  優勝 日本体育
2016年   早稲田、慶應義塾、日本体育、東京     決勝 慶應義塾vs東京    優勝 慶應義塾
2017年   早稲田、一橋、慶應義塾、中央       決勝 早稲田vs慶應義塾   優勝 慶應義塾
2018年   東京、早稲田、慶應義塾、成蹊       決勝 東京vs早稲田     優勝 早稲田
2019年   慶應義塾、中央、早稲田、東京       決勝 東京vs早稲田     優勝 早稲田
2020年   慶應義塾、中央、早稲田、明治       決勝 早稲田vs慶應義塾   優勝 慶應義塾

となっている。これを見ると早稲田大学はFinal4に連続出場を続けていて、慶應義塾、東京が11回中9回、以下は日本体育 4回 一橋、中央 3回 明治 2回 東海、法政、成蹊 が1回となっている。即ち 早稲田、慶應義塾、東京がリードし 早稲田、慶應が優勝を分け合い一橋、日本体育が対抗する構図だったといえる。しかし、2017年以降の中央の台頭、明治(過去10年で決勝に進出した6校の一つ)の進化が大きな歴史変化の胎動現象ではなっかたのだろうか?特に中央大学は2017年Final4に進出すると、以降4年間で3回のFinal4進出し、慶應義塾、早稲田に次ぐ位置を占めてきているという見方もできる。そして、この変化の胎動は細動から、広く伝搬を始め、武蔵大学、立教大学の台頭をも引き起こすことになったようだ。これらの変化の背景には、ラクロス協会も支援するコーチの交流があるように見えるのだが、その部分の解説は専門家にお任せしたい。

そして、このような動きの中、中央大学、立教大学、武蔵大学にフォーカスをあててみた。なぜなら、2021年の動きに大きく関わることになったからだ。
印象的な出来事
2010年 中央 2部ブロック 6位  立教 1部ブロック 5位  武蔵 3部ブロック 2位
2011年 中央 3部ブロック 1位  立教 2部ブロック 4位  武蔵 3部ブロック 2位
2012年 中央 2部ブロック 5位  立教 2部ブロック 1位  武蔵 3部ブロック 3位
2013年 中央 2部ブロック 1位  立教 1部ブロック 3位  武蔵 3部ブロック 1位
2014年 中央 1部ブロック 5位  立教 1部ブロック 5位  武蔵 2部ブロック 2位   武蔵入替戦で立教を破る
2015年 中央 1部ブロック 4位  立教 2部ブロック 4位  武蔵 1部ブロック 5位   武蔵明治を破るも入れ替え戦で青山学院に敗れる
2016年 中央 1部ブロック 5位  立教 2部ブロック 4位  武蔵 2部ブロック 1位   武蔵神奈川を破り再昇格
2017年 中央 1部ブロック 2位  立教 2部ブロック 1位  武蔵 1部ブロック 6位   中央日体大を破り初のファイナル4 5対9(早稲田)
2018年 中央 1部ブロック 3位  立教 1部ブロック 4位  武蔵 1部ブロック 5位   武蔵一橋を破る、立教早稲田に引き分け
2019年 中央 1部ブロック 1位  立教 1部ブロック 3位  武蔵 1部ブロック 6位   中央東京を破り初の1位。立教一橋を破る、武蔵中央を破る。
2020年 中央 1部Cブロック 1位  立教1部Cブロック 3位  武蔵 1部Cブロック 2位  中央が三つ巴を制した(武蔵得失点差では中央を上回る)

2014年から1部に定着をした中央大学も3011年までは3部であり、2013年ごろから進化が進みだしたように見える。立教大学は2013年の1部3位をピークに、その後はエレベーター校の一つだったが2017年から本格的な体制による強化が始まった事とLinkしているようだ。そして武蔵大学。2013年の3部から2部を駆け抜け1年で1部に昇格した頃から異能(良い意味で)のコーチのIDラクロスが進化の基礎となり、2017年から1部に定着をしたのだが、IDラクロスを支えるアナリストや、マネージャーを含めた体制が固まり、選手の自覚も形成された結果が、わずか4000人程度の規模の大学のサバイバルの理由なのだ。そして迎えた2021年この3校の動向が関東王者の行方を決めそうな雰囲気だった。

時代の変化を感じつつ、蓋を開けたシーズンは、昨年王者の慶應義塾が2021年強さを復活させた一橋に予選で辛勝する。対する早稲田は予選リーグで進化著しい、武蔵に惜敗。中央はブロック決勝で慶應に惜敗するも、得失点差でFinal4へ進出した。東大は明治学院に予選で敗退、ブロックからは明治大学が高い得点力を見せてFinal4へ進出した。立教と武蔵が同じ組になったAブロックでは明暗が分かれ、武蔵が早稲田を史上初めて破ったが、立教は思わぬ問題を抱え込み初戦で涙を呑む形になった事は残念なことだった。結果的に武蔵が初のFinal4へ進出し、2010年からの12年間では2018年の成蹊大学以来の初Final4進出となり、11校目のFinal4進出校となった。
Final4は
武蔵大学 vs 日本体育大学  そして   明治大学 vs 慶應義塾大学 となった。そして、Final4では武蔵大学と慶應義塾大学が勝利し史上初の武蔵大学 vs 慶應義塾大学 という伝統vs新進という図式にも見える戦いとなった。

この事実の何がエポックメイクだったのか?

第2のエポックは、8000人弱の規模の一橋大学が、数万人規模の大学に打ち勝った事といった。その後明治大学がFinalへ駒を進めた事、中央大学、立教大学が進化した新しい時代の胎動を、わずか4000人規模の大学がFinalistとなったという事実。これこそが規模の小さい各地の大学においても、全国レベルのチームを作れることを証明したという点で評価されるべきなのではないかと思う。もちろん、これから武蔵大学がロールモデルになるには、強くあり続けなければならない。これは大変なことだ。かつて、歴史になお刻んだ千葉大学や、Final4に進んだ法政、成蹊大学は2部である。今年、大きな波にあおられた早稲田大学、東京大学も必ずさらなる進化を遂げるだろう。そこに、ラクロスの進化があり、見る者の興味を引き付けるのである。

一方の早稲田大学、東京大学に関しては、結果的に得点力不足が最初の試合で露呈したという事なのだろう。今シーズン春の東京六大学戦、立教大学が慶應義塾、早稲田大学を破って優勝したのだが、その辺りから得点力については課題を抱えていたのかもしれない。東京大学も最終戦では6対1と学習院戦に勝利するのだが、ブロック1位の明治大学は学習院戦11点をたたき出している。
さて、残るは決勝戦  武蔵大学 vs 慶應義塾大学  の初のFinalでの戦い。リーグ戦では過去2回対戦があり、 6対17,3対9 といずれも慶應義塾大学が力の差を見せつけた形だが2018年の戦い以降、進化を見せる武蔵大学が如何に戦うか。それとも、やはり慶應義塾がコントロールしてしまうのか、刺激的な戦いになるはずだ。11月6日は’絶対に見届けたい戦い’となる。

ラクロス最高

こぶ平

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