こぶ平コラム

【こぶ平コラム】SIXIESラクロスの未来を応援しよう

6月25日10人制ラクロスの女子世界選手権(6月29日から 於;アメリカ合衆国メリーランド州トーソン)代表が旅たったが、もう一つの代表SIXIES日本代表の壮行試合が6月18日に東京オリンピック・パラリンピックのホッケー会場となった、大井ふ頭中央海浜個応援スポーツの森ホッケー競技場メインピッチ(旧大井第一球技場跡地)にて開催された。その試合を通して見えたSIXIESラクロスについて、男女代表選手やコーチ陣の言葉も交えながら、「こぶ平流」に語っていきたい。

SIXIESラクロスの未来を応援しよう

先ずは6月18日の壮行試合の結果の前に。SIXIESラクロスというものをおさらいしておこう。

  1. フィールドにはプレーヤーが6人しか立てない。
  2. 6人の内1人はゴーリーで、ゴーリーはセンターラインを越えられず5人のフィールダーが動き回り試合をする。
  3. フィールドは10人制と比べて約40%の広さしかない(基本縦70m x 36m)
  4.  30秒のショットクロック(味方ボールになってから30秒でショットを完結させなければならない)
  5. チェイスはない
  6. クロスは10人制と基本違いはない。(男子のロングスティックは無い)

というのが概要だ。

この中で、私が10人制ラクロスと異なると考える最もキーとなる要素は、6人になる事ではなく30秒のショットクロックが導入され、チェイスが無いというものだ。その辺りを日本代表チームがどのように考え、解釈をしているかを試合を通じて見極めたいと考えていた。

先ず、試合前に男子、女子の両チームのコーチ陣に話を聞いた。

男子競技

< 長谷川コーチ >

基本、ターンの切り替えは早まるものの、アタック、ディフェンスの各要素における要求は変わらない。ショットの力であり個々の力への要求が高まる。強いて言えばゴーリーのセーブ力はとても重要だろう。

< 長妻コーチ >

ショットの有効性にも(効果的なショットと言われた)拘りたい。安易にミドルショットを打って、相手に攻撃権を渡さず、しっかり30秒で仕留める効率が求められる。

女子競技

<永島ヘッドコーチ>

3S(シンプル、スペース、スピード)に拘る他、心拍数という言葉を聞いたのは新しかった(4S?)、他国の選手が心拍数を挙げ切ってしまう時も日本はまだ高い運動機能を持ち続けられるタフネスさを要求してきた。それが実りつつある。相手にフライの機会を与えない、攻撃ラクロスをするために常に8Qクォーター連続の練習をしてきた。

山田コーチ

10人制と異なるラクロスという事を徹底して、理解をしてもらった。そこから動きが変わることになる。

この男子と女子のコーチの話から、チーム作りの部分で違いを感じた。(良い悪いではない)

  1. 男子は基本10人制と同じと考える部分が大きい。ただ、30秒というターンの考え方を咀嚼する必要がある。
  2. 女子は10人制とは違うという部分から始まっている。それは切り替えの速さの要求であり、その速さの持久力を必要とする。

 

これは、何に起因するのだろう。端的に言えば、そのチーム作りの前提条件が異なったのだ。女子の場合10人制の世界選手権とSIXIESのWorld Gamesが重なり男子と同じ考え方でチーム作りを考えられなかったが大きい。しかしながら、女子の選手層も厚い日本では、よりSIXIESに適するプレーヤーも揃えられた事は幸いだったと言える。ただし、所謂「ラクロスおたく度」の高い男子がボックスラクロスや、アメリカのNLLラクロス、に興味を持ち続け6人制ラクロスへの必要な物を自分なりに理解していた土壌があり実際SIXIES男子日本代表には2名のプロ ボックスラクロスプレーヤーが含まれている。しかし、女子には6人制ラクロスの経験者は無に等しい。従って、女子は「違うもの」という形でスペシャルな動きを求めたのではないのだろうか(これは想像なので、又確認する機会を持ちたい。)。男子は現在の日本代表候補選手の16人中14人が10人制日本代表選手であり、22番森松選手(早稲田大学出身 WLAカナダのボックスラクロスプレーヤー)と SUGIHARA選手(NLA アメリカのボックスプレーヤー)の二人だけがSIXIES専任代表である(ただし、過去にはフル代表の経験は持っている)。女子のチーム構成は、より俊敏性に富み、瞬発力の高い選手の集団となっていて面白い。

 

そんな、前提で試合を見た。

女子競技  日本代表 vs 関東選抜

<日本代表>

ゴーリー 冨田真世(NLC Schrzo/福岡大学)竹本萌優(NLC Scherzo/同志社大学/関西大学高)

フィールダー 藤村麻伊(明治大学/県立川和高)小瀬かなえ(MISTRAL/明治大学/帝京高)河合寧々(学習院大学/都立駒場高)田中希美(MISTRAL/立教大学/東京成徳大高)冨森美帆(東海大学/横浜市立東高)井上果歩(MISTRAL/立教大学/県立佐原高)岩田奈央美(MISTRAL/早稲田大学/金沢)井田ほのか(MISTRAL/同志社大学/同志社高)小林遥佳(NeO/東海大/聖徳高)中澤ねがい(日本大学卒)

<関東選抜>

ゴーリー 齋藤彩(NeO/北海道大学)佐藤理子(東海大学/東京成徳大高)
フィールダー 森岡友菜(NeO/明治大学)、岡田麻梨乃(NeO/国士館大学)森屋香音(青山学院大学/県立横浜国際高)久米奈々(NeO/中央大学)山本真菜美(慶應義塾大学/同志社高)安達万奈加(立教大学/横浜市立東高)森あおい(立教大学/日本大学高)田口郁奈(横浜国立大学/日本大学高)江森郁(日本体育大学/横浜市立東高)木村圭那(Mistral/成蹊大学)

と、日本代表候補にも挙がる選手や若く俊敏性に富む選手の選抜チームである。注目して欲しいのは森選手、田口選手のディフェンダーが入っている事だ。

試合レポート
1Q

試合開始早々代表が速いテンポで攻撃、守備も対応するが2本のショットは外れる。それでもスピードスター17番中澤選手がブレイクし先制点を奪うと、SIXIESらしい速いテンポの応酬が続き、関東選抜も点を奪うが、代表も7番田中のブレイクが決まる。しかし代表のショット精度が高まらず1Qはそのまま2対1で終了。

2Q

代表17番のブレイクもあったが、関東選抜も7番山本や8番安達の得点で詰め寄り 4対3 トータル 6対4で終了

3Q

開始早々関東選抜4番のドローブレイクで6対5と迫るも、代表もターンオーバー17番のこの日3点目のブレイクで7対5と突き放したのが開始90秒。SIXIESらしいテンポで客席を沸かせたが、その後代表の前掛りの裏を突いて、関東選抜13番木村、11番江森が決めて7対7と追いつく展開に日本代表も思わずタイムアウト。体制を立て直し12番小林、7番田中のブレイクで9対7とし3Qを終えた。

4Q

日本代表の意地を見せるべく、プレッシャーを強め7番田中が4点目のブレイク。マンアップから9番井上のパスカットからのフリーランブレイク、6番河合の高速ドライブで突き放すも関東選抜最後粘り7番山本4番岡田が決めて 12対9で終了となった。

 

ここまでのロースコアで接戦となったのには3つの理由があると考える

  1. 日本代表のショット決定率が低かった(枠外が多かった。)
    これには2つの理由が挙げられる。① グラウンドに水がまかれた後で、ボールが滑りやすショットが上に抜けやすい(女子クロスの特徴でもある)。② 関東選抜のゾーンディフェンスにはまった。
  2. 関東選抜が2人のディフェンススペシャリストを入れて、日本代表の臨んだ早い応酬合戦に乗らず上手く時間を消費させる事ができた
  3. まだ実践経験も不足しているので、30秒の使い方のパターンが少ない。

という事である。

ただ、付け加えるなら、翌日の関東選抜との試合では、大勝をしている。順応性は高く試合ごとに強くなるポテンシャルの高いチームであることは間違いない。世界大会では自分たちのペースにしていく事に大きなポイントがあるのではないか?また、相手ペースになったときそのペースを早く変える臨機応変さ、もしくは戦術の引き出しの多さが鍵になりそうだ。何しろ一つのクウォーターの時間は10人制の半分である。ペースをつかみ直すには、12人の選手のSIXIES IQの高さも要求される。

★試合結果

チーム名1Q2Q3Q4Q合計
SIXIES日本代表243312
SIXIES関東選抜13329

 

SIXES 女子日本代表
#7 田中 希実4
#17 中澤 ねがい3
#9 井上 果歩2
#12 小林 遥佳2
#6 河合 寧々1
SIXES 女子関東選抜
#4 岡田 麻梨乃2
#7 山本 真菜美2
#13 木村 圭那2
#6 森岡 友菜1
#8 安達 万奈加1
#11 江森 1

 

試合前に、SIXIESの場合さらに重要となるゴーリーの二人に話を聞いた。

2番 竹本萌優(NLC Scherzo/同志社大学) 4番 冨田真世(NLC Scherzo/福岡大学)ともに共通して出た言葉は「とてもセーブの機会が多く、切り返しの素早さも求められる。」という事。実際に10人制代表メンバーにも名を連ねていたが、よりセーブ後のスローイングの切り返しの速さを重視して選んだという事実がある。本番でもセーブから一瞬の切り返しで得点を生み出す発火点になってほしいものだ、

男子競技 SIXIES日本代表 vs 10人制日本代表選抜

男子の場合、対戦がそもそも10人制日本代表チームを2分割したようなチーム対戦であり、コーチ陣が語るようにラクロスそのものの質に大きな変わりがないと想定されるとするなら、この試合は女子と違った意味で接戦となることが予想された。

<SIXIES日本代表>

ゴーリー 徳舛宗哉(FALCONS/関西学院大学)福島裕樹(GRIZZLIES/千葉大学)
フィールダー 立石真也(FALCONS/慶應義塾大学)尾花一輝(GRIZZLIES/早稲田大学)小松優斗(GRIZZLIES/中央大学)佐野清(FALCONS/東北大学)守田樹(九州大学/県立山口高)佐藤大(FALCONS/早稲田大学)金谷洸希(GRIZZLIES/千葉大学)梅原寛樹(FALCONS/日本体育大学)夏目聖也(FALCONS/日本体育大学)鈴木潤一(Stealers/早稲田大学)辻野勝巳(獨協大学/県立伊奈学園総合高)平野弘喜(GRIZZLIES/早稲田大学)森松達(Maple Ridge Burrards/早稲田大学)杉原暉徳/Kinori Rosnow(NLA Groove及び Onondaga Redhawks/Oberlin College)

※Maple Ridge Burrards(https://www.burrards.ca/ カナダのプロボックスラクロス WLA所属)

※NLA Groove(https://www.nlapro.com/groove-lc  アメリカのプロボックスラクロスNLA所属)

10人制代表選抜>

ゴーリー 大嶋省吾(Stealers/東京大学)鈴木貴大(FALCONS/東京大学)
フィールダー 後藤功輝(GRIZZLIES/早稲田大学)、齋藤昭輝(Stealers/日本体育大学)嶋田育巳人(GRIZZLIES/早稲田大学)田村統馬(Stealers/法政大学)岸 映裕(FALCONS/東京理科大学)徳増昴(FALCONS/日本体育大学)蜂谷亜連(Stealers/日本体育大学)柳井宏太(GRIZZLIES/立教大学)谷嶋悠太(VIKINGS/早稲田大学)廣津泰雅(GRIZZLIES/明治大学)松本友佑(GRIZZLIES/青山学院大学)金山暖(GRIZZLIES/東京大学)荒木祐之輔(FALCONS/東北大学)石井ヴィクトール慶治(慶應義塾大学/慶應義塾NY高)石井仁貴(FALCONS/成蹊大学)小川司(慶應義塾大学/慶應義塾NY高)加藤裕太(GRIZZLIES/明治大学)立川将希(GRIZZLIES/立教大学)乘田秀樹(GRIZZLIES/成蹊大学)

 

注目したのは10人制日本代表の2人のLSM辻野選手と平野選手がSIXIES代表にいる事。そしてディフェンダーは佐野選手しかいない。SSDM(ショートスティックディフェンス)も佐藤選手がSIXIESで徳増、蜂谷の2選手が代表選抜に分かれた。ここからは、SIXIES代表がより攻撃的にシフトしている事が伺える。

 

結果は 1Qの立ち上がりこそ、水をに濡れたボールの影響もあり上ずったショットも修正されお互いのショットの応酬が間段無く続く展開では有ったが、第2クウォーター6対3の差を守り切ってSIXIES代表が勝利した。この得点においても、現時点では男子の方が女子に比べてSIXIESへの理解度が高いと感じられた。

 

チーム名1Q2Q3Q4Q合計
SIXIES日本代表264315
10人制代表選抜234413
SIXES 男子日本代表
#3 小松 勇斗3
#14 金谷 洸希3
#6 守田 2
#15 梅原 寛樹2
#17 鈴木 潤一2
#1 立石 真也1
#2 尾花 一輝1
#13 佐藤 1
10人制 男子日本代表選抜
#17 柳井 宏太4
#8 後藤 功輝2
#10 齊藤 昭輝2
#35 乘田 英樹2
#16 蜂谷 亜連1
#30 石井 仁貴1
#34 立川 将希1

試合後10人制代表でも主将を務める 佐藤大選手に話を聞いた。

10人制とSIXIESとの違いについて

  • 切り返しの速さは全く違う。SSDMも、もし付いていこうとすれば翻弄される形で消耗する。

そこで、

  • DF的には抑えきらなくても、ショットを打てないような形や、DF的に守りやすい所へ誘導する事を考えている。
  • 30秒を使わせれば良いのだと割り切る事も大切にしている。

実に明解な答えだった。この、「相手に30秒を使い切らせるにはどうするか?」逆に言えば「攻撃面では30秒でいかに点を取り切るか」、そこがSIXIESの本質だと知らされたコメントだった。

30秒間の攻守の応酬があるという事は、一つのクォーター8分間で8回の攻撃権が最低でも与えられる。4つのクオーターで32回の攻撃が可能だ。その攻撃権をどのように得点に結びつけ相手の攻撃の時間を浪費させるかそのように考えていくのが男子のアプローチ。一方の女子は、先ずは初めて挑戦で、どんどん攻めて戦い抜く事を選択したと受け止めた。どちらのアプローチが正しいのかを問うのではなく、結果はどうあれ2028年のオリンピックでメダルを取れるようになるための、未来への経験を持ち帰る事こそ今回の挑戦の第一義だと考えている。

SIXIES LacrosseのWebサイト(https://sixes.lacrosse.gr.jp/?page_id=109)ではSIXIESを35年ぶりのフロンティア”と捉え、新たな競技文化を創造すると宣言している。今回のWorld Gamesに臨む選手の皆さんはそんなパイオニア達なのである。そんな彼らが見せる‘未来の競技’を心から応援したい。

SIXIES 日本代表の試合スケジュール

 

男子 日本 vs イスラエル  7月8日 10時半

        カナダ    7月9日 10時半

        イラコイ   7月10日 10時半

(もう一つのブロックは 英国 オーストラリア アメリカ ドイツ)

女子 日本 vs チェコ    7月12日 10時半
アメリカ   7月13日 14時

     オーストラリア   7月14日 10時半

(もう一つのブロックはホーデノソーニー、イスラエル、カナダ‘、英国)

24人のパイオニア達は、日本へ何をもたらすのだろう。楽しみで仕方がない。

 

やっぱり、ラクロスって最高!

こぶ平

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