【こぶ平レポート】慶應義塾大学(Bブロック1位) 対 明治大学(Aブロック2位)|「女子」大学ラクロス 〜関東FINAL4の劇的ドラマ〜
Photo by Akie Umeda & こぶ平
全国で、全日本大会への進出を決める中、第13回全日本大学選手権は新しい形式で始まる歴史的大会となる。即ち前年度優勝地域の2位校がワイルドカードで出場できることになり、合わせて昨年まで行われてきた 中四国地区 vs 東北地区 の2地区代表決定戦がなくなり各地区が支部となり7支部8校の代表が戦う現状最も理にかなった大会形式になった。そして、10月15〜16日に実施された東日本支部(今後は都合上関東地区とする)のファイナル4は勝てば全国大会への出場権が得られる、事実上の決勝戦という位置づけとなった。そして其れが故に全ての試合が勝負に拘った、激しく熱い戦いとなった。今回はその関東地区のFINAL4を詳しく振り返りたい。
慶應義塾大学(Bブロック1位) 対 明治大学(Aブロック2位)
両校とも、全国大会への男女アベック出場を目指すだけに、この戦いに賭ける思いも強く、また其れがゆえにブロックリーグ戦と違う戦いを余儀なくされるという予想も立てていた。慶應義塾大学のファイナル4での攻撃に対する自信を、明治大学の守備がどのように挫くのか注目された1戦は、敵将が称した「アリ地獄ディフェンス」駆使する明治大学のペースで終始した。詳しく振り返ろう。
ゲームレポート
1Q
攻撃力に勝る慶應義塾は88番川久保選手のドローも強く序盤からの攻勢を目論んでいただろう。しかしそのドローを明治5番中村選手にコントロールされ奪われる展開から始まり、明治はポゼッションをエラーなく展開。そして開始から4分慶應ゾーンの中へ入った明治8番に62番からボールが入り身長を生かしてショット。これはゴーリーが弾くも、クリース前絶好の位置に居た7番隅選手がスクープ、流し込んで先制する。さらにドローを連取した明治はポゼッションから慶應義塾のファールを誘い、62番藤村選手(SIXIES日本代表)がフリーシュートを決めて0対2とリードする明治にとって理想的な出だしとなった。そして次のドロー、3度目を取った慶應義塾だが、明治の「アリ地獄ディフェンス」;ハーフコートで粘り強く、機を見てダブル、トリプルでボールを奪う守備 に掛りボールを奪われる。明治がペースを作った形だった。慶應義塾もオールコートでプレッシャーを掛け簡単には明治の攻撃を許さないが、確実にボールを運ぶ明治が試合をメイクする。慶應義塾の最初のショットは71番のフリーショットだがこれもセーブされる。完全な明治ペースだったが、少しのところでパスミスが重なり流れを完全に掴めなかった。すると慶應義塾ポゼッションから明治ファールを誘い33番山本選手がフリーショットを正面から決め1対2とし、明治に行こうとする流れを止めて1Qを終了する。
2Q
2Qに入って、最初のドローを慶應義塾が確保するも、明治大学の「アリ地獄ディフェンス」は機能し粘り強い守備で慶應義塾の強力なオフェンスをシャットアウトする状況は変わらず、明治大学のペースで進んだが、慶應義塾も前からの攻撃的守備で対応した。しかし、9分過ぎ前架かりになった、MFの裏のスペースをフリーで動いた明治62番からゾーンの穴へ入った8番柳井選手へ早いフィードが入り、ターンハイタワーショットが鮮やかに決まり点差を広げた。この時点で明治の優位が鮮明になった。慶應義塾は明治の守備を崩すポイントが見つからず仕掛けると守備陣に刈り取られるパターンが繰り返され、13分過ぎにはターンオーバーからの明治の仕掛けにファールを犯し、再び8番柳井選手がハイタワーのフリーショットを決めて1対4と前半、明治大学が完全に試合をコントロールして終了した。
前半の試合が一方的になった要因は2つ
明治大学の忠実で固く粘り強い守備(慶應義塾もアタックの主力の1人が満足に動ける状態ではなかったこともあるが)
明治大学の真骨頂、1歩ずつ勝るグラウンドボールの処理だったとみている。
慶應義塾はドローこそ2Qで持ち直したが、ショット数においては屈辱的な結果となった。ただしここで読み取らなければならない事がもう一つある。それは後半と合わせて書く事とする。
3Q
インターバルでの慶應義塾の巻き返し策がどのようなものになるか注目したが、ドロー、グラボを取りまずグラボのビハインドが解消する動きは見えた慶應義塾しかし、明治のハーフコートの強力な守備は崩せず、最初の得点機会となった3番のフリーショットも明治の速い詰めに枠外となった。慶應義塾もオールコートのプレスを強めボール奪取の機会を増やすが、ゴール前での明治の粘り強い守備を崩せず、突破力のあるアタックの脚の影響は思ったより大きかったようだった。しかし慶應義塾、思うように動けない74番は自ら動かず動くターゲットを探す事で活路を見出す。そして3Q 6分 74番秋山(雅;3年生)から 縦パス センターに侵入した3番秋山(美;1年生)へピンポイント供給され振り向きざま、守備を交わしてのショットが決まる、ダブル秋山の見事な得点だった。しかしその後もショットは打たされている感のある慶應義塾に対し明治DF71番久保田選手のこの日2本目のパスカットからロングドライブによりチャンスを作り、フィニッシュは62番藤村選手のダイブで2対5と点差を広げたのが3Q終了19秒前。この得点で明治が試合を決めるかと思われた次のドロー。この試合の最大のポイントとなったプレーが飛び出す。慶應義塾49番橋本選手がドローを自取りするとゴール横にフリーで居た3番秋山(美;1年生)選手へロングパス。秋山選手キャッチ、ターン&ショット 流れるような動作でDFを振り切って決め切った。慶應義塾が息を吹き返すショットが決まり会場が騒然となったのが終了1秒前。ここで、慶應義塾のベンチのムードが変わった。スタッツで見ると 慶應義塾 対 明治 ドロー 3対1 ショット 4対4 得点 2対1 流れが変わると思わせた1点だった。 3Q 終了 3対5
4Q
開始のドローを慶應義塾が取ると、パス回しが加速。慶應義塾選手の連動性が高まり88-71のラインがつながりインサイドブレイク71番平井選手はこの瞬間の為に京都の同志社高等学校から進学してきた(33番山本選手も同様だ)、その思いも載せたショットがさらに慶應義塾の動きを加速する。リスタートからの速攻慶應義塾4番山根選手からの71番平井選手への縦パスが通りターンショットが決まったのは1分後。しかし、明治も当然屈するわけもなく、その後の明治の仕掛け、守備には厳しさが増す。しかし慶應義塾は落ち着きも取り戻し、3番が仕掛けてブレイクを狙うと、今度は71番が引き付けると17番がブレイクを狙う。ダウンボールはスクープし明治に反抗の機会を与えない、今期の慶應義塾の姿を取り戻すと、74番秋本(雅;3年生)がロールオーバーから前方17番岩本選手(3年生)へフィード。ターン&ショット決めてついに逆転する。8分間の3点は相手をシャットアウトする強いラクロスを取り戻した事を示すものだった。
しかし、明治大学も屈せず、その後のドローを奪うとポゼッションから攻め上げ、相手ファールを誘う。そして得たフリーシュートはこの日2点を決めている62番藤村選手。しかしボールは枠外。続き5番のフリーシュートは慶應義塾DFが抑えきる。その後の明治のターンも明治陣での強いプレッシャーで慶應義塾が抑え込む展開が続く。しかしクリアした明治は残り90秒の攻撃に賭ける。残り50秒裏から捲った7番隅選手のショットは無情にもポストを叩き決まらず、慶應義塾ボールになって万事休す。明治のハイプレッシャーを交わした慶應義塾が逆転勝利を飾った。
慶應義塾、薄氷の勝利となった要因は何だろう。3つ挙げてみた。
試合としては完全に明治大学の試合運び通りに進んだ試合だった。
- 明治大学のハーフコートディフェンスの強度が、慶應義塾の攻撃強度と拮抗したこと。
- 明治大学が慶應義塾大学のゾーンディフェンスのポイントをつく攻撃ができた事。
- 慶應義塾大学のボール回し、攻撃の連動性の速度が落ちていた。(これには幾つかの要因がありそうだが詳細は除く)
では何故慶應義塾大学が勝ち得たのか?
結果的にスタッツは以下の通り。
得点 | 1Q | 2Q | 3Q | 4Q | 合計 |
慶應義塾 | 1 | 0 | 2 | 3 | 6 |
明治 | 2 | 1 | 2 | 0 | 5 |
ショット数 | 1Q | 2Q | 3Q | 4Q | 合計 |
慶應義塾 | 2 | 1 | 4 | 7 | 14 |
明治 | 6 | 6 | 4 | 2 | 18 |
ショット決定率:慶應義塾43% 、明治28%
明らかに明治大学のショットの決定率は低い。そこの差か。
明治大学は7番の代わりに8番の得点力が加わったが、7番、62番を含め枠を外すショットも多かった。それに比して慶應義塾大学は枠内へのショット率も上回り、この要因のみで勝負を分けたとも言える。ショットの決定率というのが日本の長年の弱点と言われてきたが、今年の世界選手権でショット決定率トップになった日本、経験を積めばショットの決定率は上がると思われる。そういう見地からすると、慶應義塾17番岩本選手の試合中の覚醒は経験を凌駕する可能性を見せた点で素晴らしい事でゃなかったか。
慶應義塾大学にとって最大の収穫は17番岩本選手のこの試合における進化だろう。74番秋本(雅)選手とのコンビは来期の慶應義塾を担う存在だけにうれしい進化となった。又試合を決めたのは17番岩本選手の得点となったが、3点を決めた71番平井選手(4年生)の活躍も素晴らしかった。しかし何といっても3Q残り19秒で決めた49番橋本選手からのロングパスをDFに付かれながらもキャッチ’ショット決めた1年生の秋山(美)選手の起死回生のショットが最大のポイントであろう。高校時代も凄かったが大学でも恐るべし。このショットを「AEDショット」と呼びたい。
一方の明治大学は完全にゲームをコントロールした。前述のゴール決定率は、リーグ戦開幕前からの課題として取り組まれてきた事になる。そして、結果的にその部分で最後に望む結果に達しなかった。ショットの決定力は一朝一夕では身につかないと言われている。事実このファイナル4の22得点中明治大学の5点と、日本体育大学の33番松岡選手、慶應義塾大学の17番岩本選手の得点の合計8点のみが、Teen`sラクロス未経験者の得点である。そして決定率から見たとき経験者の決定力が高いと見ざるを得ない。大学から始める選手のショットの成功率を高めることによって更に上位を目指すことは十分に可能だ。しかし逆に、Teen’sラクロスの実力向上も目覚ましいので、Teen’sラクロス経験者との融合も勝利の方程式として強い力があると言える。
そして、決勝進出と全国大会へ出場を決めたのは、立教大学と慶應義塾大学の2校であり、やはりシーズン開始前から有力視された大学の勝ち上がりとなった。立教大学については、シーズン前攻守のバランスを欠くとか、アタックの覚醒が必要とか書いていたが、ファイナル4を見る限りその点の心配はなさそうだ。オールコートのプレスで日体大をシャットアウトした後半は見事の物だったし、1ゴール2アシストの3番安達選手のパフォーマンスも進化の要因だ。慶應義塾は又、進化するであろう攻撃ラクロスの到達点が楽しみであるし、その為のタレントは揃っている。全国大会でその力の高さを示してくれることは間違いないだろう。
Game Photos
関東地区女子ラクロス|決勝戦情報
関東大学リーグ 女子ラクロス決勝戦は 立教大学 vs 慶應義塾大学 近5年間 連続の対戦は 2勝3敗 で 慶應義塾大学が対戦成績で上回り昨年のファイナル4での対戦は 4対6 慶應義塾大学が勝っている。既に全国大会出場を決めただけに、両校の持ち味を存分に発揮した面白い試合になることが期待される。
11月6日(日)会場:駒沢オリンピック公園 第二球技場
11時 女子決勝戦 立教大学 vs 慶應義塾大学 ドロー時間未定
チケット購入はこちら https://peatix.com/event/3392252/view
ファイナル4と異なり、一般観客は男女試合2試合通し有効券となっている。(一般;1600円 中学生以下無料;キッズ、中学生は必見です)