こぶ平コラム

【こぶ平コラム】中高ラクロス 関東春の決勝戦&22年度振り返り

2022年度のラクロスは2年間の不完全燃焼から、ようやくフルの活動が再開されそうだ。 という事でコロナ禍での2年間のラクロスを振り返りながら最後に今期のラクロスを占う形で話を進めていきたいと思います。題して「Lacrosse 新時代に向けて」シリーズ。第2弾中高ラクロス編(校名は全て略称としています)

【その前に2022年シーズンあれこれ】

前回大学ラクロスの新世紀に向けて書き、いくつかの反響もありました。その後、東北、関東、関西でリーグ戦が開幕し、既に想定外の事が起こっている。一つは関東の開幕で既に男女2試合の順延があり、関東地区では予想以上にコロナ禍の影響が広がっている。タイトな日程のなか、順延できない場合は不戦敗になるチームが出てくる(この不戦敗の基準が、コロナの影響で試合をするのが無理と正直に伝えた側が不戦敗となる。ので順延を申し入れにくくなる。)結果的に実力通りの結果とならないシーズンとなることも予想される。ここは、他の地区との了解を取り付けながら、全日本大学選手権開催までの間に済ませられるように知恵を出し合って最良の結果を求めてもらいたい。

他方、中学校高等学校のラクロスは関東でも秋シーズンへ向けた組み分けも決まり23年シーズンが始まろうとしている。そこで今回は中高ラクロスの新世紀について話していくのだが、その前に2022年シーズンを、2022年関東春の大会の決勝戦の詳細とともに振り返っておこう。

第一章 中高ラクロス2021年秋からの流れ

2021年は2020年に続き、春の全国大会が開催されなかったが、秋には、関東でも秋の大会にはそれまで活動を自粛してきた高校も参加し活況がもどりつつあった中、結果的には2018年春の関東大会3位決定戦から続いた日本大学中高(AQUA)の連勝記録が途絶え、その日大中高を準決勝で12対4で破った、東京成徳大学中高(BRAVE YOUTH)が決勝戦でも横浜市立東高校(East Girls)を10対2と圧倒。予選から決勝までの全ての試合を8点差以上で勝ち抜き新チームの王者に返り咲いた。

振り返りはラクロスプラス第13回全国中学校高等学校女子ラクロス選手権大会開催直前情報を参照あれ。


2021年 関東中高ラクロス参加校と結果抜粋


実際、新チームで戦う秋の大会での東京成徳大中高の力は圧倒的であり、連勝を続けた2018年秋以降の日大中高の強さとは異なる全体のチーム力の高い成熟した、大学生のチームをも凌ぐ雰囲気を持ったチームの出現に驚異の念を覚えた。しかし、中高ラクロスの凄さは、大学とも異なり、その差を選手の成長が6か月余りで越えていく事にある。正に今年はそんな事を実感する年となった。又、新しいチームの胎動や、慶應女子の復活等の新時代については別途中高ラクロスの“新世紀”で述べたいと思う。

秋の大会終了から4か月、全国大会の決勝戦では再び秋の再戦、東京成徳大中高と横浜市立東高校との対戦となったが、その時の決勝戦のスコアは10対6と4点の追い上げを見せた。詳細は https://lacrosse-plus.net/news/japanlacrosse/2022finaljhnt-championship/ をご覧あれ。

そして2022年春の特別大会 既報通り https://lacrosse-plus.net/news/japanlacrosse/cobbie-287/ 県立横浜国際高校や横浜市立戸塚高校も戻り、日大三島高校の初参加もあり28校26チームによるブロック戦のあとのトーナメントも二部の本庄東が初の8強入り岩倉高校も立川国際高校を破るなど、新しい時代の進行が速まる中、決勝戦は秋から3度目の 東京成徳大中高 vs横浜市立東高の対決となった。

第二章 2022年 宿命の決勝戦で見えたもの

激闘だった、新規特別大会準決勝 (詳細はこちらを参照)から1週間空けて開催された決勝戦(6月25日)について詳細を紹介する。

まず、第一にここまでの経過から決勝戦に進んだ両校の思惑が、準決勝前と準決勝後で大きく変わったという事が言える。どういうことかというと、秋から全国大会を通して22年度シーズンは、東京成徳大中高と横浜市立東高の2強という図式が出来上がっていた。(外から見ても、又内部でもそのような意識でいる事は垣間見えていた。)従って、決勝で出会うまでに両校の思いは「お互いに知り尽くしているだけに、3月末からの進化の度合いと、その手の内を出したくはない。」というものであった。しかし、両校とも勝ちを拾い上げたとも感じられる準決勝戦において、手の内をさらけ出さざるを得なくなった。つまり、奥の手を使って勝つという思惑が、「ガチンコで、ぶつかり合うより道はない。」といういわば腹をくくり合う形に変わったと言える。そんな思惑を抱きながら始まった決勝戦。

スターター

【横浜東高】G2DF10、37、39MF4、82、0AT12、29、71

【東京成徳大中高】G遠藤DF65,50,4MF13、7、5AT62、73、83 の布陣

ドローは東82番 vs 成徳5番の定石通り だった。

注目は、準決勝で大活躍をした東高71番小野選手と成徳中高62番の岡田選手に集まった。しかし、東高の71番小野選手が突出していたのに比べると、アタックの層が厚い東京成徳。おのずと両チームの対応は異なったものとなった。即ち成徳の「71番をどう抑えるか?」に対して東高の「打ち合いに持ち込むために、成徳のバッカーゾーンDFをどう崩すか?」そういう戦略の違いも含めて、最初のドローが上がった。。(因みに中高ラクロスは、1Q 10分 のトータル40分 大学・クラブと比べると2/3しか時間がない。仮に大学等と同様に1ターンで2分の攻撃時間を想定すると、1試合両チーム合わせて20回の攻撃チャンスしかないという事は覚えておいて欲しい。)

【1Q】
過去2回の戦いで、ドローについては優位に立つ東京成徳。しかしこの日の最初は横浜東がドローをスクープ、ポゼッションから、4番がインサイドをブレイクし先制する。しかし、次のドローは確実に物にした東京成徳13番がダイブし追いつく。それでも横浜東は続くドローから29番が速攻をさく裂させるが、東京成徳も62番のドローから、ブレイクを奏功させ2対2とする、文字通り「ガチンコ」の点の取り合いの様相を呈していた。そして1Q終盤東京成徳がややポゼッション率を高めていたが、横浜東サイドからの攻撃、角度無しからのショットはポストに嫌われるも次のターンで0番が反転ショットを打ち込み 東京成徳大中高 vs 横浜市立東高 2対3 過去とは異なる横浜東のリードで1Qを終了した。両チームの力がぶつかり合うい10分でトータル5点を取り合うスリリングな試合展開となった。

【2Q】
2Q開始。この試合1Qから全開で行くかと思われた、横浜東71番の動きが重く、開始早々のフリーシュートもらしくない枠外ショットとなり、横浜東2Q早々の攻勢を生かせない。すると東京成徳ターンオーバーから13番が裏まくりを決め 3対3 の同点としたのが2Q5分。その後は一進一横浜東のフリーシュートをセーブした東京成徳ターンオーバーを満を持して62番が決める。しかし、横浜東もここでエース71番が動くドローからのパスを凄いキャッチで生かすとそのまま高速ドライブ、角度無しからもショットを放つとボールはサイドネットに吸い込まれた。“オノキャノン”炸裂で4対4として、再びスリリングな2Qを終えた。 東京成徳大中高 vs 横浜市立東高 4対4(2Q 2対1)

【3Q】
3Qに入っても、両者の思惑など関係のない、ガチンコの勝負が続く。先ずは、東京成徳のバッカーゾーンの隙を突いた、横浜東の29番のインサイドブレイクで4対5。その後はボールの奪い合い、隙を狙う動きと止まることを許されない展開が続いて8分が経過、東京成徳7番のフリーショットは思い切り良く振りぬかれて横浜東のゴールへと吸い込まれた。5対5となり3Qもお互い譲らない戦いが続いた。 東京成徳大中高 vs 横浜市立東高 5対5(3Q 1対1)

【4Q】
4Qに入り東京成徳の動きが変わる。ドローで強さを見せると、7番、4番が絵にかいたようなカットインブレイクで一気に突き放しにかかる。4Q 2分で7対5 この試合初めての2点差がつく。ここから東京成徳ポゼッションの優位を生かして上手く時間をコントロールするも、横浜東も懸命のプレッシャーでボールを奪いにかかる。試合会場も異様な盛り上がりで選手のチェックも厳しくなり、脚を吊る者も続出する中、横浜東ターンオーバーから0番裏からのまくりに、ターンを加えてDFを交わしゴールを揺らしたのが、4Q 8分 7対6。ここからの2分間は文字通り青春を賭けた気持の応酬に、東京成徳の持ち前のキープ力も乱れ、横浜東が最後の攻撃、、、、、36番のショットでリスタート。残り数秒。    横浜東ダイレクトショット行かずに、次のショット寸前で無念のホイッスル。40分 20数回の応酬は濃密な気持ちと技術の応酬だった。戦術面、戦力面すべての面で大学の1部リーグ上位に迫るレベルの試合は、東京成徳大中高の 秋季リーグ戦、全国大会、春季リーグ戦 3連覇で幕を閉じた。 最終スコア 7対6

この試合の、特に4Qの東京成徳大中高の動きの変化と、試合全般を通じて準決勝のようなパフォーマンスを発揮できなかった、横浜東71番について、そしてその他の情報について試合後に聞き取った情報をお伝えしておかねばならない。

  1. 横浜市立東高校 71番小野選手は準決勝の死闘で、獅子奮迅の活躍をしたが、その際に熱中症で休養を余儀なくされ、1週間練習もできない、当日ぶっつけ本番の状態だった。それが故にベストのパフォーマンスは出しえなかった。
  2. 4Q最後のシーン、ベンチではまだ10秒程度残っているとしていたが、実際には3秒程度でそこが把握できていれば最後ダイレクトにショットに行くべきだった。
  3. 横浜東としては、東京成徳のバッカーゾーン対策はしてきて、克服することはできると信じていたし、又結果的には計算通り点は取れたと認識している。
  4. 東京成徳側にも特殊な事情があった。準決勝で倒れ担架で運ばれたセンターの3番の選手が、両足軽い肉離れで走るのは厳しい状況であり、決勝では本来の力が出せていなかった。主力の怪我というのは中々避けがたい問題という事実。

では、そんな状況下で何が試合を分けたのか。勝った東京成徳大中高の情報をお伝えしても良いと言われているのでそのままお伝えしておこう。

① 東京成徳は決勝で横浜東の71番にはシュートを打たせない戦略をとっていた。
71番以外に点を取られるのはかまわないので、71番だけはシャットし今日は打たせてもらえないと感じさせよう。ショット力のある71番が機会を失えばこちらも得点力があるから撃ち合いで勝ち切ればいい。6失点は想定内だ、という戦略を伝え決勝に挑んだ。結果として甘いショットが多くゴーリーがよくセーブして反撃に繋げることが出来た。

② ディフェンスは得意なハイプレスのバッカーゾーンは体力の消耗が激しいため、猛暑により封印する戦略を取った。ただし71番には打たせないゾーンではあった。誤算はアタック陣のショット成功率が想定外だったこと。(東京成徳のショット成功率は41%で最低レベルだったようです)。

③ 最後の4Qではマクロ戦術を使って 2点リードしたところで、時間を使いながら全国大会と同じ流れに持っていくはずだったが、ポゼッションミスが続き、横浜東高にを与えてしまったのは厳しかった。同点延長になっても不思議のないラストった。

つまり、たられば、も含めて最後のところでの勝負の綾は、怪我等の不測のファクターを組み入れた、分厚い戦略なのだと感じた。東京成徳大中高の秘めていた、4Qでのマクロ戦術なるものの詳細はお伝えする術もないが、現実に4Qの2分で2点差にしたことが最終的な勝利に繋がったと言える。この決勝戦は、そのレベルの高さのみならず、色々な意味で含みの多い試合となった。実際に始まったばかりの大学ラクロスに於いて、このレベルに達するのは何試合あるだろう。簡単にスルーしていたが、ディフェンスに於いてバッカーゾーンなる物を理解して駆使するレベルのチームは、大学においても数少ない。ましてや、それを破ろうとして3度。ついに崩すところまできたチームもある。

22年度中高ラクロスの戦いにおいて、シンボリックな意味を持つ 東京成徳大中高 vs 横浜市立東高 の戦いは、 秋大会 10対2 全国大会 10対6 春大会 7対6 で終わった。このお互いの進化のプロセスは専門的に取り上げたいほどだ。

春の決勝戦後 最も印象深かった事をエッセイ的に書いておく。
試合終了後 横浜東高校の顧問の先生が崩れ落ちたまま男泣きをされていた。青春を賭けた戦いの後選手が泣き崩れるシーンは目にするのだが、先生が涙される。これこそ「ラクロスの一体感」なのかなと感じるシーンだった。そして3年生の思いと、先生の思いも胸にした2年生1年生の戦いぶりに、必ず進化の呼び水となるはずだ。9月から始まる、秋のリーグ戦、又横浜市立東高校 East Girls から目が離せなくなった。

最後に 東京成徳大中高の先生からの言葉も添えておく。
「ティーンズも大学生トップ並みの緻密な戦略や戦術、次の戦いに対するスカウティングも含め、高度な戦いが要求されるようになってきましたね。」

ラクロスって 最高!

こぶ平

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