【ラクロスコラム】#3 十人十色のONE TEAM|SELL代表 柴田 陽子

皆さんにとって、最も「ラクロスをやっていてよかった」と思うのは、どんな瞬間でしょうか。

私にとっては、こんな瞬間です。

これはHCをしている青山学院が、2018年に初めて関東の決勝進出を決めた直後の一枚です。この幸せな瞬間を、私は一生忘れないと思います。


でも、この瞬間を幸せだと思えたのは、勝利だけが理由ではありません。それ以上に、苦しいことも一緒に乗り越えてきた仲間がその場にいたから。
チームの目標に向かって本気で向き合ってきた仲間と成し遂げたことだから。
だからこそ、この歓喜の瞬間がかけがえのないものになったのだと思っています。
そして私はこの経験以外にも、15年間で色々な仲間とすべてが報われるような幸せな瞬間をたくさん積み重ねてきました。

少し前に、「ONE TEAM」という言葉がラグビーW杯をきっかけに流行りましたが、ラクロスほどその難しさと楽しさを感じられるスポーツは他にないと、私は思っています。

私が高校までやっていたバスケもそうですが、多くのメジャースポーツにおいて、大学以降の段階では、その競技を経験してきた人々が集まることがほとんどです。
これはある程度似通った価値観や、社会的背景の人が集まりやすいと言えるかと思います。
それに比べ、ラクロスは9割以上の人が大学から始める競技。
それまでやってきた部活やその経験を通して形成された価値観、すなわちそれぞれが歩んできた道が大きく異なる人々が集まります。

私にも大学時代、吹奏楽部出身であまりスポーツ経験がない同学部の同期がいました。
初めてその子と練習場から2時間離れたキャンパスまで向かったとき、そのマイペースぶりと、スポーツにはあまり向かなそうなおっとりとした性格に、当時勝ちに飢えていた私は「なぜこの子はラクロス部に入ったんだろう」と真剣に不思議に思いました。笑

しかし、その同期は4年間、習得の遅さをよく私にいじられながらも必死で食らいつき、4年生の夏には初めて実力でAチームまで上がってきました。
リーグ戦出場は叶わなかったものの、同期からの厚い信頼の下、最後の1年はBチームキャプテンという重責を引き受け、見事Bチームを優勝に導いてくれました。
まったく違う道を歩んできた彼女から多くを教えてもらった経験です。
最近彼女は10年間勤めた日本の一流企業を退職し、アメリカの名門大学院で勉強する道を選択しました。
その姿勢には今でも学ぶことがたくさんあります。

大学卒業後に社会人チーム・FUSIONに入団すると、そこでもまた、チームにおける学びがありました。
FUSIONはその名の通り、多種多様なバックグラウンドの選手が集まっている、当時はまだ創部5年目の若いチーム。
北は北海道、南は九州から、関東の中だけでも部員が4人しかいないからFUSIONで試合に出ているという私より若い選手もいれば、名門体育大学出身でラクロスもお酒の飲み方もトップクラスの偉大な先輩方もいました。
FUSIONには、様々な価値観の人が臆せずに意見を発する文化、年齢の上下など関係なく、全員が対等に仲間を尊重し合う伝統が当時からあり、まだ若手であった2年目の私に主将のバトンが渡ってきたのも、そんな考えが基盤にあったからこそだと思います。
FUSIONというチームで過ごしていく日々の中で、みんながこのチームにいる理由は、強いからとか試合に出たいからということ以上に、仲間一人ひとりの魅力に心底惹かれているからなのだと、強く感じるようになりました。

夜の日本一も目指していると言うだけあって、飲み会でも色々と学ばせていただきましたが笑、それ以上に、FUSIONの先輩や同期、後輩からは、様々な意見に耳を傾ける大切さ、それを言える環境をつくることの重要性、「チームがFUSION=融合する」というプロセスを楽しむことを知りました。十人十色の魅力的な人が集まっていたあのチームに所属していた数年間は、今のコーチとしての指導の軸にもなっている「人として大切なこと」を多く学んだかけがえのない経験です。

FUSIONには当時、「チャラ部」というすでにFUSIONを引退した方々の別部隊がありました。
私がまだ1年目のとき、なぜかチャラ部ご一行・先輩方に熱海旅行へ連れて行ってもらったことがあり、その仲の良さがとても羨ましかったのを覚えています。
いつもFUSIONの試合を応援しているチャラ部の方々は、出場をしているメンバーよりも楽しそうで、10年後もまだそうやって笑って楽しめるような一生の仲間と、社会人なってからも出会えたらいいな、とよく思っていました。

あれからちょうど10年、私は今年FUSIONの同期と一緒に、関東クラブ2部に新チーム「LINK」を立ち上げます。違う世代や環境の人と人を「繋ぐ」という意味を名前に込めてつくった草ラクロスチームです。
日女体の同期二人が名前やチームカラー、ユニデザインを考えてくれ、ラクプラの中の人がロゴを作ってくれ、長年クラブ連盟の執行部をやっていた東海の同期が協会手続きを教えてくれて、最もFUSIONで長くプレイしていた早稲田の同期が人集めに奔走してくれました。

新チームの話をすると、「SELLも青学も代表の活動もあるのによくできるね」と言われることが多いのですが、それは少し違っていて、私はこのメンバーだから新チームがつくれたのです。コンセプトを考えて先頭で走り出すのは私かもしれませんが、同期のみんなは私が持っていないものをたくさん持っていて、私が苦手なことをたくさんやってくれます。それをお互いに誰よりも理解しているから、最高のチームワークでONE TEAMになれる。みんな何年も前にFUSIONを辞め、それぞれ別々の道を歩み始めたにも関わらず、こんな提案に明るく乗ってくれる同期は一生の仲間です。

社会に出ても、一人で仕事をしない限りは必ずチームが存在します。リクルートで法人営業をしていた頃、私は神奈川チームのメンバーとして年間最優秀チーム賞をいただいたことがあります。現在社会人歴丸11年、様々な会社で様々なチームと一緒に働いてきましたが、改めてあの時がどれほど恵まれた環境で、素晴らしいメンバーと仕事ができていたかを痛感しています。当時のチームは法人営業といっても、全員に同じ役割が与えられているわけではなく、全員がそれぞれのカラーを出して営業をしていて、それをリスペクトして見習う文化がありました。私はチームの中で一番の若輩者で、足を引っ張ってばかりでしたが、その環境の中で、仕事においても、【一人ひとりの異なる良さを最大限発揮してこそ、最高のチームワークが生まれる】、という大事な学びを得ました。


最高のチームとは?

チームスポーツをやっている限り、これは永遠の問いかと思いますが、少なくとも、私がコーチをしている中で常に目指してきた最高のチーム像は、同じ価値観で同じ役割ができる人をたくさん育てるよりも、十人十色の異なる良さを尊重し、それらを生かし合える文化を育むことです。

ラクロス界にいれば、歩んできた道が違う人とほど、一緒に何かをやろうとしたときに化学反応が起こせることを、チームと向き合う中で毎日のように実感することができます。ラクロス部には、高校まで様々なスポーツを様々なレベルでやってきた子がいます。
個人競技をやってきた子、団体競技をやってきた子。超強豪でやっていた子、一勝もできなかった子。
そして、文化部の子も、帰宅部の子もいます。20人のチームでも100人のチームでもこれはラクロスにおいては共通で言えることかと思います。

部員の人数分だけ、考え方と良さがある。

そんな仲間と同じ目標を達成するために、違いを乗り越え、互いの良さと弱さを熟知した先で、支え合い、生かし合う。
そのすべてのピースがはまったとき、ONE TEAMでしか味わえない、特別な瞬間を誰もが経験することができます。
それがラクロスなのです。
だからこそ面白いし、だからこそ難しいし、だからこそ学ぶことが多いし、だからこそ、乗り越えたときが最高なのです。

十人十色であるからこそ創れるONE TEAM。
そのようなチームの魅力を「知っている」ということが、社会に出て働く上でも、自分自身の成長、そしてチームとしての結果を大きく左右すると思います。

ラクロス部でも、そして社会に出てからも、そんな最高の瞬間を十人十色の仲間たちと迎える人生を送れることが大きな幸せなのかなと、私は思います。

SELL代表
柴田陽子

▶︎Profile
柴田陽子(1987年生まれ、兵庫県出身、神奈川県在住)
【学歴】
・大阪教育大学教育学部附属高等学校池田校舎卒業
・慶應義塾大学総合政策学部総合政策学科卒業
【社会人歴】
・アクセンチュア(SAPを専門に取り扱う部門でクライアント企業へのSAPシステムの導入プロジェクトに携わる)
・リクルート(リクルート住宅部門注文住宅グループ神奈川チームにて住宅雑誌「神奈川の注文住宅」の営業)
・WWE(米国最大のプロレス団体の日本法人にてマーケティング、ライセンシング、セールスなどをサポート)
・ナイキジャパン(通訳チームの一員としてスポーツマーケティング、ロジスティックス、テック、CSRなどの視察や会議の通訳および資料翻訳を担当)
・電通(オリパラ局の一員として東京大会の各競技のスポーツプレゼンテーションを企画。チームの国際リエゾンとして豪州のパートナー企業との交渉も担当)
・Second Era Leaders of Lacrosse(代表として団体創立に携わり現在に至る)
【ラクロス選手歴】
(所属チーム)
・慶応義塾大学女子ラクロス部(2005年~2008年)
・FUSION(2009年~2013年)※2010年~2012年主将、2013年GM
・CHEL(2014年~2016年)※2015年主将、2016年副将
(選抜チーム)
・U20関東選抜(2005年)
・U22日本代表(2008年)
・日本代表(2009年~2011年 )※2009年W杯参加
【ラクロスコーチ歴】
(所属チーム)
・慶応義塾大学女子ラクロス部AC(2009年)
・青山学院大学女子ラクロス部HC(2010年~現在)
(選抜チーム)
・U20関東選抜AC(2012年)
・U20関東選抜HC(2013年)
・U19日本代表AC(2015年)
・日本代表AC(2017年)
・全国強化指定選手団AC(2019年)
・日本代表GM兼HC(2020年~現在)
【主なラクロスタイトル】
(選手)
・関東学生リーグベスト12(2007年)
・東日本クラブリーグ優勝(2011年・2012年 FUSION、2014年 CHEL)
・全国クラブ選手権優勝(2011年 FUSION)
・全国クラブ選手権準優勝(2014年 CHEL)
・全日本選手権準優勝(2011年 FUSION)
・全日本選手権3位(2014年 CHEL)
(コーチ)
・全国最優秀指導者賞(2018年)




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編集長LACROSSE PLUS JAPAN
小野寺ひより(編集長) <ラクプラについて>設立:2016年8月|ミッション:ラクロスに関わる人に有益な情報を届け続ける|ビジョン:ラクロスの人ってかっこいい

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