【こぶ平レポート】ラクロス日本代表チャレンジ2022試合レポートとラクロス女子日本代表への取材
今年、ラクロス界ではコロナ禍で滞っていた世界大会の開催とWorld Gamesへの男女ともの参加というものが重なり日本からも4つの世界選手権に代表選手が送られる。そしてその先陣を切るのが、女子の世界選手権だ。昨年行われる予定だった大会が今年開催に延期されいつもより早い、6月29日から7月9日ラクロスの本場アメリカのさらに本場中の本場メリーランド州のトーソン大学で実施される。そして間にWorld Gamesを挟んで掉尾を飾るのが8月10日から8月20日までアイルランドのリムリック大学で実施される男子21歳以下世界選手権大会だ。
6月12日(日)に10人制のフルラクロスで行われる、2つの大会に向けた代表チームの壮行会とチャレンジ試合が開催された。その試合の模様と、そこから見えた代表ラクロスについて、ヘッドコーチへのインタビューの答えから展望を話していきたい。
ラクロス女子世界選手権代表チーム
日本の女子チームが世界選手権に初めて出場したのが1993年第4回大会。1997年の世界選手権はなんと東京で開催されている。ご存じでしたか?この時代は参加国が7〜8か国だったために東京でも開催ができたのですね。今は30カ国2,000名以上が参加する大会に成長しています。
世界選手権の女子の最高順位は2005年の大会でしたが今年は、その成績を上回る事に期待をよせてしまう。そのような期待にどのように答えるのかを聞いてみたので、壮行試合の結果も振り返り、代表のHCのインタビュー結果も交えてお伝えしよう。
今回の壮行試合の対戦相手は、関東のクラブチームの実力者を始め、全国のクラブ・大学生の実力者が集められたチームだった。1日の練習でフェーズを合わせたチーム。代表がどれだけの実力差を見せるかに注目した。
ラクロス日本代表チャレンジ2022・試合レポート
立ち上がりの代表の攻撃が無効で、リスタートからの選抜の攻撃が奏功。選抜 22番 稲田選手(MISTRAL / 福岡大学出身) に一気にブレイクを許し先制点を奪われた。しかし、すぐにドローからの速攻に対する相手ファールで得たフリーショットを日本代表 7番 高橋実緒選手 (FUSION / 日体大 / 飛鳥高校) がパワーアップしたショットを豪快に決め(これはワールドクラスのショット)まずは会場にアピールすると、ドロワー6番小林選手( NeO / 日体大 / 旧姓山田)を中心にドローをコントロールし試合を作った。インサイドから 18番 水野選手( NeO / 筑波大学 )19番亀井選手( MISTRAL / 立教大学)のドライブで点を重ねる。しかし選抜チームも攻撃意識高めの中盤でのディフェンスからカウンター狙い、度々代表を脅かす。そして得たポゼッション、今度は焦らず広めの展開から選抜 5番 森岡選手(NeO/明治大学)のダイブはショット枠外も、次のターンを選抜 21番 笹野選手(名古屋大学在学中)がクリーンに右隅にショットを打ち込み会場を沸かす。そして、選抜チームの勢いが代表チームを慌てさせたか、代表チームの意のままには進まずそのまま 3 対 2で 1Q を終了した。
インターバルで、冷静さを取り戻した日本代表は2Q以降、目的とするギャップへのリアクションを素早く、強く実行し試合を支配していく。ドローからの 7番 高橋選手 の速攻。2番 鈴木選手(MISTRAL/明治大学)から17番 櫻井選手(MISTRAL/立教大学)のファインゴール。5番 多賀選手(NeO/明治大学)の裏まくりからの19番 亀井選手 の反転ショット。10番 藤井選手(NeO/日体大)のドローからの速攻等全選手が躍動し2Q 9対0。前半を 12対2 で折り返した。選抜チームも中盤で小柄ながらディフェンスを頑張った 88番寺嶋選手(北星学園大学在学中)や99番武藤選手(中央大学在学中)のディフェンスの頑張りと見どころは多かったが、スピード、展開の速さは日本代表「流石」の印象を大きくした。
その後は、選抜チームの 14番 岡田選手(NeO/国士舘大学)の華麗なセンターブレイクもあったが、選抜チームが前掛かりになるギャップを突く代表の攻撃は圧巻で最終的に17番櫻井選手のショットで21対3とし壮行試合を締めくくった。
ただし、(辛口で恐縮だが)この日のようにドローが取れる場合の試合に関しては安心だが、ドローが取れなかった場合にどのように試合を作るのかその辺りは本番の選手権におけるプレーに期待したい。この日は見せ場のの少なかったゴーリーズへの期待も大きい。
★得点者は以下の通り(敬称略)
【日本代表】17番 櫻井美帆 4点、2番 鈴木理沙・5番 多賀麻文・7番 高橋実緒・18番 水野果奈子 各3点、10番 藤井真由・15番 細梅志保美(FUSION/明治大学) 各1点
【特別選抜】14番 岡田麻梨乃、21番 笹野桂加、22番 稲田明日香 各1点
この試合のWoman of the matchは 日本代表 櫻井美帆 選手(MISTRAL/立教大学/八千代高校;バスケットボール)だった。
試合後の鈴木主将(2番/MISTRAL/明治大学)の言葉で印象的だったのは、
「主体性と信頼関係の構築」「最後の最後、絶対勝たなければならない試合に全員が同じ気持ちでフィールドに立って同じプレーをして勝つ」
世界一のチームワークで目標とする5位以上の結果を残すことを期待したい。
試合前に代表の柴田陽子ヘッドコーチに少し踏み込んでお聞きしました。
– 今回のチームに求めたもの、その現状について
共有テーマ は「クライマー」。どんな逆境にあっても最後まで登り切る者。戦い抜く者。という事を共有し連戦を戦い抜く。(難しい理論の中からの選択ですよ。共有している事が凄いです。)それは、壮行会での鈴木主将の言葉にも表れていましたね。
– 戦術的な面で特徴
ギャクション(ギャップへのリアクションをブレイクスルーとする)。ギャップを生じさせるには個の強さが先ずは思い浮かぶが、Japanはそれだけでなくターンオーバー時の小さなギャップや、ルーズボールやダウンボール時に生ずるギャップもブレイクスルーとする素早いリアクションを武器に世界を驚かせるようだ。
– キーとなる選手
ゴーリーズだとのこと。ターンオーバー時のギャップへのリアクションからのスタートです。(ゴーリーへの期待は大きいものがあるようです。上位との戦いになればなるほどゴーリーズの活躍の場面も増えてくるわけですから。)という事で久々の “こぶ平’s Eye” は日本代表のゴーリーズにフォーカスした。
こぶ平‘s VIEW
今回のこぶ平’s VIEWは日本代表ゴーリーズに注目してみた。
今回の代表チームのゴーリーは2名。
岩田選手は山村学園でのTeen’sラクロス時代からの生粋のゴーリー。2007年の19歳以下(以下U-19)世界選手権を皮切りに2009年、2017年の日本代表ゴーリーを務めた凄いゴーリー。
藤田選手は中学時代にはソフトボールに打ち込んだが高校時代は確たるスポーツには身を置かず、大学に入ってラクロスそれもゴーリーを始めた異色の選手。
ある意味とても異例なセットのゴーリーズだが、試合前に代表のアシスタントコーチでありゴーリーのコーチでもある 石川貴一 さんに聞いたところ「強いショットが来る上位チームに対し、先ずはセーブ力が重視した、という事だった。
岩田選手へのこぶ平’s VIEW
ここまで、代表で続けられるモチベーションはどこから来るのでしょうか。
迷わず「ここでは、辞められない。まだまだやり足りない。まだ向上できる」という気持ちが抑えきれなかったのだという。2013年の日本代表に対しては1度辞退した自分がいたが、その後は、やはりやり尽くしていない後悔がずっとあったという事。昨年最初は代表候補にも名を連ねていなかったところからの代表に対する思いは相当なものがあるとみえる。2年間のブランクがあったが、 “クラブでプレーを再開し、もっとできる自分がいることを信じていた。代表に選出されたという、この得られたチャンスは絶対にものにしてやる。そのために進化させてやる” と思ってきたとのこと。「世界選手権では自分のキャリアを生かすだけではなく、新しい自分のパフォーマンスでチームに貢献したい」といっていたのが印象的だった。
藤田選手へのこぶ平’s VIEW
ゴーリーを始めたきっかけは聞きそびれました…また教えて下さい。
石川コーチからはセーブ力を評価されていますが、また本人からも「ショットを止められる気しかしない」と、頼もしい言葉が先ずでてきた。USの動画を見ても、そのパフォーマンスへの自信は揺るがなかったそうです。
ショットへ入る際の相手のアクションとかを見定める目も感覚も優れているのでしょうね。彼女のセーブからのギャクションに大いに期待したい。
今年のNCAAの試合を見ていても、ゴーリーの活躍が試合を決めている。是非ラクロスプラスの読者の皆さん ゴーリーさんに注目してください。そして現役ゴーリーの皆さん、岩田さんや藤田さんに負けないよう頑張ってください。ゴーリーってかっこいいです。
世界選手権の展望
世界選手権ではEグループに入り決勝トーナメントを目指す。
同じグループには、ホーデノソーニー(米ネイティブアメリカンチーム)、中華人民共和国、スイス連邦、アルゼンチン共和国 がいるが、USA NCAA出身者も在籍しラクロス発祥のネイティブアメリカンチームのホーデノソーニー(Haudenosaunee Confederacy)が最も強敵となる。しかし、最近はヨーロッパでもラクロスが進化をしているので油断はできない。順調に勝ち進めばChampionship Division1回戦でDグループ1位予想のニュージーランドと対戦することになる。そしてそこに勝って、次は王者アメリカ合衆国との戦いに挑む。
ここまでは、順調に進みたいところだ。そしてUSA代表とのガチンコ対決をして欲しい。10点差以内の勝負ができれば誇るべきだろう。
先ずは日程の過酷さについてはメンションしたい。7月4日の予選最終戦スイスとの戦いから8日の順位決定戦まで5連戦。そして疲れのピークの最後2日が最も過酷な相手との勝負となる。3大会連続でこの難関をくぐり抜けられていない。今回こそ “クライマーズスピリッツ” で戦い抜いて欲しいものだ。
必ずできる。皆さんの応援で5位(次回大会のプールA入り)を実現を後押ししましょう。
ラクロスって最高!
こぶ平