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【こぶ平レポート】東京六大学春リーグ戦から読み解く

ラクロスファンの皆さんは、今季ラクロスのルール改正により女子ラクロスがどのように変わるのか興味がありますよね?

4月20日に東京六大学リーグが閉幕しました。どこよりも早い新ルールでのリーグ戦でどのような戦いが繰り広げられたかをお伝えしながら、そこから見えて来る今季の女子ラクロスの変化について述べるとともに、ラクロスをどうして行けば良いか、(勝手に)考察してみました。


まずは東京六大学戦女子の結果をご紹介。


今年は、立教大学が5戦全勝で優勝を飾っている。
前の2年は慶應義塾大学が優勝し、そのままリーグ戦を制しています。2016年は早稲田大学が同率ながら優勝をし、その後久々に早慶戦でも勝利2013年以来のファイナル4に進んだ。
新チームの調整感が強いと思われがちだが、この時期のチームの出来から各々が進化するなかでその差を埋めきれない傾向が見られる。(2016年は早稲田3勝2分け、慶應3勝2分け、明治2勝2分け1敗と大きな差がなく、その差を埋めきった明治がリーグ戦を制している。)

この時期、ミスが出るのは仕方がないという形で評価をすると、実はそのミスをなくすという努力が進化を加速させる前に必要となるとも考えられる。
六大学のチームのレベルでは、育成のプランも確立をされている訳だから、同じように進化をする事が妥当なのだ。

かなり、個人的な意見だが、従来立教大学はこの時期チーム作りが遅れていてリーグ戦で優勝チーム(六大学の明治大学であり、慶應義塾大学であった)との差をキャッチアップできずにいた。立教が今年その殻を破り、近年ではかなりの差で優勝した事は大きな変化と見る事ができる。では、今年立教がこのまま突っ走れるかという事に焦点が集まるのだが。
今年は、不確定要素が多いので、全く違う戦略とか戦術により一気にステージを変えるチームが出て来る可能性はある。

その大きな要因は、10人制への移行という大変化である。今季の女子ラクロスを見た方ならお分かりかも知れないが、両チームでフィールド上の選手が4人少ないという事で生じるスペースの大きさはかなり大きいのだ。


今年の六大学戦では、そのスペースをランでカバーする傾向が見られ、その強さで得点を生むシーンが多かった。又それに特化したチャレンジをしていたのが明治大学であり、一定の結果を出した事には優勝した立教と同等の注目をすべきだと思われた。

そして、そのようなチャレンジを東大が試み、最終戦で実質的には法政に勝利した事*1は注目に値する。

慶應義塾、早稲田、法政の3校はどうだったか?

それぞれのチャレンジはあったのだが、あれもこれものチャレンジであって、こうあるべきという確信的なチャレンジがなかったが故に、明確な個の力に破られたとも考えられる。

優勝した立教のチャレンジは何だったか?
ここ数年立教はタレント性から言えばNo1.と思われる補強を進めているが、最後に勝ち切れていなかった。
そこから、得られたチャレンジは良い意味での個々の自立を求めるものだったと考えている。
色々なテーマを与えられ、その中から自分の才能を生かすべく自立の道を見つける事がポイントだったのではないか?個々の選手に色々な課題を抱えながら、それを克服すべき意思の発現をできなかった今迄から4年生は4年生で3年生のパワーに負けない自分を作る。3年生は文字通り自立し自分達で打開する決意を持ちえるか?2年生はそんな先輩に食らいつきながら、チームの一員に食い込もうとする世代間での妥協の無き争い。それが、一つの形になりつつある、立教にとってはそんな六大学戦だったと見ている。
そして、私の予想以上にディフェンスが戦う集団に進化し、最終戦で明治の圧力を確実に跳ね返す形になったのは特筆しておく。

さて、この結果から、今年の六大学のチームが、新しい10人制でどのような戦術をとり、進化をするのか非情に興味深い3か月になる。

慶應義塾は得点力の不足が危惧されるようだが、その得点不足がどこに原因があるかは明確にされるだろう。
又、唯一パスでのファストブレイクを希求しそれが物にできれば、戦いの様相を変えられると思う。
今後のかじ取りにも注目したい。

早稲田は色々な模索の中から、新しいシステムに移行していくのではないか?ただ、そのシステムの明確化に残された時間は多くないと考えるべきだ。

法政は、何か漠然としていて負けの理由が特定できない所が危惧される。ここは、ポジションごとのレビューとともに、法政の戦術に必要な事を重点的に徹底的に鍛えるような事も考えられないだろうか?

東大は、1部に負けない強さを求めてその領域に踏み込んだと言えるが、まだ個々の走力、クロスワークの差は大きい。チーム内に選抜強化選手がいる今、その練習法やスキルを貪欲に取り入れていく事で1部への道が広がるのではないかと思う。

そして、この学生ラクロスのトップレベルの繰り広げた10人制ラクロスへのアプローチから今年の女子ラクロスの姿を想像してみよう。

10人制への移行により、当初想定された事は
点の取り合いになる。
ディフェンスに苦労する。
出来たスペースをいかに使うか、その巧拙が試合を分ける。
だった。


しかし、蓋を開けると、ディフェンシブなポゼッションラクロス、一昔前の男子ラクロスのスタイルで試合が進行しているのだ。
そして、男子と比べると長い距離のショットが無い分、11mサークル内のスペースの取り合いになる。そして変化を与えるのが、ゴール裏からのまくりによる攻撃という事になっているのだ。

その典型的なスタイルが、明治の今である。しかし、その明治も素早いチェックと寄りの速さで立教からのブレイクは少なかった(ただし、最終戦ではエースとU19代表2名の不在という事実はあったが。)

ただ、明治のこのスタイルはプロローグでありここからの進化は別のベクトルを加えると考えている。

そして、プレシーズンの練習試合の結果から、より走力と体力のあるチームが優位になる傾向が見て取れる。
(日体大であり関西学院がその象徴である。)

そこで、立教のようなスタイルが有効かというと、ここは難しい。立教だからできる部分が大きいのだ。

では、何が必要か?

今だ、明確にこの形のチームはいないが、パスによるファストブレイクを軸に攻めるチームだ。
ただ、これには必要な、又女子に不足している物がある。
パスのスピード、距離、正確さである。これらを持ちえたチームが現れた時ゲームの在り方が変わる。
そして、見る者の期待は、そういうチームが現れて欲しいという事だ。
その為に、ランを磨き、パスを見直して、磨いたチームを作って欲しい。

シーズンの終盤で、結局男子のようなゴール前の固い攻守の展開になるのか、男子にもないスペクタクルなパスの応酬からの点を取り合う形が出現するのか?
世界のトレンドは、後者である。

最後に、ドローに関してはスペシャリストを置くのは必然になりそうだ。その優劣により試合は大きく左右される。これは昨年と比べて大きく変わったのは間違いない。

今年の女子ラクロスは変わり始めたばかりだが、変わる事を拒んでいるようにも見える。

11月に笑うのは、どのチームだろう?

各大学のラクロスの進化に注目をしたい。

こぶ平

*1 東京大学vs法政大学の試合は公式的には5対6で法政大学が勝利した。
しかしながら、東京大学は個のブレイクから8点を決めている。実はクロスイリーガルで3点を無効とされている。クロスから、ボールの
トップが見えていなかったという判断だったようだ。
しかしながら、このケース異論はあろうが、この時期の判断としては8点を取り切ったという方が妥当な気がする。
東京大学は、この時期にクロスの重要性を認識できたとも言える。又法政大学もその事実は受け止めているはずだ。

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