【こぶ平レポート】全日本選手権準決勝@東京会場|女子ラクロスの進化の過程を見た?
FUSIONは最初五分で慶應を崩せると思いこんでしまった?
慶應の得点手前6分半までは、FUSIONが圧倒しています。しかし、その間のショットは4本かな?枠外もありました。インサイド
でミスマッチを作れたのは得点の1度だけです。これは、何を示したのでしょう?
FUSIONサイドからすると、ドローグラボが取れて、ポゼッションも取れた。慶應のDFを崩しにかかった矢先に、非常にきれいな縦の繋ぎから鮮やかすぎる得点が生まれた。これは、こういうパターンでなおも点を取れそうだという心理の芽生えを生じさせた事を示していると思いました。
引き続き、ドローも取れてポゼッションも取れる。後は、パスをいつ縦に入れてミスマッチを作るかという思いがFUSIONを動かします。しかし、ミスマッチは以降作れません。慶應のディフェンスの頑張りもありますが、作れる機会はたくさんあったのに、作れなかったFUSIONの心理の固定があった。パスで崩せると。。。
最初の一撃が、#10–#18の鮮やかすぎるセットでの攻撃であったが為に、その後もそういう機会を狙います。しかし、得点機のミスマッチはパスで起こったわけではありません。#22のインサイドからのショットの跳ね返りが起こした、ミスマッチの中で生じたパスプレーであり、パスが崩したものではありませんでした。即ちパスでは崩れないDFが粘る所、パスカットからのターンオーバーへとつながり、パス2本でATの#99が走力を発揮しランからの高速シュートを決めます。自陣10ヤード地点からパス2本です。
慶應は、中盤を抑えられる時に、何をすべきか想定していた?
試合前に、慶應サイドにお話を聞く機会がありました。曰く「うちは走り勝つしかないですから。」「でも、厳しくなります。」とその先に、その想定の下、「ロングパスの精度は上げました。」というお話を聞きました。
そうですね、サッカーでもそうですが、中盤を圧倒された側はカウンターという名のロングパスに一つのブレークスルーを見出しますそれが、開始6分の最初の慶應の攻撃で実ります。最初の想定がはまり、対応策が実を結びます。
この結果が、両チームに与えた心理的影響は大きかったようです。以降状況が一変します。ドローは取ったものの、中盤の8人の間隔が間伸びをしてしまった(カウンターの攻撃を防ぎたいあまり、ディフェンスラインを下げてしまう事により前、中盤下の間隔が開いてしまいます)。そこには、慶應義塾の走れるスペースが生まれます。FUSIONの組織的ディフェンスが単発になったり、ミスマッチを起こします。
(その典型的な例が、FUSION#8と#30の中盤での激突でしょう。)直後に#96のロングパスがそのままゴールにこぼれこむ不運もありましたが、ドローでの優位もかき消され、中盤を慶應の走りが支配するようになります。
その後、FUSIONは盛り返しにかかるも、パスで崩せる呪縛から抜け出せずインサイドのショットは少なくゴーリーも11メータ-付近からのショットには対応をしセーブからターンオーバー、パスやランでクリアする慶應。ついにはポゼッションで慶應の#96へのマンマークに#31が張り付くような状態に陥ったFUSIONのディフェンスを交わすように慶應#32や#99の動きが活性化し、FS等も交えて5対1と想定外の差まで広がります。
残り30秒、慶應のミスからFUSION #22–#3のパスでフリー取ったショットを決めるのが精いっぱいの形で前半を終える事になります。
前半を終えて、慶應義塾のロングパス攻撃の想定をどこまでFUSIONがしていたのか?という点が気に掛かり、後半にそれを意識した有効なディフェンスが取れるかがポイントでした。
しかし、後半も根本的には中盤のスペースの広さは変わらず、慶應が動けるスペースが確保され慶應がインサイドに切れ込む機会が確保されます。残り5分までFUSIONの攻撃が散発なものに抑え込まれ、最後の攻撃は#17水戸-#18内野のベストペアのコンビネーション等流石と思わせたが最終的には9対5で慶應義塾大学の勝利で終わることになりました。
試合開始7分の、ロングパス攻撃が試合の流れを変えた、単純な事ではないのです。色々な事態に備えそれに合わせて、ゲーム内で対応を変えられるスタイルの慶應義塾大学のラクロスが生んだ流れです。そこに、今年の慶應女子ラクロスの進化を感じ取らずにはいられません。
昨年までの3年間、非常に高い運動量をベースにミスマッチを突くラクロスから、非常に高い運動量をベースに、積極的にミスマッチを作るラクロス(大学選手権時)+運動量を抑えられた時にカウンター攻撃も繰り出せる(全日本仕様)、ラクロスに進化の方向を変えてきた。
この先どういう方向に行くかも楽しみですし、全日本選手権の決勝ではどういうラクロスを魅せてくれるのかとても楽しみになりました。