【こぶ平コラム 】2022年ラクロス全日本選手権 男子ラクロス編 〜 FALCONSの復活劇 〜
第32回ラクロス全日本選手権が2022年12月18日 東京都江戸川区陸上競技場で実施された。江戸川区陸上競技場は「江戸陸」と称され、ラクロスにとっては全日本選手権が行われる「聖地」と呼ばれていて、全国のラクロス選手(ラクロッサーと言われる)が1度はこの舞台に立ちたいと望んでいるスタジアムだ。当日は朝までの雨も上がり、一転快晴の下男女の試合が行われた。
奇しくもサッカー男子ワールドカップの決勝戦を迎える日に行われた戦いは、男女とも‘‘復活劇‘‘がキーワードとなった。対戦カードは以下。
女子 MISTRAL vs 慶應義塾大学
男子 FALCONS vs 慶應義塾大学
試合前のコラムでこの試合の楽しみ方を書いたが、会場で又、ライブ配信で試合を見た方は楽しめただろうか?今回のコラムでは色々な見地から2022年全日本選手権を振り返る事にする。女子編に続き男子編。
第32回全日本選手権 男子ラクロス
FALCONS vs 慶應義塾大学
前回の楽しみ方を説明したコラムの最初に、
高い総合力の強さで勝ち切った両チームの戦いは、個の強さの戦いで決まる?
と書いた。
そしてリーグ戦の全日本クラブ・大学選手権を勝ち抜いて来た両チームには共通点が多い。基本的に総合力が非常に高いのだ。とも書いた。
概要
男子のラクロスは1980年代初頭慶應義塾大学の学生によって日本で始められた。そこから20年以上を経て、日本の男子ラクロスを牽引したのがFALCONSである。全日本選手権の優勝はコロナ前の2019年まで実に12年連続で王者に君臨した。その後コロナ禍を経て開催された第31回大会は慶應義塾大学が23年ぶりに学生の王者を自らの手で取り戻した。そして2022年時を超えて相まみえる。全日本選手権での両雄の戦いは、奇しくも2016年の同じ日12月18日(日曜日)以来の事だ。その時はFALCONS 12 対 5 慶應義塾大学 今もFALCONSに在籍する石黒選手、大庭選手、夏目選手らの得点によりFALCONSが勝利を収めている。6年ぶりに相まみえる今年は逆に慶應義塾大学が前年度チャンピオンとしてFALCONSの挑戦を受けるのだ。 と加えた。
戦力分析
まだ、絶対的な力の評価を下すデータは持ち合わせていないので、今期使用しているショット決定率等から見て行こう。(敬称略)
- FALCONSが強い相手に対してショットの決定率を上げてきているのに対して慶應義塾は徐々に決定率を下げてきている
- 慶應義塾はショットの決定率だけではなくショット本数も下げてきている。
- 慶應義塾はFO(フェイスオフ)獲得率が非常に高い。
- ゴーリーのセーブ率については慶應義塾が高い数値だが、大学選手権決勝では相手のショットが14本と少なかった。
これだけの材料を見ると、FALCONSの優位は揺るがないように見える。唯一の強みに見えるドローを頑張りFALCONSに攻撃の機会を与えなくする事が考えられる。それとともに慶應義塾のハイブリットディフェンスが頑張り、速攻にてFALCONSの骨を絶つブレイクラクロス中心のゲームプランにならざるを得ないのではないか。対 学生チームであれば強力なオフェンス(ショット)を展開できたが、明治大学相手に苦戦をしたのは明治大学のディフェンスの圧力が高かった為にセットオフェンスでのショットの機会が得られなかった。FALCONSのLDF3番佐野(東北/SIXES代表)、SSDM97番徳増(日本体育)、SSDM98番佐藤(早稲田SIXES代表)/共に日本代表候補のディフェンスは明治大学のディフェンスの5割増しレベルであり、LDF17番加藤(東京)、LDF水田(日本体育)、LMF81番浅野(日本)とのディフェンスセットは新旧の融合が進みセットでは崩しにくい。前からの攻撃的守備によりターンオーバーの速攻に活路を見出す事になりそうだ。97番、98番が前方に進出した時の仕掛けが重要だ。しかしこれも、FOを有利に進められたらの話で、そこで60%以上勝たないと更に慶應義塾は追い込まれそうだ。大学選手権の1回戦、決勝で90%以上をコントロールした慶應義塾33番石井を軸としたFOがどこまで勝てるか。先ずはそこに注目して欲しい。ただし、相手は24番岸(東京理科)であり、日本代表候補のFOなのだ。
- そんな中慶應義塾の勝利を握る大きなカギは2つあった。
FALCONSミスのリカバリー:FALCONSは1年目の選手が多く、短期間で集中的に仕上げてきたので、パスミス等のターンオーバーに繋がるミスが生じやすい。 - 速攻の精度:FALCONSの守備がセットされる前にどれだけ攻撃を終えられるか?そしてチャンスをものにできるか。
この2つの事が上手く回れば、昨年のStealers同様FALCONSの動揺を誘う事が可能だ。そしてその為にはGRIZZLIESがそうであったように球離れを早くしFALCONSのチェックを受けなくする必要があるだろう。最後に「FALCONS 対 慶應義塾大学 は2QにFALCONSを抑え込めるかが最重要ポイントとなる。FALONSは初めての対戦では1Q様子を見る傾向がありそうだと見ている。そして2Qでビッグクォーターとするのだ。そこを抑えて2点差ぐらいで後半に繋げば可能性が高くなる。2Qの攻防に注目だ。」とも加えた。そんな見方で試合を見て行こう(以下敬称略。大学は略称)
★スターター
- FALCONS G15徳舛(関西学院/SIXES代表) LDF3番佐野(東北/SIXES代表)、17番加藤(東京)、19番水田(日本体育)、LMF81番浅野(日本), FO31番舟橋(東京)、SSDM98番佐藤(早稲田/SIXES代表)、AT9番立石(慶應義塾/SIXES代表)、28番奥村(南山)、90番関根(慶応義塾)
- 慶應義塾大学 G2番岸(4年/慶應義塾高)、LDF5番中根(4年/慶應義塾高)、6番吉田(4年/慶應義塾高)、22番小川健(2年/慶應義塾高)、LMF17番塩原(4年/慶應義塾高),FO33番石井(4年/慶應義塾ニューヨーク学院)、SSDM8番神津(3年/慶應義塾高)、AT0番中林(4年/慶應義塾ニューヨーク学院)、7番小川司(4年/慶應義塾ニューヨーク学院)、30番齋藤(4年/慶應義塾高)
太字が昨年の全日本選手権スターターでこの他に、1番中名生、7番小川司、11番貝柄、37番入谷は確実に出場していた。DFの6番吉田、17番塩原 G2番岸の出場記録は不明だ。
【1Q】 FALCONS vs 慶應義塾 6対0
まずFALCONSはFOに31番舟橋を送り込んできた。FOを取るもターンオーバーの応酬から2分半慶應DFと間合いを測ったFALCONS 9番立石 ショットに行かず縦フィードをセンターに入った28番奥村へ入れる、奥村選手のクロスに弾かれたボールがそのままゴールインし立石選手のゴールとなった。このプレイはリーグ戦等を通じて逆の28->9は見られたが9->28はあまり見せていなかった。先ずは意表を突くプレイで先制したFALCONS。しかし慶應も次のFOを粘ってものにすると1番中名生(慶應義塾高)、11番貝柄(大宮高)、37番入谷(慶應義塾高)を加え攻撃態勢を整える。しかし速めの球回しもFALCONSは全く隙を見せず、慶應のパスが乱れた所すかさずチェック。グラボを取り切ると19番水田がクリアラン。速攻は慶應の戻りも早くポゼッションからの崩しを狙う。ゴール裏からゆっくりセンターへ進んだ28番奥村へ左60度から99番梅原(日体大)が瞬速パス。即ターンショットを決めて2対0。正に一瞬の出来事で慶應のDF,ゴーリーが立ち尽くすような鮮やかな攻撃だった。
しかし慶應も次のFOをスクープし前へはじき出したDF22番小川健からのボールを7番小川司がスクープターンショット、FOから僅15秒の速攻だったが、FALCONSゴーリー15番徳舛、体はゴールの中に倒れながらもクロスはゴールの外に保持すビッグセーブを見せ失点を防いだ。直ぐにSSDM98番佐藤にパスアウト。佐藤選手そのまま駆け上がりゴール前7m、正面からブレイク。なんと70mを超える超ロングドライブショットを決めた。
その後は慶應が最も警戒すべきFALCONSの9番立石へ今度は28番奥村がフィードを供給。立石選手ターンショット決める。1点目とは逆、リーグ戦でも見せたホットラインが通り4対0。これで完全に乗った立石選手はその後得点を重ねることになる。FALCONSはここまでに高めてきた融合がさらに高まりパスもピンポイントに決まりショットへ流れるように繋がる。慶應義塾のDFがそのスピードへついていけていない状況となった。さらに慶應早い展開でブレイクに行きたいためか、パスにも乱れが出て攻撃の機会を得られない悪循環にも陥る。そしてFALCONSの攻撃、インサイドを固める慶應に対し今度は外から28番奥村がミドルショットを決める。続くFOは31番舟橋、8番阿曽に続き24番岸(日本代表候補)が取ると慶應FO33番石井がそのままFALCONS24番FO岸の守備へ就く形に。しかし岸選手のフライに対して追随し束の間5対5の局面になった処で仕掛けたFALCONS90番へ、慶應2,3マンで早めのブレイクを狙うが90番関根に交わされ1番へパスを通され決められる。フライの瞬間すらもブレイクポイントにするFALCONSの熟練の攻撃は圧巻なものとなった。
6対0と1Qから圧倒したFALCONSに対し、慶應も心折らずに積極守備を仕掛けたが、再び交わされ99->1通されショットに行かれた所で1Q終了した。 1Q 6対0
【2Q】FALCONS vs 慶應義塾 3対1
ドローでもFALCONSが優位に進める中、慶應義塾のフェイスオフの頑張りに注目が集まった2Q。開始FO。一旦は慶應がスクープするかに見えたがFALCONSが取り返しポゼッションを取る。FALCONSは点差もありじっくりしたアプローチから、緩急を付けてブレイクチャンスを作りショットに持ち込むが慶應の2番ゴーリー岸がセーブ得点を許さない。そして守備が頑張りクリアに繋げるとDF22番小川(健)が放ったショットがこの試合2本目。しかし、2本目も1本目同様FALCONSゴーリー15番徳舛のファインセーブに阻まれた。この後点差の為か集中力が切れたように見えたFALCONSもミスが出る。しかし慶應もその機会を中々攻撃に繋げられず、FALCONSの慶應ゴール前でのミスもFALCONS 9番立石に拾われ決められる。さらにFOからのポゼッションを更に9番立石の4点目得点で8対0とした。慶應もLDM的に動く22番小川(健)の球出しから30番齋藤の粘りで数少ない攻撃機会を作るとAT1番中名生をMFに起用しチャンスメイクを図る。しかし、FALCONSのSSDM98番佐藤の守備は固く逆に奪われる、苦しい苦しい展開が続いた。そして98番からのクリアを9番が繋ぎ逆サイドへ展開、DFから上がった51番荒木(東北/新人/日本代表候補)が決めて会場を沸かせた。慶應は前での守備を避けるためロングパスを狙うが、この日は慶應らしくない精度でボールをFALCONSに供給してしまう循環の悪さも治らず、苦しい展開がなおも続いた。何とか突破口を見出したい慶應は2Q残り30秒でクリアを果たすと#1中名生が得意の裏まくりを決めて一矢を報いて終了した。 2Q 3対1 トータル 9対1
漸く一矢を報いた慶應、アタックも強いFALCONS SSDMのプレッシャーにも負けず果敢に仕掛ける気持ちが出てきたようで、以降のパフォーマンスへの期待が高まった。
体力面で凌駕するFALCONS。全員ラクロスで挽回を果たしたい慶應義塾大学。全日本選手権大会の男子の戦いはクラブ復活の狼煙が上がった。前半戦となった。
【3Q】FALCONS vs 慶應義塾 2対1
慶應義塾は立ち上がりマンアップから攻勢を強め4本のショットを放ち勢いを付けに向かう。更に守備でもライドを強め数的優位に持ち込むべくゴーリーも前に出す積極策に出た。しかし、FALCONSはそのプレッシャーも交わしハーフラインでフリーとなった3番LDF佐野がハーフウェイ2m前方左サイドから50m超えの超ロングショットを見事にコントロール。その慶應の勢いを削ぐプレイに会場は大いに沸いた。
以降、FALCONSはゾーンディフェンスで慶應義塾のインサイドブレイクを拒みSSDMの強さで攻撃の芽を摘むことを目論めば、慶應はテンマンライド(ゴーリーを含めた全員がライドを駆けて数的優位でブレイクする)で攻撃権を奪おうとする激しい攻防が続く。慶應がライドに行く中裏のスペースに入ったFALCONS 9番へライドで奪った99番梅原のパスが通り追加点がFALCONSにもたらされるが慶應義塾のテンマンライドは続きその反復攻撃には会場の応援もヒートアップしていった。 3Q 2対1 トータル 11対2
【4Q】FALCONS vs 慶應義塾 1対2
積極的にボールに仕掛ける慶應に対して、FALCONSはそれをうまく交わしながら相手のゴールを伺う展開は変わらず、FALCONSは守備もゾーンを敷いて慶應の侵入を防ぎながら時間を掛けさせる形で進行する。結果的に慶應は1on1で鋭いショットを決めた11番貝柄、37番入谷により意地を示し、FALCONSの攻撃を32番小山(東北)の得点のみに抑えレベルの高さを見せた。何度も戦術を変更しながら挑み続けた姿は今年の慶應義塾ラクロスの集大成を見させてもらったという思いで一杯だ。 4Q 1対2 トータル 12対4
優勝 FALCONS 3年(2大会)ぶり13回目の優勝
準優勝 慶應義塾大学
MVP 立石 真也 FALCONS(慶應義塾大学)
VP 中名生 幸四郎 慶應義塾大学(慶應義塾高校) 昨年のMVP
Best Zebra賞(最優秀審判賞)男子 原 拓輝(関東地区/1級)
審判団 主審 稲垣 副審 近藤&林 チームベンチオフィシャル 宮地 ベンチマネージャ 竹内
こぶ平’s View
FALCONSの集中力はクラブ選手権決勝以上に強かった・・・・
この試合のスタッツを見ると(別途ラクロス応援チャンネルで掲載予定)、前半のFALCONSの集中力の高さ。そこに合わせた慶應の攻略術を全員が共有し徹底した事が鍵だった見える。試合を見ていた人は感じたと思うがFOが結構FALCONSにやられたと。しかし、実際のFO獲得率は前半でもそう変わりない。決定的だったのは、前からの守備も含めて守備が強かった為に慶應の攻撃権を奪い取った、もしくは慶應のミスを誘った事。そしてもう一つは得た攻撃機会を完全に決め切った事だ。このスタッツでターンオーバーにはパスミスや、ゴーリーのセーブは入っていない。グラウンドでのターンオーバーもしくはチェイス、ライド起因のアウトオブバーンズである。それをデータから見ると。1Q3回の慶應のFO獲得を、ターンオーバーと、ゴーリーセーブと慶應のミスで全て攻撃権をFALCONSに渡し、それをFALCONSは6/7の割合で決めている。ショットの枠内ヒット率は100%である。2Qはターンオーバーに繋がる慶應のパスミス等が4回と多く攻撃機会を喪失していた。前半のFALCONSの枠内ショット率は100%でありショットの決定率は60%である。これは戦術面が嵌った事もあるが、FALCONSの集中力の高さとショットの技術&パワーが高かった事を意味している。
では、なぜここまで慶應義塾は攻撃機会を失ったのか?前からの守備が強くボトムでもSSDMの力が特に優れていたため、慶應にミスを生じさせた。又インサイドに入れないためショットのコースも限定され、枠外となったショットも多かった。(もちろん1Q最初のドローブレイクになるかと思われたショットを含め、要所でスーパーセーブを魅せたFALCONSゴーリー15番徳舛選手の威力も大きかった。)さらに、慶應義塾の攻撃においてここまでの戦いではATとしてゴール裏から脅威を与えていた1番中名生選手をMFに起用しフロントからのブレイクを狙った戦術変更も関係している。恐らく慶應義塾としては1番中名生選手の裏からのまくり上げはFALCONSも準備をしているはずであり、昨年の選手権で中名生選手のMFとしての前からのブレイクが奏功した記憶もあったと思われるので、中名生選手のアジリティと11番貝柄選手のアジリティを生かして、7番小川、30番齋藤、37番入谷選手のショットの機会を創出する意図があったのではないかと思うが、想定以上にFALCONSのSSDMの圧力が強く機能を封じ込まれた。結果的に本来のATの機能としての中名生選手の裏まくりからの1点を挙げるに留まった。(後半、中名生選手は本来のATに戻り更に裏まくりで1点を加えている)。この作戦が嵌らず、FALCONSの遠交近攻ならぬ遠攻近攻で守備が揺さぶられ、得点能力の高いFALCONSの9番立石選手、28番奥村選手に蹂躙されてしまう。極めつけはSSDM98番佐藤選手の70m独走ランシューであり、LDF51番荒木選手(東北/ルーキー)の得点である。
本来、慶應義塾が見せたかった、守備からのファストブレイクをFALCONSに見せつけられ勝負が決した。
☆慶應義塾に勝ち目はなかったのか?
先にポイントとして2つを挙げていた。
- FALCONSミスのリカバリー
FALCONSは1年目の選手が多く、短期間で集中的に仕上げてきたので、パスミス等のターンオーバーに繋がるミスが生じやすい。 - 速攻の精度
FALCONSの守備がセットされる前にどれだけ攻撃を終えられるか?そしてチャンスをものにできるか。
は前半、慶應義塾のミスもFALCONSが奪い、パスミスも多く「速攻の精度」も欠いた。これが前半できていたらもう少し競り合った戦いに持ち込めたはずだ。
私見ではあるが、大学ラクロスとクラブラクロスの関係は、日本とアメリカ、カナダの相対的な関係と似ていると思っている。クラブでのトレーニングの考え方、世界との競争の為に鍛え上げられた体躯は、学生3年間余りの物と異なる。それが日本 対 カナダ、アメリカ の構図と似ていると考える所以だ。そこで、勝つには体躯的に劣勢な者の持別の特性を生かす他は無いと言える。
これについては長くなるので別途私見をコラムに書く予定だが、やはり慶應義塾大学3Q,4Qに見せたようなラクロスがブレイクスルーになると考える。
優勝したFALCONSについて
個人的には2009年から見続けているラクロスの中で。当時はVALENTIAとともにクラブラクロスをリードし、全日本クラブ選手権でビハインドしても、全日本選手権では必ず優勝を果たし、絶対王者として近寄り難い存在だった。その真の姿は常に強きを求め世界で戦う事を目指し全員で戦うチームだった。2011年にVIKINGSが設立され大幅に移動があったVALENTIAが低迷すると、FALCONS無双時代が続く。2013年の記録を見ると、東日本チャンピオンリーグ全勝。得失点差+118、クラブ選手権決勝 23対5 vs ACL(西日本リーグ)、全日本選手権決勝 14対6 vs早稲田大学 と圧巻のシーズンを送る。FALCONSはこの年驚異的な記録を残し次年度以降チャンピオンリーグ戦が2部制に移行するきっかけとなった。2014年以降はStealersとの2強時代に突入するも日本王者を譲ることなく2019年まで12連覇を果たす。その間世界では2010年の世界選手権4位を最高位として以降、2014年8位、2018年6位と日本は国際舞台で爪痕を残せずにいた。そして2022年に行われる予定だった世界選手権の日本代表候補選手の多くが、現状打破の為に新チームGRIZZLIESを設立すると設立メンバーの多くがFALCONSからの移籍となりFALCONSに危機が訪れたのが2020年。2021年にはリーグ戦でも、クラブ選手権でもStealersに敗れ、連続王者の記録更新がならなかった。過去の例ではこのまま低迷するチームが多い中、FALCONSは立ち上がった。積極的に有望な若手を集め(所属大学は関係ない)、ベテラン選手も若き主将を盛りたてて、一緒に高めあう体制を作り、日本代表のメソッドも導入しながら復活を期した。2022年リーグ戦では歴史的な敗北を記録したが、そこから3か月で王者のラクロスを復活させた。その苦労がどのような物か具体的には知るすべもないが、優勝を決めた後の99番梅原主将の優勝を嚙み締めるかのような表情がすべてを物語っていた。
選手34名 その内2年目以内(移籍して1年目を含む)の若手が13人10年目以上のベテランが10名と中間層が11名。バランスの取れたチーム体制で来年はさらなる進化を遂げるに違いない。来年のFALCONSにも期待しよう。
慶應義塾大学チームについて
慶應義塾大学は、専任のコーチはいない。毎年主に大学院生となったOBが主体となってコーチ陣を形成する。しかし、真の主体は学生・選手たちだ。常にラクロスを考え、自分たちの長所、短所を理解し、世界のラクロスを見聞きして新しい、慶應義塾のラクロスを提案してくる、正に日本ラクロスの創世者にふさわしいチームだ。今年も、2連覇というプレッシャーが重くのしかかる中、厳しいリーグ戦を勝ち抜き、新しいライバルの挑戦も跳ね除け2連覇に臨める場所までたどり着いた。
2022慶應義塾のラクロスは、(勝手に)ハイブリットディフェンスと名付けた、ゾーンとマンツーマンを融合したが如きの守備に注目した。昨年のチームから中心選手(主将八星選手等)が抜けた守備陣は経験者がいたとは言え不安材料を抱えていたという。一方のオフェンス陣は全くと言って良いほど変わらず計算は成り立ったはずだ。そして始まったリーグ戦は死のブロックと呼ばれたほどの厳しい闘いの連続だった。開幕戦の東京大学戦を逆転で勝ち抜くと立教、早稲田との3連戦を乗り切りブロック優勝を果たす。そしてファイナル4を迎える頃にはハイブリットディフェンスが形となって、明治大学とのリーグ戦ファイナルに結実する。そして、全日本選手権では、新たなチャレンジで攻撃陣の戦術変更を大胆に取り入れ実行する。結果的に効果が薄ければ試合の中で戦術変更を行い、それを実施できる選手がそろったとても強いチームだった。選手たちが考えてこのレベルに達するそこに慶應義塾ラクロスの真髄が見えた気がする。
ここで、見えた課題を又来年どんな形で克服し、新たな提案をしてくるのか。いや、今年のチームの主力が、AT,MF,FO,DF,Gに至るまで4年生であった事を考えると、2年連続で全日本選手権を経験したAT3番藤岡、DF22番小川(健)選手がリードする形になるのか、新たな提案をせざるを得ない形になった。本当にどんなチームになるのか楽しみである。
トリビア
- 全日本選手権のガイドに慶應義塾大学の選手名簿が記載されている。そこには HC 阿曽 寛之(慶應義塾大学大学院在学中)とある。そして「必ずや全日本選手権を連覇し、王者としての地位を確固たるものにします」とある。しかし、FALCONSの選手名簿欄を見ると「8番 FO 阿曽寛之 1年目 慶應義塾大学大学院在学中」とある。
あれ?待てよである。OB選手がコーチをする宿命がもたらした現象なのだが、慶應義塾大学とFALCONS両者とも優勝の可能性が出てきた9月から、阿曽選手はFALCONSの活動のみに絞り、クラブ選手権決勝の 対 Stealers戦では貴重なフェイスオフ・ブレイクを決めている。
慶應義塾の敗北の原因が阿曽選手にあるわけではないことは、 ここで明確に申し上げておく。 - FALCONS 2022 移籍を含む新人13名の出身大学内訳は
東海大学2名、明治学院大学、慶應義塾大学 2名、学習院大学、日本体育大学3名、南山大学、 東北大学2名 スタッフ青山学院大学 となっており、全選手メンバーは14の大学から集まっている。
さて、これで今年のラクロスは終了である。そして、ラクロスプラスを通じて、ラクロス情報をするのも最後となった。足掛け7年ご愛読ありがとうございました。新年からは新たに ‘‘こぶ平のラクロス応援チャンネル‘‘ こぶ平のラクロス応援チャンネル (ameblo.jp) https://ameblo.jp/kobhey10 にて引き続きこぶ平のラクロス情報は提供していきます。是非フォロー閲覧をお願いします。そちらでは全日本選手権の技術面での考察、2023年新人戦に向けて と 関東Teen‘s ラクロスを振り返る等の予定です。
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