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【ラクロスコラム】#22 何をやるかよりも誰とやるか|SELL代表 柴田 陽子

「何をやるか」
「誰とやるか」

みなさんはいま、ラクロスにおいてどちらが重要ですかと聞かれたら、何と答えますか?

優勝できればどこのチームでもいい、という人はきっと少ないですよね。

では、仕事においてはどうでしょうか?
高い給料がもらえればどこでもいいでしょうか?
興味のある業界であればどこでもいいでしょうか?

私が多くの企業を渡り歩いてきた経験を以て確信しているのは、企業に対する満足度を決めるのは業務内容だけでも、給料だけでもないということです。

就活をするときに、「まずは自己分析」とよく言います。その大きな理由のひとつは、自己分析を通して自分自身の仕事への優先度を確認する必要があるからです。業務内容、勤務時間、給料、風土など様々な条件がある中で、自分自身がどのような優先順位でそれらを重要視するか。その部分に相違があると、例え他の人にとっては魅力ある企業だとしても、自分は必ずしもそこで幸せだとは限らないのです。

もちろん、この優先順位はライフステージとともに変化するものでもあります。私の場合、大学4年生で就活をしていた時期と、W杯を経たあとの社会人1年目後半では、自分自身の中での価値観も大きく変わっていました。就活時は「長時間働いて、たくさん稼いで、3年で10年分の成長をしたい」と選んだアクセンチュアが、「ラクロスと両立しながら一流のスキルを身に着けたい」という価値観へ変化したことに伴い、自分が幸せを感じられる場所ではなくなってしまったのです。

自分自身の価値観を確認するために有効な手段として、コラム#9で “Will, Can, Must”というリクルートの自己分析フレームワークを紹介しました。復習がてら再度下に図を掲載します。

仕事において重要なのはこの3つが交差するCoreの部分の大きさです。ここが大きいほど、仕事における充実感を感じられます。逆に言えば、この中でMustだけが大きくなってしまうと、仕事で幸せを感じられなくなってきます。

「働くこと」に対する考えを3つのステージに分けた考え方として、「ライスワーク・ライクワーク・ライフワーク」という言葉があります。

「ライスワーク」とは、ご飯を食べるため、生活するために働くことです。世の中の多くの人は、このステージで仕事をしているのが現状だと言われています。このステージでは、何をやりたいのか(Will)が薄まり、自身の能力拡大(Can)も諦め、単純に日々の業務(Must)をこなすことに終始してしまいがちです。ライスワークの場合、「仕事はあくまで仕事」と割り切り、趣味や特技に費やす時間はプライベートの時間の中で確保することになります。

次に「ライクワーク」とは、自分の好きなことを仕事にして働くことです。文章が好きだから出版社で編集者として働いたり、洋服が好きだからアパレル系の会社で働いたりといったように、好きな業界や職種で興味のある仕事をしている場合、やりたいこと(Will)とやらなければいけないこと(Must)が一致する場面も多く、また自身の能力拡大(Can)への意識も高い傾向にあります。仕事内容が自分の好きなこと、得意なことであれば、高いモチベーションを持って意欲的に取り組んでいくことができるので、必然的に成果を生み出しやすくなり、どんどん高い次元を目指していくことができます。今の仕事に対する満足度が高い人はこのステージにいることが多いと思います。

最後に「ライフワーク」とは、自分の使命と思える仕事をして働くことです。この人たちはCoreの部分が最も大きいと言われています。高い志や信念を持って(Will)、自分が生涯をかけて取り組んでいく仕事を極めている人たちです。ミュージシャンやトップアスリートなどはライフワーカーが多いと言われていますが、これらの分野に限らず、使命感を持ってその仕事に打ち込んでいる人は皆ライフワークをしていると言えます。一見すると、ライクワークと似ているように思えるかもしれませんが、ライフワークはリスクを背負ったり、何かを犠牲にしてでもやり遂げたいと思うような活動を指す場合が多いです。

私は自身の価値観が変わった時に、アクセンチュアでの仕事がライスワークになってしまうのがどうしても嫌で、ライクワークを求めて転職に踏み切ったという部分が大きくありました。そしてこれはその後の転職においても同じことが言えます。ライクワークをしている人は、仕事への興味やモチベーションが長く続く場合も多いそうなのですが、私はその興味が2、3年に1回のペースで途切れる傾向にあり、そうなりはじめたときに転職をすることを繰り返してきました。ライクワークを繰り返していると、前述したように、やりたいこと(Will)やできること(Can)の円の大きさも拡大していきます。ライスワークの場合は、10年経ってもやらなければいけないこと(Must)だけが責任とともに大きくなっていくのに対して、ライクワークをしているとその環境の中で勝手にWillとCanも大きくなっているのです。私にとっては、Willの部分の大きなポイントは“いつかラクロスで起業すること”でした。しかし、社会人経験が浅かった私にはそこへのステップが明確には見えていなかったのです。であれば、どうせ毎日8時間の時間を何かに費やすのであれば、Canをできる限り大きくしようと思い、「できないことをできるようになる会社にいく」を転職の軸に置いていました。またそれと同時に、ラクロスとの両立、ラクロスでの起業、というWillの部分を尊重してくれる会社を選ぶことを大切にしていました。

では、Willを尊重し、Canを拡大してくれる会社とは一体どのような会社なのか?

5社を経験した今だから、私なりの答えを出すことができます。
それは「人の魅力」です。

「ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則」という有名なビジネス本があります。この本は、「ビジョナリーカンパニー」というベストセラー本の続編で、「普通の企業・良い企業」がどうやって「偉大な会社」になるのか、時代や業界を超えて共通する「飛躍の法則」を飛躍企業11社の事例を通して説明しています。全米1435社の中から選ばれた傑出した業績を長期間持続させることに成功した3M、GE、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ソニー、ウォルト・ディズニー、ジレット、フィリップ・モリス等、飛躍を遂げた企業をそれぞれの業種で競合関係にある企業と詳細に比較・分析した結果、これらの企業には共通したいくつかの特徴があると言います。そのうちのひとつが「人」です。

このことについて、本書では下記のような表現を使用しています。

「誰をバスに乗せるか」

本書によると、偉大な企業に共通しているのは、最初に人を選び、その後に目標を選ぶことだそうです。つまり、偉大な企業ほど、「事」ではなく「人」からはじまるのです。企業をバスに例えると、これらの企業では最初に適切な人をバスに乗せ(採用)、不適切な人をバスから降ろし(代謝)、適切な人がふさわしい席に座り(配属)、そこからどこに向かうかを決めているそうです。採用も配置も冷酷ではないものの「超厳格」ではあり、少しでも疑問があったら採用しない。また、専門スキルではなく、性格や基礎能力を重視しているそうです。

リクルートは創業期から「自分より優秀な人間を採用する」という文化をつくり、人材輩出企業として成長してきたことでも有名です。Newspicksが実施した国内の上位540社のスタートアップ企業のCEOの前職調査においても、リクルートは学生起業に次いで楽天と同率の2位です。私が5社の一流企業で働いてきて、最も上司と仲間から学ぶことが多かったと思うのはリクルートなのですが、それはこのような企業文化があってこそのことなのかと思います。「人」に重きを置いて採用をしているだけあって、周りの人の助けのおかげでCanが拡大した印象が最もある企業です。そしてこれこそが、私が「人」こそが最も重要だと思う最大の理由です。WillやCanを広げる環境は一人ではどうしてもつくれません。特に20代の頃は多くの人の助けが必要です。そういったときに、周りに誰がいるか、周りから何が学べるかで、ライスワークをするか、ライクワークをするかの明暗が分かれると思います。例え最初はその部署の仕事に魅力を感じていなくても、WillとCanを兼ね備えた良い上司や先輩に出会うと、自分自身の視野も広がります。そうするとWillとCanとMustのバランスがとれ、ライスワークもライクワークになり得るのです。

これはラクロスの部活においても同様です。例えばATしかやってこなかった選手が急にDFにコンバートされたとします。最初はWillやCanがATへの情熱と能力が勝り、DFをやらないといけないというMustだけが先行するかもしれません。しかし、そこでDFの楽しさを教えてくれるコーチや先輩との新たな出会いがあったとします。それにより、その選手の視野は一気に広がり、DFの魅力へと引き込まれていきます。次第にWillもDFでやりたいことへと変化し、努力した分だけDF面でのCanも身に付いていくのです。また、例えば係活動などにおいても、最初は興味のなかった係でも、そこで仲間と何かをつくっていく過程でWillやCanが増え、最終的にはその係に情熱を持って取り組んでいる選手を、実際に私も多く見てきました。その舞台がラクロスフィールドでも、係活動でも、職場でも、WillやCanを広げられるかは、そこで誰と関わるかによって大きく変わります。逆にいえば、元から魅力を感じていたATというポジションを任せられたとしても、元からやりたいと思っていた事業内容に携われていたとしても、そこで関わる人があなた自身のWillやCanに悪影響を及ぼすような人であった場合、その環境下で充実することは絶対にないと言えるでしょう。

青学でコーチを選ぶときも、この「誰をバスに乗せるか」という考え方は非常に大切にしています。青学ではこの例えを目標の山登りになぞらえて「誰と山を登るか」と言っています。多くのチームはコーチを選ぶ際、「こういったDFをやりたいからこの人」というように、戦術条件などをベースにすることが多いと思います。しかし、私が青学のコーチ選びにおいてそれより先に見るのは、その人の人柄です。青学が大切にしている文化、考え方に共感できる人であるか。青学にとってのWillやCanを広げられる人であるか。この条件をクリアできる人であることが大前提です。その上で、その人が何を教えるのが最も上手いかに合わせてコーチ体制や役割分担は変えるようにしています。戦略や戦術についても選手を当てはめるのではなく、その年の選手の魅力とコーチの魅力を掛け合わせてベストである方法を選ぶので、それらも毎年少なからず変わっていきます。

これは就活や転職活動をする際の最終面接などにおいても言えることです。就活や転職活動をしているときに、多くの人は自分が「選ばれる側」だという認識が強いと思いますが、数多くの面接を受けてきて学んだのは、受けている自分も「選ぶ側」であるということです。多くの企業を受けると、それぞれの企業で質問内容が大きく違うことに気づきます。例えば私はいつも、特に最終面接でどのようなことを聞かれるかを重要視しています。なぜなら、そこで聞くことが、企業として最も重視している側面であると考えられるからです。WWEもNIKEも最終面接で聞かれた部分が、仕事内容以上に、私の人としての考え方やラクロスを通して培ったこと、大切にしていることなどでした。最終面接でこれを聞くということは、そういった部分が企業とマッチするかをスキル以上に重要視していることがわかります。それが結果的に転職の決め手にもなりました。電通の場合は、直属の上司が2次面接で聞いてきた質問が私にとっては非常に心に残るものであり、それが大きな決め手でした。このように私は、尊敬できる人が同じチームにいたり、人を育てる文化があったりすれば、きっとその環境の中で成長できると思い、企業を選んできました。

そんな私は、昨年オリンピックの仕事とラクロスのW杯の間で選択を迫られた結果、自分自身のライフワークについて深く考えました。そして、結果的にはラクロスに勇気を持って踏み切っていまこのような道を歩んでいるわけですが、それがライフワークだと自信を持って言えるようになるまでには、幾度となく視野を広げ、WillやCanを進化させてきた過去が不可欠でした。それをさせてくれる環境で仕事ができてきた過去があるからこそ、この今があるのだと思っています。

皆さんは、誰と山を登りたいですか?
一人でエベレストを登るよりも、仲間と富士山を登ったほうが、それがかけがえのない宝物になることもあります。その旅路での経験や出会いにより、視野が広がり、WillやCanが進化することもあります。

最後に、大学4年生の皆さんに。
今年のリーグ戦、どの山をチームで登るかも大事ですが、その旅を誰とどのような道を歩んでするかも本当に大事です。登れなくなってしまった山にとらわれて悲観になったり、山登りを楽しめなくなったりしないでください。仲間と山を登るその旅路の尊さ、そしてその途中に広がる素晴らしい景色の全てを楽しんでください。

今シーズンの残り数か月で、「何をやるかよりも誰とやるか」を実感できた先には、社会に出てから必ず明るい未来が待っていると思います。

SELL代表
柴田陽子

▶︎Profile
柴田陽子(1987年生まれ、兵庫県出身、神奈川県在住)
【学歴】
・大阪教育大学教育学部附属高等学校池田校舎卒業
・慶應義塾大学総合政策学部総合政策学科卒業
【社会人歴】
・アクセンチュア(SAPを専門に取り扱う部門でクライアント企業へのSAPシステムの導入プロジェクトに携わる)
・リクルート(リクルート住宅部門注文住宅グループ神奈川チームにて住宅雑誌「神奈川の注文住宅」の営業)
・WWE(米国最大のプロレス団体の日本法人にてマーケティング、ライセンシング、セールスなどをサポート)
・ナイキジャパン(通訳チームの一員としてスポーツマーケティング、ロジスティックス、テック、CSRなどの視察や会議の通訳および資料翻訳を担当)
・電通(オリパラ局の一員として東京大会の各競技のスポーツプレゼンテーションを企画。チームの国際リエゾンとして豪州のパートナー企業との交渉も担当)
・Second Era Leaders of Lacrosse(代表として団体創立に携わり現在に至る)
【ラクロス選手歴】
(所属チーム)
・慶応義塾大学女子ラクロス部(2005年~2008年)
・FUSION(2009年~2013年)※2010年~2012年主将、2013年GM
・CHEL(2014年~2016年)※2015年主将、2016年副将
(選抜チーム)
・U20関東選抜(2005年)
・U22日本代表(2008年)
・日本代表(2009年~2011年 )※2009年W杯参加
【ラクロスコーチ歴】
(所属チーム)
・慶応義塾大学女子ラクロス部AC(2009年)
・青山学院大学女子ラクロス部HC(2010年~現在)
(選抜チーム)
・U20関東選抜AC(2012年)
・U20関東選抜HC(2013年)
・U19日本代表AC(2015年)
・日本代表AC(2017年)
・全国強化指定選手団AC(2019年)
・日本代表GM兼HC(2020年~現在)
【主なラクロスタイトル】
(選手)
・関東学生リーグベスト12(2007年)
・東日本クラブリーグ優勝(2011年・2012年 FUSION、2014年 CHEL)
・全国クラブ選手権優勝(2011年 FUSION)
・全国クラブ選手権準優勝(2014年 CHEL)
・全日本選手権準優勝(2011年 FUSION)
・全日本選手権3位(2014年 CHEL)
(コーチ)
・全国最優秀指導者賞(2018年)




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