【こぶ平レポート】関西学生女子ラクロス決勝戦のドラマ|全国大会への道・特別編
第13回全日本大学選手権は新しい勝ち上がり形式で実施される大会となる。それは前回優勝地区の関東地区2位チームがワイルドカードで出場し全7地区から代表が集まる形式となった形だ。そして既に地区代表が決定していた北海道地区代表と東海地区代表が戦う1回戦の試合も11月6日に実施された。一方で、全国で全日本選手権大会への進出が決まる中、関西地区の代表決定戦と関東地区の優勝決定戦が行われたので先にその模様をお伝えしておこう。先に関西地区の男子編 劇的な試合をお伝えしたが、今回は関西 女子編 全国の大学のターゲットとなる力を見せたのはどこだ?
初の全国制覇を目指す同志社大学と4年ぶりの全国制覇を目指す関西学院大学の戦いだった
関西地区の女子は2010年の大会以来12回連続で代表を分け合い6大会連続同じ組み合わせの決勝となった、同志社大学vs関西学院大学の戦いで、全国制覇を成し遂げていない同志社大学が忘れ物を取りに行く気持ちと、4年ぶりの全国制覇を目指すべく進化を続けてきた関西学院大学の気持ちがぶつかり合う攻撃の応酬となった。お互いに1on1をベースに守備の隙を作り攻撃しあうスタイルは今年の関西地区では飛びぬけた存在であり関西地区では史上稀に見る得失点差で勝ち上がって来た。(得失点差は同志社大学が+66点、関西学院大学が+77点)。関東でも今期象徴的だった攻撃的ラクロスに注目した。
試合の詳報前に、試合前の両校コーチ陣に伺った中で印象的だった事を述べておこう。
チーム紹介
同志社大学
シーズン後半において、主力となる選手が複数十字靭帯損傷で離脱となる中、次世代の選手が急成長し進化を遂げてきた。攻撃的なスタイルで勝ち越し点を取り切る試合としたい。目指してきたパスと1on1の融合によるブレイクラクロスが進化した所をお見せしたい。
関西学院大学
リーグ戦において同志社大学に負けてから、選手間でも何が足りないかを突き詰め、強化のメニューを増やし進捗状況を確認しあう回数も大幅に増やしてきた。ベースとなる力も、今年の春先の関東遠征では有力チームに勝つ事が出来たものなので試合での爆発に期待を寄せている。
というものだった。客観的に見れば主力の怪我による若い選手の覚醒を促す起爆剤を同志社大学が立ち上がりに手に入れられるかがポイントだと考えられた。所謂Teen‘sラクロス経験者の含まれる同志社大学に対して他のスポーツ経験を生かした独自のスタイルを目指す関西学院大学のラクロスは攻撃的というものの性格が異なると見ていた。即ち、パス主体で1on1の仕掛けを絡めて数的優位を作る同志社大学に対して、1on1主体にブレイクポイントを作り、時にパスを絡めて点を取り切る関西学院大学という分け方ができるのではないかと考えていた。
試合の詳細に入ろう。(以下同志社大学は同志社、関西学院大学は関学 と略す)
ゲームレポート
プロローグ
リーグ戦では同志社が関学に対して10対6と勝ったが、当時とは選手の構成も変っている。実際に同志社側からはリーグ戦に勝ったから「又勝てるという気持ちがどうしても残るのが怖い。均衡した力の場合追い抜こうとする方の心理が優位に働くから。」という言葉も聞かれていた。関学側から見れば、負けた原因をとことん突き詰め、進化する事に集中できたという事は試合前にも確認した通りだ。
そして試合が始まる。
★1Q
開始のドローを奪い合いで制した同志社が、ポゼッションからパス回しで関学の隙を作り23番松田選手(3年)が仕掛けると、もくろみ通りのフリスぺ*1によるフリーショット(以降FSと略す)を得る。開始1分しかし23番はFSを決め切れずターンオーバーとなった。実はこのFSにこそこの試合の明暗を分けた大きな要因になった事はこの時点ではまだ分からなかった。ターンオーバークリアは許すのが両チーム。バイタルエリアでの激しい攻防が予想されたが、関学77番平野選手(3年)がセンターからあっさりブレイクを決め関学が先制をする。それはゴーリーのクリアパスからわずか43秒の事だった。その後も関学ターンオーバーからAT91番東浦選手(3年)(この試合の主役となる)が右サイドから一気のダイブでインサイドブレイク。決め切って2点目を挙げる。ここから同志社はオールコートのプレスを掛けるが徹底はできず関学の侵入を許すと、センターに入った関学55番島本選手(4年)がDFとゴーリー二枚に競り勝ってゴールを決める。それは2点目から1分後の事だった。しかし同志社もクリアに苦しむ中51番田中選手(4年)の強さでクリアを果たすとポゼッションからインサイド23番がショットに入りフリスぺからFSはオーバーで得点できず同志社にとってはじりじりする時間が続いた。その後もFSを逃した同志社だが3ターン目右サイドクリース際を巧みに抜けた98番平井選手が右下隅へボールを流し込み1点を返した。そしてドローを連取し攻めに入ると10番羽場選手(2年)がフリスぺから4本目のFSで漸く決めると、続くターンで98番がインサイドターンからDFを振り切りゴール右隅に決めたのは終了間際。終了前3分間で3点を奪う同点劇だった。 1Qは 3対3 で終了した。 スタッツ はショット数 6対5 ドロー獲得数 3対3(1回ノーカウント) だった。
パスカットやライドによるターンオーバーの少ない(両チーム合わせて3回)文字通りノーガードの打ち合いの様相だった。
注*1 フリスぺ; フリースペース トゥ ゴールの侵害(シュートモーションに入った選手の前に守備の選手が侵入してくることは危険な為)という反則
★2Q
息を吹き返した同志社がポゼッションを取るが、パス回しに関学が対応。1on1では関学が優る状況。どうしても1on1で崩せない同志社はゴール前でのパス回しに終始し、狙って奪うFSに活路を見出すしかないように見えた。しかしそこは同志社、経験豊かさで優るスキルを発揮した23番が巧みにドッジを切りインサイドへ潜り込むとターン&ラン左隅へ決め切る上手さを見せた。4対3と逆転しこれで同志社がペースを握るかと思われた。しかし関学は次のドローを取るとすぐさま50番秋川選手(4年)がFSを右上隅にスタンディングで打ち込んで4対4に追いつく。その後は関学が個の強さで同志社を追い詰め、得たチャンスを力強くものにする展開となり77番FS、91番インサイドブレイクと得点を重ね4対6と関学がリードして2Qを終了した。 2Q 1対3 合計 4対6 スタッツは ショット数 4対5 ドロー獲得数 4対1 関西学院大学が1on1で強さを発揮しだした形となった。
★3Q
関学のドロー獲得から始まったクウォーター。同志社の前からのプレスに対して1on1でクリアを図る関学。ワイドに張った処から一転1on1で仕掛ける。それに対してインサイドには飛び込ませない同志社DFの攻防が続き5分、関学の1on1の仕掛けに遅れた同志社フリスぺからのFSを関学50番に決められる。そして関学91番東浦選手(ハットトリック3年)には右サイドからクリース際を破られ得点を許す。同志社の反抗も関学ゴーリーの処理ミスを見逃さず対応した98番による得点(ハットトリック平井選手3年)のみに終わり、関学20番濱中選手(4年)、50番秋川選手(ハットトリック4年)にFSを許し最後は91番東浦選手に左サイドを破られ完全に支配されたクウォーターとなった。 3Q 1対5 合計 5対11 関学リードのまま。 スタッツは ショット数 2対10 ドロー獲得数 0対7 同志社は3Qドローを一つも取れなかった。
★4Q
関学は余裕のボールコントロールから一気の1on1で仕掛け50番秋川選手、55番が追加点を挙げ、同志社の反撃も10番、98番平井選手のFSにとどまり関学の完勝という形に終わった。最終4Q 2対2 トータル 7対13 スタッツは ショット数 6対5 ドロー獲得数 1対4 であった。
最終結果は 同志社大学 7 対 13 関西学院大学
試合のトータルスタッツは以下の通り
総じて、ゴーリーのセーブも少なく(特に3Qまでは)関東では中々お目に掛れない本当にノーガードの攻め合いの試合であったと言える。(実はパスミスやゴーリーのセーブを除いたターンオーバーも少ない)
こぶ平’s View
☆関西学院の勝因はどこにあったのか
2つの要因があると考えた。
リーグ戦の敗戦後、確実に自分たちの強み(1on1の強さ)を進化させ、60分パフォーマンスを落とすことなく発揮したこと。
ショットにおける力強さは女子大学の中にあってトップレベルである。そのショットを強くコントロールして決めたフリーショットが大きかった。
関西学院大学のフリーショットは全体を通じて9本獲得し5本を決めている。対して同志社大学は7本中2本の決定である。特に1Qで指摘した最初の同志社大学のFSがその後のFSに影響を与えたというのは「うがった見方」だろうか。
関西学院大学の60分間に渡って見せた集中力と攻撃力は魅力的なものだった。全国大会で例えば守備の圧力が高い関東相手にどのように力を発揮するか?又攻守にわたって運動量が増えた場合にMFの運動量が保たれるのか、ここが全日本大学選手権での見どころになる。
同志社大学に関して言えば、リーグ戦の対関学戦でリードした33番古田選手を欠き、おそらくDFでも欠員が出たのであろう事は想像できる。しかし、その攻撃の姿勢は昨年からも継承され高いポテンシャルを感じさせた。特に決勝で4得点を挙げた98番平井選手は3年生であり、ドローで健闘した10番羽場選手は2年生である。その技術の高さで来年も強さを見せてくれるだろう。
そしてMVPには4得点を挙げた関西学院大学背番号91番 東浦 綾選手が選ばれた。
トリビア
MVPの東浦選手は啓明学院バスケット部出身の3年生だが、この試合2得点を挙げた77番平野 結万選手も啓明学院バスケット部出身の3年生。そして関西学院にはキャプテンの長村選手を始め、18名の啓明学院出身者がいる。本家関西学院高等部の9人より多いのは、啓明学院も又関西学院と始祖が同じランバスファミリーという事から2001年には関西学院ファミリーとなったから多いという事らしい。
<エピソード>
関西学院大学の応援には、関西学院高等部のチアリーダーが駆けつけてくれていたのだが、総員60名を超える応援は壮観であり選手の勝利を後押ししたように思う。
全国大会について
関西学院大学は11月12日(土)に 京都 宝ヶ池球戯場にて北海道地区代表の北海道大学を迎え撃つ。対戦する北海道大学は2018年の大会で全国大会初勝利を挙げ全国ベスト4に進出し、進化を続けるチームだ。2018年は同志社大学に完敗したが、関西学院大学がいかに戦うかその戦いぶりに注目したい。
ラクロス全日本大学選手権の模様は ラクロス協会Web においても紹介されている通り rtvによるLive Streamingが無料で視聴可能だ。しかし、近くの人は是非会場で試合を見て欲しい。試合の迫力緊張感そして選手の皆さんへの生の応援は何よりもパワーになる。
11月6日(土) 京都市左京区 宝ヶ池公園球技場 観客席は6000人だ。 アクセスは 地下鉄烏丸線「北山」又は「松ヶ崎」駅下車 ●京都バス「宝ヶ池球技場前」下車
今回はここまで。関東決勝編は次回。
やっぱりラクロスは最高!
こぶ平