【こぶ平コラム】2022年 全国大学ラクロスの入れ替え戦事情
2022年のラクロスも後は、全日本選手権を残すのみ、のような雰囲気が漂っているが、22年度ラクロスまだまだ最後の大きな舞台(対象校のみですが)が残っている大学がる。日本で最後に勝って笑えるチーム日本チャンピオンだけじゃない。入れ替え戦という本当に残酷な、でも勝てば最高の幸せが待っている舞台があった。(実はまだ関東では残っている。)その悲喜こもごもをまとめてお伝えする。
2022年ラクロス総決算 入れ替え戦
京都大学女子が部史上初の1部昇格を成し遂げ、横浜国立が1部へ復帰した。
【入れ替え戦について】
現在リーグ戦において1部以下のグループが存在するのは関東地区(女子4部、男子3部)、東海地区(男女2部)、関西地区(男女3部)の3地区である。今年もコロナ禍の影響で下部グループでは合同チームが続出したがそれでも部を存続させる努力を続けているのはうれしい事だ。しかし、合同チームでは勝ち残っても昇格ができないのが現実そんな中、この3地区の最も過酷な現実に直面する戦いが行われた。詳細を伝えよう。
関西地区
女子ラクロス
- 1部⇔2部
今年1番のドラマは、この入れ替え戦だった。
- 関西大学 vs 京都産業大学 11対5 関西大学残留
- 龍谷大学 vs 大阪体育大学 9対12 大阪体育大学再昇格
- 園田学園女子大学 vs 京都大学 11対12 京都大学、部史上初の1部昇格
京都大学は男子ラクロスが関西を代表するチームとして関西地区を牽引する存在だが、女子は中々1部の壁を破れなかったその最大の原因は、関西特有の1on1ラクロスに対する体力面でのビハインドがあったと見ていた。しかし、長期的な育成プランに体力的な強さを持つ選手が集まった結果2部総合1位となり、入れ替え戦でも一時追いつかれるも動揺せず、1on1で勝負強さを発揮してぎりぎりで勝ち切った。残り30秒で勝ち切った精神力・集中力というのがやはり京都大学の特徴だと言える。そして気持ちの強い「突貫娘」99番服部選手がダブルハットトリックで京都大学を1部に持って行った。さらに主将の87番ゴーリー工藤選手が好セーブを連発し勝利を手繰り寄せたと言える。降格にはなったが、1部唯一の女子大学という条件下で戦い続けた園田学園女子大学は1部で戦える攻撃力を有していたが、それとともにさらなる攻撃的ディフェンスを身に付ければ相手に攻撃の機会を与えなくて済みそうだ。再度の昇格を期待したい。
大阪体育大学は再昇格になるが、1部で勝ち抜くには、アスリート性能にプラスアルファする、戦術面の検討と、選手の戦術理解が必須となる。
- 2部⇔3部
① 神戸親和女子大学vs追手門学院大学 8対6
② 大阪国際大学vs京都女子大学 10対5
- 甲南大学vs京都工芸繊維大学 6対19 京都工芸繊維大学 2部昇格
2010年前後は関西の女子ラクロスを牽引していた大阪国際大学がこの位置にいて3部との入れ替え戦を戦わなければならないのは驚きであり、踏みとどまった事で復活の方へ向かう事を祈念したい。昨年付属の高校でラクロス部ができたので、近い将来経験者を取り込めれば再浮上が見えてくる。京都工芸繊維大学は全国でも2校しかない理系女子(東京理科大学。酪農学園、東京農業は一応理系とは別とする。)のみのチームであり、少ない選手・スタッフにも拘わらず常に情報発信も続けていたが、今年念願の2部昇格を果たした。(2007年以来16年ぶりの2部復帰。)それも19対6と圧倒的な勝利だった。その源は何だったのかいずれ特集してみたいチームだ。
男子ラクロス
- 1部⇔2部
① 近畿大学 vs 神戸学院大学 7対6
② 龍谷大学 vs 同志社大学 3対7 同志社大学1部再昇格
③ 立命館大学 vs 大阪大学 7対5
注目したのは同志社大学。同志社大学男子は2010年代前半までは常に関西のファイナル4に位置し2014年には関西ファイナルで関西学院大学相手に13対14と死闘を演じている。しかし以降低迷が続き2016年には2部降格、2017年にはリーグ戦離脱を余儀なくされた。2019年にリーグ戦3部に復帰。しかし今度はコロナ禍で昇格を拒まれた。2021年漸く開けた復活への道。3部で他を圧倒すると京都産業大学を破って2部昇格を決め、2022年、2016年降格時に入れ替わりで昇格した龍谷大学を破って悲願の1部復帰を決めた。2017年からの暗黒の歴史を知る最後の世代にあたる4回生が、OBそして何より2016年から2018年を支えた先輩に捧げた待望のそして復活の勝利だったと考えている。捲土重来、来期の同志社大学の戦いぶりに注目したい。
1部の立命館大学だが、リーグ戦では何と最下位。以前であったら自動降格の憂き目にあっていたところだが入れ替え戦に臨むことができ、以前は関西を制したこともある難敵大阪大学を抑え込んで降格を拒むことができた。10数年間関西で常に優勝を争って来た立命館大学だが今年何が起こったのかは不明だが、来年の戦いに注目したいもう1校だ。
最後に、時にふれ語ることが多いのだが、近畿大学のラクロスについては、大学の規模、スポーツへの関心度の高さから言ってもっと上位に食い込んでも良いのではないかと(個人的に勝手に)思っている。是非この応援が届けば嬉しいのだが。
- 2部⇔3部
① 甲南大学vs追手門学院大学 7対2
② 大阪教育大学vs京都工芸繊維大学 9対3
③ 大阪経済大学vs京都産業大学 5対4
男子の京都工芸繊維大学は女子とのアベック昇格を果たせなかった。
東海地区
女子ラクロス
① 1部7位 中京大学自動降格
② 2部総合1位 椙山女学院大学自動昇格(合同A/日本福祉&至学館は昇格資格がなかった為)
③ 1部4位中京大学vs愛知学院大学(2部総合3位) 18対6
- 1部5位岐阜大学vs愛知大学(2部総合2位) 11対4
昇格を果たした椙山女学院大学は、2014年以来の1部復帰となった。2014年時は力及ばず1年で降格となり、以降入れ替え戦まで進むも1部の壁に阻まれてきた。(2015年対至学館大学 2対13等)。来年は金城学院大学とともに2校の女子大学が1部で戦う。その奮戦に期待が持たれる。
男子ラクロス
- 1部6位 愛知大学 自動降格
- 2部1位 中京大学 自動昇格
- 愛知教育大学(1部5位)vs信州大学(2部2位) 5対4
中京大学は2019年ファイナル3となり名古屋大学相手に1対2と拮抗したが、コロナ自粛解除の2021年には降格の憂き目に会う。コロナ禍の影響が大きかった大学の一つだろう。復帰が叶った来年以降、名古屋大学、南山大学の2強になりつつある東海地区に新風を巻き起こしてくれるかもしれない。
関東地区
女子ラクロス
- 1部⇔2部
① 学習院大学 vs 横浜国立大学 5対6 横浜国立大学9年ぶりの1部復帰
- 法政大学 vs 日本大学 10対4
- 早稲田大学 vs 一橋大学 13対2
- 成蹊大学 vs 東京大学 13対9
関東地区女子の注目は3校の国立大学の1部への挑戦だ。結果的には横浜国立大学が粘り強い守備で1部の強い攻撃力を抑えて勝ち切ったのみだが、一橋大学は少ない選手層にも拘わらず果敢に攻めるマインドを持った好チームだった。そして東京大学は長期的な強化プログラムにより着実に1部に近づく、いや実際には1部に定着できる力を持ちつつあると見ている。今年も、相手の成蹊大学は1部の中堅から上を狙えるチームだっただけにさらなる強化により来期の再度のチャレンジに期待したい。
- 2部⇔3部
① 玉川大学vs東京理科大学 8対7
- 駒澤大学vs東京女子体育大学 7対11 東京女子体育大学復活
- 大東文化大学vs神奈川大学 8対12 神奈川大学昇格
④ 東洋大学vs筑波大学 9対6
注目は東京女子体育大学。女子ラクロス創世期には女子ラクロス界唯一無二の存在であり続けた大学も、やや、新しいスタイルのラクロスから取り残された感があり、2013年に2部への降格が決まる。すると2018年には1部入れ替え戦まで盛り返すも2019年には玉川大学に敗北し3部にまで降格した東京女子体育大学。チームとしては最悪の状態の年に入学しどん底を経験し、しかもコロナ禍で練習が制約される中でも新たな歴史を紡ぐ努力をした4年生が躍動した2022年。4年ぶりに2部で戦うことになる。今年のチーム力は1部との入れ替え戦にも進めるレベルであり、コロナ禍の2020年の空白が残念だった。主力の4年生が抜ける来年の戦いに向けて新たな気持ちで向かって欲しいチームである。
さらに神奈川大学は2019年シーズンを4部で戦ったが大妻女子大学を破って昇格し、今年優れた攻撃力で一気に昇格を果たした。その勢いは新人戦ウィンターステージにも発揮され1部校を破り4位にまで進出している。新戦力も育っているので来期、2部での戦いぶりには注目が必要だ。
最後に東京理科大学について。理科大は関東で一番カリキュラム的にはスポーツをするのに厳しい大学だ。そのハンディキャップを論理的な考えるラクロスで埋めている。その考え方に関しては2部を凌駕すると言っても良いと評価している。入れ替え戦では後半玉川大学のパワープレイに屈したがそのラクロスに対する姿勢は他の大学のモデルになるべき大学だと考えている。
- 3部⇔4部
入れ替え戦は12月17日(土曜日)に実施される。
- 東京女子大学 vs 国際基督教大学
- 西武文理大学 vs 聖心女子大学
- 桜美林大学 vs 大妻多摩女子大学
- 獨協大学 vs フェリス女子学院大学
となっている
3部Aブロック5位の共立女子大学、3部Bブロックの東京家政大学、3部Cブロックの実践女子大学は自動降格の模様。3ブロック同じ5位チーム間の総合的な判断によるもので、逆にAブロック4位の帝京大学は同様の判断で入れ替え戦行きを免れている。
「大会形式 原則として、関東学生ラクロスリーグ戦大会規約に基づき、日本ラクロス協会の公式ルールのもと開催する。(詳細は 2022 年度リーグ戦形式案 5 月 23 日版を参照)」 ラクロス協会のWebより抽出
男子ラクロス
- 1部⇔2部
① 武蔵大学vs筑波大学 10対2
② 横浜国立大学vs法政大学 6対7 法政大学再昇格
- 明治学院大学vs東海大学 2対4 7年ぶり再昇格
- 日本体育大学vs成蹊大学 8対2
注目は東海大学だ。2010年には関東地区のファイナル4にまで進出しスピード感あるラクロスを見せていたが、2015年には千葉大学に敗北し2部へ降格となった。以降2017年に入れ替え戦に臨み対日本体育大学 10対11の激闘、2018年対武蔵大学 8対11 2019年対武蔵大学 3対6 と新興大学にも拒まれ漸く今年復帰を決めた。1部でも十分に戦える強度のあった明治学院大学に対して勝ち切った事は来期の戦いに繋がるものと思われる。
一方法政大学は2部最強と目され順当な再昇格と思われるが、1部Aブロックで点が取れずに苦労をした横浜国立大学に苦戦を強いられた事は、逆に来年への糧としたいところだ。
- 2部⇔3部
① 埼玉大学vs駒澤大学 調査中
- 東京農業大学vs国士舘大学 5対4
- 東京理科大学vs日本大学 6対3
- 明星大学vs神奈川大学 調査中
こぶ平‘s View
毎年入れ替え戦では、そこで展開されるカタルシスが大きすぎるため敬遠しがちだったが、今年は特に関東地区の女子における国立大学のチャレンジや復活という点から興味深い試合が多く、女子中心に見ていった。実際に関西地区の京都大学や京都工芸繊維大学の女子チームを含め、国立大学の進化に新しい流れを感じるとともに、男子の東海大学や東京女子体育大学のコロナ禍を抜けた復活劇に沸いた入れ替え戦だった。
特に、オリンピック選手を輩出する体育系の大学においては、それ以外のスポーツに対する練習、入校制限が強かった。それを潜り抜けて復活した両校だけでなく、東海地区の中京大学や1部で踏みとどまった日本体育大学の努力も評価されるべきだと考える。本格的にコロナ禍が過ぎるであろう来年の各校のパフォーマンスに期待したい。なお、女子の入れ替え戦から見た、新しい女子ラクロスの胎動については別途フィーチャーしてお届けしたい。
やっぱりラクロスは最高!
こぶ平