【WEB連載】教えて純一さん|第4回:緊張と上手に付き合う為の5つのアイデア【組織論】
こんにちは~!純一です。
ラクロス21年目でポジションはアタックです。
点を取ることを極めたいと学んできたノウハウを伝えながら、全国でラクロスをしています。
このコラムでは、上手くなりたいけどどうしたらいい?という人や、チームを強くしたいけどどう考えていいか分からない!という人の少しでもヒントになるように、沢山のチームに所属して学んできたことをお伝えしていきます。
■ 教えて純一さん!目次
第1回:大切なチームメイトに「部活を辞めたい」と言われたときに寄り添う5つのポイント
第2回:ミスとの上手な付き合い方
第3回:人を巻き込む方法
第4回:緊張と上手に付き合う為の5つのアイデア
第5回:強いチームの共通点とは?【組織論】 前編
今日のテーマは「緊張と上手に付き合う為の5つのアイデア」という内容でお話ししてきたいと思います。
質問をいただきました。
試合になると緊張してしまい、固くなってしまいます。練習でできていたことすらできなくなってしまうこともあって悩んでいます。緊張をしなくなる方法はありますか?
緊張しすぎてしまうとガチガチになって思うように動けなくなってしまいます。ですが、適度な緊張は高いパフォーマンスを出すためには必要不可欠なものなんです。
今日は、コーチとして選手たちにいつも話している考え方や自分自身が選手としてやっている具体的な緊張のコントロール方法をシェアしていきたいと思います。
<緊張との上手な付き合い方>
①考え方を変える:緊張のおかげでうまくいく、と考える。
②考え方を変える:自分の強みやチームの強みのことを考える。
③あがり状態対策:筋弛緩法
④あがり状態対策:呼吸法
⑤さがり状態対策:サイキングアップ
一つ一つ解説していきます。
①考え方を変える:緊張のおかげでうまくいく、と考える。
・「脅威反応」と「チャレンジ反応」
今まで数千人の選手をコーチしてきましたが、
緊張して動きが固くなり、持っている実力を出し切れないことは少なくありません。
逆に、全国大会など誰もが緊張するような場面で、練習でも見たことないくらい、圧倒的なパフォーマンスを出すことができる時もあります。
プレッシャーを感じる場面という面では同じなのに、なぜパフォーマンスに差が出るのでしょうか?
結論から言うと、「ストレスを受けて緊張する場面での考え方」で差が出るんです。
人はストレスを受けると緊張し、「脅威反応」と「チャレンジ反応」という反応をします。
「脅威反応」というのは、行動することを避けて、身を守ることを優先してしまう反応です。
外敵が襲ってきた時などに、迫りくる戦いによる出血を最小限に抑えるために、体中の血管が収縮します。それによって、緊張して身体がカチコチになったり、頭が真っ白になったりします。
「チャレンジ反応」というのは、自分の実力を最大限発揮するための反応です。
体内の血流量が増し、集中力が沸き、行動する力も沸いてきます。オリンピックの決勝戦でゾーンに入ったアスリートが世界新記録を出すときは、まさに「チャレンジ反応」が起こっています。
・具体的に何をしたら「脅威反応」が起きた時に「チャレンジ反応」に変えていけるのか?
そうは言っても、緊張してガチガチになってしまう場面はありますよね。
その時に、チャレンジ反応へ変える一番の方法は、考え方を変えることです。
ハーバード大学の研究で、このようなものがあります。
人前でスピーチする人を、3つのグループに分けて声をかけました。
- 1つめのグループ:「体にストレス反応が起こるのは、状況に対処するのに必要なエネルギーを集結させるためです。心臓がどきどきしたら、それは体と脳にたくさんの酸素をおくり込もうと頑張っているしるしです」
- 2つめのグループ:「緊張を和らげるには、ストレスを感じても無視するのが一番よいです」
- 3つめのグループ:「スピーチ前にゲームをして、ストレスを発散するように」と言い考え方はなにも指示しない。
結果は、2と3のグループの反応はほぼ同じで、「脅威反応」のみが起こりました。
そして1のグループのみが体のストレス反応が「脅威反応」から「チャレンジ反応」へ変化しました。
つまり、無視したりリラックスするのではなく、「緊張のおかげでうまくいく」と考えることで、緊張によって起こる体の反応を前向きに受け入れることができ、いいパフォーマンスにつなげることができるのです。
② 考え方を変える:自分の強みやチームの強みのことを考える。
緊張感ある場面やプレッシャーを感じた時に、どのストレス反応が起こるかという最大の要素は、「プレッシャーに対応できる自信を持てるかどうか」にあります。
人はストレスがかかる状況に直面すると、その状況と自分の力量を天秤にかけています。
そして一瞬で、いけるかどうか?ということを評価しています。
自分では対処できないと思うと、「脅威反応」が起こります。
逆に、自分の力で対処できると思えば、「チャレンジ反応」が起こるのです。
対処できる!と思うために大切なのは、自分の強みやチームの強みを認識することです。
例えば、
今まで自分がどれだけ練習してきたかを考える。
みんなでどれだけ準備を重ねてきたかを思い出す。
自分を支えてくれる大切な人たちや、自分の成功を祈ってくれる人たちのことを考える。
本当に大切な試合前に選手に対してこういう言葉をかけるようにしています。
「自分たちはどのチームよりも沢山練習してきたから自信をもってやってきたことを出し切ろう」
「一緒に日が暮れるまで自主練してきたから我々は強い。思いっきりぶつけよう」
「ここまで沢山の人が応援してくれていて、俺がここまでこのチームの為に通うのは、みんなが本気で頑張ってるからなんよ。自分たちのやってきたことを信じて出し切ろう」
そうすると、我々はこの状況に対処できる!と思うことができ、チーム全体の集中力を上げ、チャレンジ反応に持ち込むことができます。
③ あがり状態対策:筋弛緩法
自分自身も選手を長くやってきたので、基本的に緊張をうまく使うという考え方をするように心がけていますが、それでもやはり緊張してしまうことはありますし、
逆に、集中力にかけてしまい、緊張感を上げたくなる場面もあります。
この図のように、あがりすぎず、さがりすぎず、丁度いい緊張感へ持っていくことが重要になります。
具体的に大切な場面で、緊張をほぐしたり、緊張を上げていく方法をシェアします。
筋弛緩法とは、緊張状態を解消するために考案されたリラクゼーション法です。
いつでもどこでもできるので僕も緊張した時はいつも使っています。
人は不安や緊張、恐怖などのストレスを抱えている時に無意識のうちに体に力が入っています。こころ自体を直接コントロールするのではなく、この体の力を抜くことで緊張感を解消するというものです。
・筋弛緩法のやり方&流れ
1.両腕を伸ばし、手の平を上にして、親指を曲げてギュッと握る(10秒間緊張)
2.手をゆっくり広げ、脱力(15~20秒間)
→これを数回繰り返します。
体から脱力しているのを感じることで、緊張感もすーーっと抜けていきます。
④ あがり状態対策:呼吸法
呼吸は、意識的にコントロールできる唯一の自律神経系です。
私たちは常に呼吸をして生きています。普段はほとんど意識せず、何気なく息を吸って吐いているだけと思いますが、実は呼吸は、私たちの心身の状態と深い関係があります。
呼吸をゆっくりとすることで、リラックスすることができます。
・呼吸法のやり方&流れ
『腹式呼吸』を意識することがリラックスのポイントです。
腹式呼吸法はひとことで言うと、下腹部を膨らませたりへこませたりして呼吸をする方法です。
- 身体の力を抜き、おへその下あたり(丹田)に手をあて、長くゆっくりと息を吐きます。
- 吐ききって下腹部が限界まで凹んだら、次は下腹部に空気を入れて膨らませるイメージで息を吸っていきます。このとき、できるだけ自然に鼻から空気を吸います。
- めいいっぱい息を吸いこんだら、3秒ほど少し息を止めて、再び息を吐いていきます。
以上を数分、繰り返し行います。
呼吸に合わせて身体の緊張がほぐれていくイメージを頭に浮かべながら行うことで、リラックス効果を高めることができます。
⑤ さがり状態対策:サイキングアップ
サイキングアップとは、緊張感を上げる技術のことです。僕自身はあまりあがることよりは、緊張感が低すぎることが多いです。自分のチームより弱いチームと戦うときとか、味方のクリアミスが続いてちょっと~と思ってる時などに、精彩をかくプレーをしてしまうことがあります。
緊張が低すぎる時は、逆に緊張感を上げていくようにしてゾーンに持っていけるようにします。
・気持が上がる音楽を聞く。
試合前に音楽を聞くアスリートも少なくありません。どんどん試合に向けて気持を作って緊張感を上げていきます。
・大きな声を出す
試合開始前や、アップの時に大きな声をだすことで緊張感と興奮を上げていきます。ミスが続いている時なども「どんまい!」とか「ナイスフォロー!」などと声をかけるとチームの士気を上げることもできるので、おすすめです!
・体をたたく
よく、レスリングや柔道などで試合前にコーチにたたいてもらったり、自分で顔をぱん!とたたいたりしているのも、サイキングアップです。チームメイトにたたいてもらって試合開始を迎えるといいです。
最後に
今日は「緊張と上手に付き合う為の5つのアイデア」についてお話ししました。
<緊張との上手な付き合い方>
①考え方を変える:緊張のおかげでうまくいく、と考える。
②考え方を変える:自分の強みやチームの強みのことを考える。
③あがり状態対策:筋弛緩法
④あがり状態対策:呼吸法
⑤さがり状態対策:サイキングアップ
緊張は避けるのではなく、味方につけることで、自分の実力を最大限発揮することができます。
緊張したときは、「体ががんばってうまく行くようにしてくれている」「自分たちは頑張ってきたから出し切るのみ」と考える。あがりやさがりをコントロールして、ゾーンに持ち込む。
こうすることで最大のパフォーマンスを出すことができるようになります。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!